あだ名
「あ、ありがとう」
一人の巳の種の女性が何かの肉を葉の皿に置く。お礼に気をよくしたのかにこっと微笑み下がっていく。
持って来た時は小さく見えたが・・・・・・置かれると結構な大きさに驚いた。
ウルトラ上手に焼けてるのか、不思議な香辛料の香りが鼻腔を擽る・・・・・・うむ、剥ぎ――食べたい。
手をだしたいのだが切るものもないのでどうしてるのか辺りを見渡す・・・・・・おう! 毟って食べたり丸ごと噛付きとワイルドだな――そして皆楽しそうだ。
黒い大蛇――クロの一言で始まった宴だがあちらこちらから楽しそうな声が。
向きを戻せばいつの間にか切り分けられた肉が小さい葉の皿によそられていた。
先程から甲斐甲斐しくお世話をしてくれてる白い大蛇――シロさんか。案の定、お礼を言うと「いえいえ」と返事が。まあ、この状態じゃ誰でも解るか。
玄武様事――ゲンちゃんはクロに抱かれた状態だし、ラパンさんは・・・・・・酒弱かったんだな・・・・・・陽気に酔っ払っている状態で時折・・・・・・
「れつにワーゲなんて怖くないれすよ。ええ! 本当れすよ! わらひ怯えしゃせたらたいひたもんれすよ!」
見事なテンプレ酔っ払いに。今もゲンちゃんに何やら話しては笑っている。
折角切り分けもらったので肉を一切れ摘んで口に・・・・・・旨い! 味の宝箱や!
なんの肉だ? はらみ、カルビ、鳥・・・・・・ん~解らないが旨いの一言。
旨みが残った口内に酒を流しこもうと木のコップを持つ・・・・・・が、ありゃ・・・・・・空だ。
仕方ないので置こうとすると側にシロさんが酒の入った器を用意して控えている・・・・・・本当、いつの間に・・・・・。
「どうぞ、たつ様。それにしても名付けと言い――こんなに嬉しそうな旦那様を久々に見ました・・・・・・本当にありがとうございます」
義理堅いのか何度もお礼を告げてくるシロさん。そんな畏まる事でもないんだがな。逆に魔族なので名前の概念がないって言われて呼び辛いからあだ名を付けたようで申し訳ないんだが・・・・・・。
今でこそしれっとこの場に溶け込んだが・・・・・・正直ここに来て驚きの連続過ぎて半分麻痺したわ。
そのあだ名付ける時一番めんどくさかったのが玄武様――ゲンちゃんだ。普通に玄武様でいいのではと敬語で話すだけでも
「ワシももう少す気軽に・・・・・・の、の――こう友人みだいな」
思えばこの辺りで麻痺してたんだろうな・・・・・・ゲンちゃんって我ながら酷いわ。むろん――だめだったらイケコって呼んだと思うわ。
これで喜ばれたからかなり罪悪感はあるが・・・・・・名付け難しいんだよ。世の漫画家さんや小説家さんとか――本当凄いわ・・・・・・。
酒をくいっと一口含み懺悔しつつ味わい・・・・・ん、旨い。甘酸っぱく、少しシュワッとくる――スパークリングワインみたいだ。
コップを離すとすぐにお酌をしてくれるシロさんに改めて問い掛ける。
「ここに居る人――巳の種が子孫で元が魔族って本当なんですか」
お酌を終えて静かに器を置くと苦笑いを浮かべ
「ええ、本当ですよ。今でこそ旦那様と一緒に玄武として崇められていますが・・・・・・元は魔族――蛇と恐れられた古い化物・・・・・・そして旦那様も・・・・・・」
確かに大蛇状態だと怖かったが、今の状態だと凄い綺麗な女性にしか見えないから不思議だ。
ゲンちゃんに関してはここに来る途中で聞いた保護された魔族に全然見えないけどな。
その恐れられて今は崇められてる存在に、絡んでるラパンさんは最強なんじゃないか。
そちらに目を向ければ肩を叩き合って笑ってるし、クロなんて餌与える親鳥みたいに笑いながらあ~んしてるし・・・・・・ある意味混沌か。
視線を戻し、先程から何度目かのお酌の礼に返杯を申し出ると冗談交じりにコップを静かに差し出す。
「酔わせても何も出ませんよ・・・・・・出るとすれば肴になるか解りませんが――昔話程度ですよ」
はにかみながらコップを傾けるシロさんに聞きたいとお願いすると「面白いか解りませんよ」断りを入れて一呼吸。どんな話しが聞けるのか楽しみだ。




