『スマホゲームの部屋』
スマホゲーム:アプリゲームのこと。ゲームは程々に。
「お兄ちゃん、最近よくスマホいじってるよね」
「そうか? 気のせいだろ」
「いや、そう言ってる今この時もスマホ片手だよ」
「仕方ないだろ、スマホ世代なんだから」
「理由になってないよ」
〇〇〇〇〇〇〇〇
「はっ! もしかして、恋人と連絡取りあってるとか!? それは妹の許可なしに駄目なんだよ!!」
「そんなわけないだろ。ただゲームアプリしてるだけだ」
「なぁんだ。よかった。危うく心中するところだったよ」
「……(これを本気で言ってるんだろうな、こいつ)」
「スマホのゲームって面白いの?」
「まあな。はまれば面白いもんだぞ」
「そうなんだ。私もやってみようかな?(お兄ちゃんと話題を共有できるチャンス!)」
「それならアプリをダウンロードしてみろよ。最初はチュートリアルから始まるから」
「うん、やってみるね」
~三十分後~
「や、やっとチュートリアル終わったよ」
「長いんだよなぁ、チュートリアルって」
「こ、これからどうするの?」
「ストーリーを進めていくのが無難だと思うぞ。俺も最初はそうしてたから」
「そ、それじゃあお兄ちゃん、早速一緒にやろうよ!」
「は? 何言ってんの」
「え?」
「このゲーム、二人用じゃないぞ」
「そ、そうなの!?」
「基本的に一人プレイだ。言ってなかったか?」
「そ、そんな……これじゃあお兄ちゃんとゲームして急接近計画が台無しだよ!! 私の三十分を返してよ!」
「また変なこと考えてたのか。はぁ……しょうがないからフレンド登録だけしてやるよ」
「フレンド登録?」
「プレイヤー同士でフレンドになっておけば、ゲームの中で恩恵がもらえたりするんだ」
「……」
「……ヒトミ?」
「フレンドは嫌だよ!! だって私達はフレンド以上の関係だもん!!」
「あっそ。それじゃあゲームの中では赤の他人のままでいいな」
「そっちも嫌だよ!!!」
結局フレンド登録した。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「う~~ん」
「どうしたんだ? スマホとにらめっこして」
「あ、お兄ちゃん。ストーリーで行き詰っちゃって。ここのボスがどうしても倒せないんだよ!」
「ふうん」
「……なんか、えらく反応が希薄だね」
「まあ、俺そのゲームアンインストールしたからな」
「へぇ、そうだった、ん、だ…………はあああああああ!???? ちょ、聞いてないよ!! ど、どうしてやめちゃったの!?」
「いや、課金もしてないし、飽きたし」
「軽薄だよ!! 必死に育てた仲間たちはどうするの!?」
「いや、それゲームだし」
「たとえゲームでも、仲間と過ごした時間は宝物でしょ!?」
「(随分とのめり込んでるな……今のセリフってゲームの中で主人公を庇って倒れた賢者のセリフだぞ)」
「お兄ちゃんが挫折しても、私は絶対に諦めない! だってここには私の仲間達がいるんだから!!」
「お、おう。頑張れよ」
~一か月後~
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「あのゲーム、サービス終了しちゃった。なんか、ボスが強すぎるとかガチャの排出が悪いとかでユーザーが離れていったみたいで。……は、はは。私の冒険も仲間も全部、大人たちの都合で消されちゃったよ。はは、ははは」
「(だいぶやられてるな……)そ、そうか。……まあ、なんだ。たまにはテレビゲームでもするか。二人プレイもあるぞ」
「……! うん、やりたい!!」
「立ち直り早いな」
「まあね。だって、私の最高のお兄ちゃんが誘ってくれた遊びの方が何倍も楽しいもん!」
「……」
「どったの? 呆然としちゃって」
「お前、なんか良い話気味に終わろうとしてないか?」
「ギクッ!」
「ちなみに知ってるんだからな。お前があのゲームに課金した金額は――」
「わー! わー! さ、早く遊ぼうよ、お兄ちゃん! ゲームはやっぱり楽しまないとね!!」
「……はぁ。今回は大目に見てやるか」