第六話:香車、又の名を「強者」
「世界将棋連盟大会一次予選、決勝戦! ……レディ、ンゴオオオオォォォォォォーーー!!!」
実況が開始のゴングを鳴らし、決勝戦の火ぶたが切って落とされた。
「よし、俺から行くぜ……ッッ!?」
「ウヒョヒョ……遅いんだよ~ん」
異臭男のユニークスキル、"高速異臭一手"に気圧されるショウギスキー。なんと、ショウギスキー桂馬との対局では今大会初の、"駒進み"が起こる……!
「うおおおお! 駒が進んだぞ!」
「やばいィ! もう興奮が止まらないよォォ!」
会場は一気に盛り上がる。流れが男に向くか。
「……こいつはなかなか手強いぜ」
しかし、ショウギスキーはいつだって焦らない。進軍してくる相手の駒に対し、ショウギスキーが取る行動、それは。
「パスだ」
「なんとショウギスキー桂馬選手、パスを選択!! 今までの闘いとは一転、"棋士橋弁慶立ち塞がり"の奇策に出たゾォ!」
「ウヒョヒョ、様子見とは舐められたもんだなぁ~。ま、いいけどねぇ……」
「舐めてないぜ」
パチン、パチンと駒が進んでいく。異臭野郎の前線に配備された歩が皆一歩づつ前に進んだ。
「う~ん…。この歩とか言う駒がさぁ、ボクの香車たんの邪魔なんだよなぁ~」
男は相変わらず香車に執着しているようだ。イライラし始めたか、男の貧乏ゆすりが将棋盤に振動を与える。まるで、カタ、カタ、とヤツの兵たちはいきり立っているようだ。
「知るか。そこで一生寝てろ。……おい、止めろ。そろそろ、行くぜ」
「おおっと、ショウギスキー選手、ついに一手目! 遅れを取り戻せるか!?」
ショウギスキーは中央の歩をゆっくりと前へ動かす。男の歩兵と一マス隔てて対峙する形になる。先に動いたほうが取られる。いや、殺られる。
「そこじゃなくてさぁ~、端っこの歩を動かして欲しいなぁ~。歩は取らせてあげるからさぁ」
「知るか。テメーの番だぜ、香車オタク」
「ウヒョヒョ……。ま、いいけどね~。じゃあ失礼して……」
男は深呼吸をし、次の瞬間、とんでもない行動に出る。
「ビョーーーーーーーーーン!!!!」
「なんだと!? 香車が…!」
なんと、男の香車は将棋盤に刻み込まれた枠の外に飛び出し、ガラ空きになっていた枠外の直線を一気に進み、ショウギスキーの陣地まで飛び越えてきたのだ!
「香車たん、成りまちょうね~……グフ、グフ」
「どういう事だ、一体……! どうして、こんなルートから来れた……!?」
ショウギスキーは思い出す。奴の挙動。奴の振動。
……貧乏ゆすり。男は、将棋盤に揺れる膝を付けながら将棋を指すことで、駒をカタカタと振動させていた。ただの悪癖かと思っていたが、それによって香車を外に動かしていたのだ。
「クソ、やられたぜ……!!」
お見事、香車男!




