第一話:時々分からないやつもいる
スーパーナイスなグレート小説家によるスマートな小説(毎日更新予定)
猿でも分かる〇〇の美学
一九七五年、日本政府は宇宙からの信号を受信した。
二〇二五年十二月二十五日に、将棋をしに日本に行く。それまでに戦えるよう準備をしておけ。我々が勝利したら、地球を侵略する、と。政府は特別国会を開いた。同日、棋士強化育成法の設立が可決、翌日に施行されるという緊急事態となった。
十年後、その努力が遂に実を結ぶ。棋士、万偶須吉秋が誕生する。一九八五年、中学生にしてプロ棋士となり、将棋界をざわつかせた逸材。
日本政府は安堵した。ああ、これほどの逸材が誕生すれば、宇宙人とも戦えるだろう、と。
現実は厳しかった。万偶須は負けたのだ。一九九四年、経過観察として宇宙から送り出された日宇交流大使、地球名ケーティ・ミーヨというズブの将棋素人に。
大使は「接待将棋に違いない、二〇一七年にまた視察に来る、本番を楽しみにしている」と笑い、宇宙へ帰っていった。
日本政府は悩んだ。将棋AIなるものの開発に国家予算の90%を投資し、これまで以上に棋士の育成に尽力した。
二〇一七年、歴史が変わった。日本将棋界最高峰の新星、富士見アキラが誕生したのだ。彼は今までの将棋タイトル獲得の最速記録を大幅に塗り替え、富士見アキラの一段昇格を祝うセレモニーが終わった頃には、既に九段まで昇格してしまっていたほどだ。
日本政府は今度こそ安堵した。これなら負けない。
「勝てる」と。
現実は残酷だった。富士見アキラは負けた。それも、子供に。
宇宙大使が連れてきた子供は、将棋は今日の朝、宇宙船で覚えたと言っていた。大使は、子供に本気は出さないのか、と思い、昔と変わらぬ笑顔を見せた。
次は二〇二五年、本番で地球人の本気を見ることを楽しみにしている。そう言って帰っていった。
日本政府は、核シェルター開発に力を入れるようになった。




