第二話:ショウギスキーという男
二〇二五年一月、それは突如として現れた。
スマートフォン向けの将棋アプリ「スーパー将棋バトル」内の期間限定将棋大会の優勝者。なんと、二位と一万倍のゲーム内勝ち点差をつけていた。
「物足りないぜ」
彼の名前はショウギスキー桂馬。ドイツと日本のハーフで、ドイツ生まれドイツ育ち。
「日本人は、将棋が強いと思ったんだけどな」
彼は、将棋が強かった。
「なあ、聞いたか?ショウギスキーの話」
「ああ、ニュースでやってたけど、とんでもなく将棋が強いらしいな、無駄に」
「どうせただのチーターか、人工知能にプレイさせてるだけだろ。大会でも無名だしな」
異常な強さを見せるショウギスキーの登場は、元日本将棋界最高峰の新星、富士見アキラの引退後、すっかり話題を失った日本将棋界にとって救世主とも言えた。将棋の大会のメインスポンサーが大手新聞社であることも幸いし、こぞってショウギスキーの謎に包まれた快挙を取り上げ、スーパー将棋バトル運営会社は、連日取材対応に追われていた。
「ですから、私どもはユーザーの個人情報までは管理していないので……」
「はい、はい……。ええ、チートなどの改造行為は確認しておりません……」
「ったく、ショウギスキーが誰かなんて、こっちが知りたいよ。知ってりゃ今頃、このアプリの広告塔としてオファーを出してるっつーの」
昼過ぎ、ようやく昼休憩を与えられた新入社員、五目ならぶは一人つぶやいた。その足で、既にピークタイムを過ぎようとしているファミリーレストランに向かう。
「いらっしゃいませ。恐れ入りますが、こちらの用紙にお名前を書いてお待ち下さい」
「あ、はい」
少し待つのか……。もう空いてると思ったんだが。
そう思った時だった。
「お待たせ致しました。次にお待ちのショウギスキー様、お席へご案内致します」
「……!?」
取材対応に追われ耳がおかしくなったのかと耳を疑う。一人の青年が五目の横を通る。
日本人離れした整った顔立ちの、元気の良さそうな青年だった。




