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第十話:攻防

「俺はなぁ、ネタバレみてーのは嫌いだから、お前の戦術は見てないんだよな」


「……奇遇だぜ。俺も見てないぜ」


 なんと、お互いに戦法を知らないまま決勝戦の舞台に立っている。強者の余裕か。それともただの馬鹿か。


「イヨーッ! スタート!」


 実況の掛け声と共に、試合が始まる。先手を奪うのは、もちろん……


「俺だぜ」


「! なるほどショウギスキー、お前、早打ちか! ガハハ、父さんにそっくりだぜ」


「そうだぜ」


「長考派の俺とは対照的だな。ま、いいけどな」


 パチリ、と銀次郎らしく銀将を動かす。


 パチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリパチリ


「……なるほど、ショウギスキー選手は非常に攻撃的な手を打っていきますが、銀次郎選手は真逆ですね。この戦法はいわゆる……」


「父さん直伝、穴熊だぜ!」


 銀次郎の王将は右端に閉じこもり、周りを金銀桂馬が固める。オーソドックスな穴熊戦法である。


「穴熊か。王将が取りにくいぜ」


 ショウギスキーも、さすがに苦戦しそうである。


「だが、そんなフツーの戦法、くだらねーアプリで何千回も見てきたぜ」


 さすが。ショウギスキーも手練であることを忘れてはいけない。




「……ガハ、ガハハ」


 ショウギスキーがいよいよ敵陣に攻め入ろうとしたとき、銀次郎は笑う。これは怪しい。


「やっぱ戻るぜ」


 判断が早いのがショウギスキーである。


「攻めないのか? 戦術が破綻してるぜ、ショウギスキー」


「それもそうだぜ」


 ショウギスキーは納得する。やはり攻めるべきか。攻められてないのだから攻めたほうがいいような気がする。今守りに徹してもお互い硬直するだけな気がする。さっきの笑いはきっと思い出し笑いか何かだったのだろうと推測する。ショウギスキーはコンマ一秒で結論に至る。やはり攻めるべきだと思い直す。


「やっぱ攻めるぜ、銀次」


「お前の単純さ、嫌いじゃないぜ。ショウギスキー」

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