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俺と妹のただならぬワンルーム【続】  作者: お題の人(新増レン)
3LDK(101~150)
2/6

『ドラマチックの部屋』

ドラマチック:劇的という意味。

 

「お兄ちゃん、今回はドラマチックの部屋だって」


「続編が始まったのはいいが、相変わらず唐突なお題だな」


「確かドラマチックの意味って、劇的とかだよね? お兄ちゃんはこれまで劇的な場面に遭遇したことある?」


「何度もある気がするが、俗にいうドラマチックな展開に巻き込まれたことはないな」


「そうなんだ。ちなみに、私はあるよ」


「あっそ」


「え、反応終わり?! そこはもっと掘り下げていくべきだよ! 妹のドラマチックな展開とか気になるでしょ?!」


「別に」


「言い切った! たった3文字なのに破壊力抜群だ……」



〇〇〇〇〇〇〇〇



「お前の捏造した妄想の話は置いておくとして――」


「妄想はいつだって捏造だけど、それが実現する可能性はゼロじゃないんだよ!」


「捏造って認めるんだな……まあ今回のお題はドラマチックというわけだが、劇的な展開ってどんな感じなんだ?」


「そりゃあもう起承転結の転だからね。その、こう……色々と劇的なんだよ、うん」


「さては、思いついてないな?」


「そ、そんなわけないよ!」


「じゃあ、どんなのイメージするんだ?」


「え?! んと、えっと、転校とか?」


「はいはい。よくできました」


「褒められてるけど嬉しくない……そ、そんなこと言うなら、お兄ちゃんはドラマチックな展開ってどんなの思い浮かべるの?」


「そうだなぁ……」



〇〇〇〇〇〇〇〇



『え、嘘でしょ? ねぇ、嘘って言ってよ!!』


『ごめん……』


『謝らないでよ。どうしてこんなことに……』


『…………ごめん』


『……嫌』


『え?』


『嫌、嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!』


『さ、サヤカ?』


『もうこうなったら、するしかないよね?』


『な、なに、を……ぐふっ!』


 バタッ!


『あんな女にとられるくらいなら、私達で永遠になりましょう?』


『あ、ぐあ……さ、や――』


 ズブシュ!


『あは、アハハ、あははははははは!!!!!』


 サヤカは隠し持っていた柳刃包丁で男の腹を何度も刺した。

 最初は意識を保っていたが、サヤカは手を止めることなく憎しみを込めて何度も振りかぶる。

 やがて物言わぬ人形となっても、原型がなくなるまで刺し続けた。

 大好きだった顔だけは残して、他の部分は見るに耐えない肉片と化したところでサヤカはようやく手を止める。


『これで、いいんだ。これで……』


 虚ろな表情で男を見ると、サヤカは血塗れの包丁を彼の体に埋め込んで垂直に立たせた。


『いま、いくからね』


 サヤカはそう言って男の体に覆い被さるようにして、飛び込んだ。


 ズブシュッッッ!!


『っ! あ、が……』


 立てられた柳刃包丁はサヤカの柔らかな肌を貫き、彼女の身体を貫通する。

 この世のものとは思えない激痛に襲われるなか、サヤカは小さく微笑んで彼の唇にキスをした。


『ずっと、一緒だよ……』


 抱き締めあうように、二人は一つとなった。


 二人の死体が発見されたとき、彼らは結ばれていた。

 狂おしいほどに、恋人たちだったという。


 Fin



〇〇〇〇〇〇〇〇



「どうだった? 俺の思う劇的なワンシーンが詰め込まれた映画なんだが」


「Finじゃないよ! 劇的すぎるよ!!」


「大体こんなもんだろ?」


「も、もう少し平和な劇的がいいよ」


「あのなぁ、平和な劇的なんて無いんだぞ? つまり、ドラマチックなことなんて無い方がいいってことさ」


「いい話で締めようとしてるけど、世の中、マイナスなドラマチックばかりじゃないよ。結婚とか再会とか、もっと――」


「では次の部屋で会おう!」


「あ、お兄ちゃん逃げた。……相変わらず、お兄ちゃんは偏屈なんだから。でも、そんなお兄ちゃんだから好きなんだけどね。ふふふっ、私達もいつかはあんな風に、永遠になりたいなぁ……」


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