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戦闘メイド『日本鬼子』  作者: ビタミンB13
8/8

世界は魔素で覆われている

 2週間ほどの時間を経て、デュウエルは部屋からでてきた。

 久しぶりに3人で朝食をとっていると

 「困ったわ、見つからないのよ。」


 タケルは正面に座るデュウエルに目を向ける。

 この頃わかってきたことがる。普段は魅力的なお姉さんのデュウエルであるが、何かに興味をもつと周りがいっさい見えなくなり暴走する。


 「何が見つからないのですか」

 デュウエルの耳には届かないかもしれない。それでもタケルは聞いてみた。


 「オトヒメちゃんにあれがないのー」

 立ち上がり、天井を見上げる。


 タケル、オトヒメ、鬼子はデュウエルを見上げ、そのごお互いを見つめ、首をひねる。

 「あれ?」

 「あれ?」

 「あれ?」


 「まったく、この女は失礼ですね。お嬢様にむかって、ないないと。なにが無いというのですか」

 鬼子はオトヒメの影にかくれ怯えながらも、デュウエルに文句を言う。

 お医者さんごっこなるものが、よほど恐ろしかったのだろう。


 「オトヒメちゃんの体内に、ナノマシーンが見つからないの」

 先日の銀の筒で血液を採取し、成分を調べていて時間がかかってしまったのだった。

 「ナノマシーンがないと、魔素の濃いところへ行けば中毒をおこしてしまうの。命にかかわるわ。」


 デュウエルは魔素を研究する科学者であった。

 魔素とは何かを突き止めるため、この島までやって来たのである。

 デュウエルの仮説では


 大昔の戦争で動物は大まかに2つの種類に分かれた。体内にナノマシーンを取り込んだ無核生物、ナノマシーンを持たない魔核生物。

 ナノマシーンは体内で魔素をエネルギーに変え、体の一部にコアとして貯蔵する。

 魔核は体内に取り入れた魔素をそのまま貯蔵する。

 全ての動植物にナノマシーンか魔核がある。

 この地域は魔素が薄いので見つけにくいが、全ての動植物から魔核を発見した。

 魔素が濃いところから薄いところへ移動した動物は衰弱死、

 魔素が薄いところから濃いところへ移動した動物は中毒死するとの事だった。


 デュウエルは一呼吸おき、話を続ける。

 「問題は、ナノマシーンを持たない人間に出会ったことが無いの」

 この世界において、知能を有し二足歩行する人型といえる生物は、全てナノマシーンを体内に有しているとの事だった。


 「当然のことであります。お嬢様はお前たち紛い物と違って、真の人間なのですから」

 デュウエルの話を主の存在価値とみなし、誇らしげに鬼子は胸をはる。

 「真の人間?」

 こんどはデュウエルが首をかしげる。

 「鬼子ちゃん、真の人間ってどういうこと?」

 オトヒメは異分子である事を恐れた。タケルとも違うということなのだろうか。

 「鬼子に登録されている人間に該当する塩基配列をもつ生命体は、いまのところお嬢様ただお一人です。ナノマシーンだの、魔核などどいう不純なものは、完全完璧なお嬢様の身体にはございませんの」


 塩基配列とは何かというデュウエルの問いにたいし、鬼子は生物の設計図であると答えた。

 その後、幾つかやり取りをしていたようだが、デュウエルの知識が追い付いていないことと、鬼子がリンクが切れているため回答不能となり、人類の歴史は解明されなかったのであった。


 

 午後になり、オトヒメは浜辺に座りふさぎ込んでいた。鬼子がなぐさめているが、オトヒメの耳には届いていない。


 13年まえ、島に流れ着いた乳白色の箱の中にいた赤子。旅立つ前に村長夫妻に教えられた話を思い出す。

 「・・・私は誰なの・・・」

 「オトヒメはオトヒメさ」

いつの間にか前に来ていたタケルが、オトヒメに手を差し出す。



 ようやくデュウエルの船を引き上げた。

 船体の横には『Cygne』と書かれていた。

 船は銀色で三角帽子を逆さに浮かべたような形をしていた。尖った船主から船尾にむけ、船縁が弧をかいて広がっていく。その姿は水面を飛び立とうとする水鳥を連想させた。

 上部は大きなガラス窓がついたキャビンが備え付けられていた。

 船の下部に車輪が格納されていて、デュウエルは水陸両用と自慢していた。



 数日の準備期間をへて出発の日がやって来た。

 南東にあるとても大きな島へ行くことになった。

 魔素からオトヒメを守るための服を作るのに、ある金属が必要らしい。

 残念ながら『白鳥号』では直接に目指すことはできないので、北側から島伝いに回り込むとの事だった。


 「しゅっぱーつ」

 デュウエルが片手をあげる。白い箱を引きながら『白鳥号』は一路北を目指す。

 タケルとオトヒメは手を握りながら、天国に一番近い島が水平線に沈むのを見送るのであった。



 数日後、隣の島の新たに出来た半円形の入り江に数人の人陰があった。

 「反応が無い」

 「完全に見失ったか」

 屈みこみ砂地を確認していた男が立ち上がる。

 「私はひとまず本国に戻る、引き続き周囲を探せ」

 「はっ!」

 人影は闇に消えていった。



 おまけ


 『白鳥号』の動力も魔核をつかった魔導駆動装置であった。

 タケルが水没している船を調べたところ、魔核が装着されていなかったので、余っていた魔核をつかい船を引き上げた。

 「デュウエルさん、遭難していたわけではないですよね?」

 「し、調べ物がのこっていましたわ・・・」

 デュウエルは小走りで、家に入っていった。




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