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女性強し

 案内の元、一軒の家屋に。

 不思議な事に、この家屋からは槌の音も煙も無い。 

 こちらに振り向き、にこりと微笑むと


「少々お待ち下さい・・・・・・あの寝ぼすけがぁぁ」


 後半聞き取れなかったが、若干、笑いに陰が・・・・・・これ何処かで見た事あるわ。そう、鈴鹿スマイルだ・・・・・・。

 ワーゲさんが中に入って暫くすると「ぎゃひー」「おう! ごらぁぁ!!」凄く素敵な叫び声が聞こえてきた。

 間違った選択をしてしまったか・・・・・・そんな思いが過ぎる。

 『ガチャリ』扉が開き、中から赤い何かを拭いながらワーゲさんが笑顔で再び


「お待たせしました。何も無い所ですが――ささ、どうぞ中に」


 その拭っているものに言及したいとこだが、好奇心猫をも・・・・・・うん、やめとこ。

 招かれるがままに中に入る。物造りと聞いたので鍛冶に似た作りかと思いきや、案外すっきりした内装に拍子抜け。小さい炉に、何かの液が入った瓶が並べられた棚。作業机なのか、そこには小さいトンカチと小振りな棒があり、作業したであろう細工された金属が置いてある。

 きょろきょろ周りを見渡していると


「こちらにお掛け下さいな。今、飲み物を用意しますね」


 作業場と反対の壁際にある、テーブル席を勧められる。

 普段四人用なのだろう、俺達にイスを用意し、向かいは木箱が置いてある。すまん工房主。

 腰を掛け、間も無いうちに奥から人がやってきた。何故か口元から赤い何かを垂らしながら。

 間違いなく卯人だろう。

 顔は人間と然程変わりないが、頭から出てる長い耳と頬から横に出てる長い髭が凄く特徴的だ。それよりも・・・・・・。

 思わず自分の口元に指を当て、相手にジュスチャーを図る。ぽかんとしながら相手は口元を拭い目を見張る。後ろを振り向き顔を拭い始めた。

 暫くしてこちらを振り返り挨拶を


「いやいや、お見苦しいのを。妻のワーゲから聞きましたが、玄武鋼の加工を頼みたいとか」


 夫婦がいるとは聞いてたが・・・・・・まさかワーゲさんだとは――しかも女性だと!? 

 ま・まあそれはいい。本題も切り出されてるので、こちらもしっかり伝えなければ。何せ、一世一代の事である。

 玄武鋼の加工――指輪の話しを。

 無言で頷きながら話しを聞く卯人・・・・・・聞き終えるなり


「素晴らしい! 大体腕輪でマンネリしてたのですが、ペアで指輪――その発想実にいい! しかも、首からかける・・・・・・ネックレス? それに通せばまた違う物に! まさに一石二鳥。ネックレスも作ればこれまた・・・・・・くふふ」


 どうやらツボに入ったらしい。こちらとしてもすんなり通って一安心。

 そこに、トレイに器を載せ戻って来るワーゲさん。テーブルに置くなり『ドフッ』と聞こえそうなパンチを卯人の横腹に


「あ・ん・た・・・・・・ちゃんとお客様に名乗ったのかい? お茶を淹れながら聞いてたが聞こえてこなっかたよ。おかしいね・・・・・・いつも挨拶はきちんと――って言ってるよね」


 またもやあの笑顔でこんこんと言い聞かせてる。てか、あの手で凄く威力のありそうな。

 喰らった卯人も「あ”・あ”い”」苦しそうに返事を・・・・・・南無。

 落ち着いた頃に


「いやはや、また見苦しいとこを。私はラパン。見ての通り加工や細工を生業としている者だ。最近は飽きてだれていたが――今回は全力でやらせて頂こう」


 挨拶を終えた瞬間、ワーゲさんからまたしてもパンチが。

 苦しかったのかへたり込み、その耳元に何か囁かれる度「あ”い”・ずびばぜん・・・・・・」ひたすら謝り通してた。

 途中ちょろっと聞こえたが、本人も堂々とだれた発言をしていた通りその事についてのようだ。

 何処でも女性は強いな・・・・・・俺がここに来たのも半分御機嫌取りだからな。気を付けないと。

 



 




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