第五話:強者の風格
世界将棋連盟大会一次予選、鯛下琴有市会場。
「お兄ちゃん、ここ、なんだか空気が違うよ」
「くせぇ。……強者のにおいだぜ」
強者は独特な臭いとオーラを放つ。二次予選会場。油断はできない。
「出場される方はこちらのゲートからお進み下さ……ウッ臭ッッ!!」
「ウヒョヒョ……、今日のご飯は誰かなぁ~……。……ブヒョヒョヒョ! そんな暴れるなヨォ……、待っててね、香車たん……」
係員が死んだ。当然だ。棋士圧にあてられれば並の人間じゃ耐えられないのは常識。二次予選程度と油断した運営会社の怠慢が招いた必然である。
「……においの元はアイツか。このにおい、ワクワクするぜ」
「気をつけてね、お兄ちゃん。嫌な予感がするよ」
「気をつけるぜ」
調子に乗らないのも、ショウギスキーのいいところである。
「勝者、ショウギスキー桂馬! 決勝進出です!」
「当然だぜ。……で、相手は」
「ウヒョヒョ……。香車たん、デザートだよぉ~」
予想通り、相手は棋士圧で係員を殺した、あの気味の悪い男だった。強者は惹かれ合う、それが運命なのだ。
決勝戦まで、控え室で待機していてください。そうアナウンスされ、ショウギスキーと男は控え室に向かう。
「……なるほど、やはりお前、ただ者じゃないぜ」
「ウヒョヒョ? 降参だけはやめてくれよぉ~……。僕の香車たんがデザートを待っているんだからなぁ~……」
控え室の扉を閉めた瞬間感じるオーラ。部屋中に乱反射し増幅していく。増幅したオーラがショウギスキーの身体を蝕む。なるほどこれは、負けた奴らの気持ちも分かる。棋士圧の差が大きいと、駒を動かすのもやっとだろう。
「当然だぜ」
だが安心して欲しい。この男、ショウギスキー桂馬は、それに渡り合う棋士圧の持ち主だった。
「……それにしても、あいつの香車、……ちょっとにおうぜ」
香車を溺愛するこの男。一体、どんな将棋を打つのだろうか。
決勝戦が、始まる。




