第四話:予選会
「「優勝は、ショウギスキー桂馬君!」」
「やったね、お兄ちゃん」
「大したことなかったぜ」
ショウギスキーの言葉通り。ここには大したことのある人間がいない町、意味無町。
「スマホのゲームの奴らのほうが強かったぜ。わざわざ電車で来たのがアホらしいぜ」
ここで、ショウギスキーの生い立ちの話。彼は今日まで、人と顔を突き合わせて将棋をした経験が無い。将棋の経験はアプリ内のみ。だがしかし、そこで才能が開花。父に与えられた将棋アプリを遊んで一ヶ月、彼はアプリ内で頂点となった。
頂点となり、飽きたのだ。アプリ内のプレイヤーとは何度対戦したか分からない。それ故に、対峙した瞬間、相手が何を出すか、得意な戦術は何か、全て分かってしまうのだ。そのため、対戦中、ショウギスキーは目を閉じる。もはや盤面を見る必要も無いのだった。
「ただ、久しぶりに面白かったぜ。ゲームじゃ分からないことも、色々分かったぜ」
「良かったね、お兄ちゃん。次の大会に向けて、頑張らなくちゃ」
今回の大会の上位三名は、世界将棋連盟大会の予選会に参加する権限が与えられる。そこでは、全世界の小規模の大会で勝ち上がってきたツワモノ達が集まる。第二第三の万偶須、富士見の座を狙う激しい争いが待っているのだ。
「帰って研究するぜ」
ショウギスキーの世界大会への道はここから始まる。
「聞いた?予選会でのアレ!」
「ショウギスキーのやつだろ?やばいよな、あれ」
世界将棋連盟大会の予選会、ショウギスキーは他を圧倒する戦績を収めていた。……ただ、そんな飛びぬけた人間の話題など、予選会レベルではよくある話だった。しかし、ショウギスキー桂馬の場合、一点だけ、そういった逸話とは違う要素があった。
「まさか、相手が一歩も動けないなんて、信じらんない!」
ショウギスキーは、相手に一度も駒を動かさせることなく勝利しているのだった。
「やったねお兄ちゃん、一次予選突破だね」
「余裕だぜ」
相変わらずの余裕である。それもその筈、中心に置かれた歩を前に進めただけなのだから。
「帰って研究だぜ」
ショウギスキーはいつだってストイックである。
「こんばんは。午後七時のニュースです。本日群馬県鯛下琴内市で行われた世界将棋連盟大会鯛下琴内市大会ですが、元プロ棋士の富士見アキラ氏もびっくりの、とんでも将棋っ子が現れました。どうですか、富士見さん」
「えー、びっくりしました」
「お兄ちゃん、大注目だね!」
「もちろんだぜ。これで、もっと強い奴と戦えるかもしれないぜ。まずは二次予選に向けて研究するぜ。目の前の課題を一つ一つ消化するぜ」
関心関心、ショウギスキーはいつだってストイックだ。




