70話・ルイに助けられて
小屋の中に入ったとき、日はとっぷりと暮れていた。周囲は真っ暗で、ルイは暖炉に近付いて火を起こした。王都とは違いここは避暑地で比較的過ごしやすい場所だ。それだけに日が暮れるとかなり気温が下がる。肌寒いくらいだ。特に水の中に浸っていただけあって体はかなり冷えていた。
その体に暖炉の明かりは浸透するように温かみを伝えてきた。その明かりが周囲を照らし出した時に、わたしは改めてルイの姿を見て驚いた。彼はブラウス姿のままだったのだ。きっと川に入る前に宝石のついて重みのある上着は脱ぎ捨てたのだろうけどまさかズボンまで穿いてないとは思わなかった。
この国の貴族の男性はズボンの中に下着というものをつけないので、ブラウスは長くお尻が隠れるタイプのもので、下肢の間の部分をボタンで留めるタイプのものなのだ。そのブラウスで泳いだ彼は当然、濡れたブラウスが肌に張り付いていて透けている。
そこには自分が思い描いていた様な少年の姿はなかった。彼は大人の体つきになっていたのだ。それに気がつくと同時に彼の体を直視していたことに気がついて急に恥ずかしくなった。俯くわたしに、ずぶ濡れの彼が言う。
「ジェーン。ドレスを脱いだ方が良いよ。下着もね。着たままだと気持ち悪いだろうから」
そう言いながら彼は狩猟小屋に置いてあった何枚か置かれていた毛布のうち、一つを手渡してきた。彼は踵を返して外に出ようとする。彼のその行動に置いていかれるのではと思い不安になった。
「ルイ。そんな格好でどこに行くの?」
「川に入る前に脱ぎ捨ててきた服を回収してくるだけだよ。安心して」
すぐに戻って来ると言い、ルイは外に出た。その間にドレスを脱いだものの、コルセットをしていたことに気がついて途方に暮れた。一人では脱げないのだ。どうしよう。と、思っているところに脱ぎ捨てたらしい服を抱えたルイが戻ってきた。下着姿で格闘していたのを見られてしまった。羞恥に狩られて叫び声を上げると彼は慌てて後ろを向いた。
「きゃあっ」
「ご、ごめん。ジェーン。もう着替えた頃かなと思って」
彼の耳が赤い。もしかしたら彼はわたしが着替える時間稼ぎの為に外に出ていてくれたのかもしれない。気を利かせてくれた彼に申し訳ないと思いながら説明をした。
「あの……。コルセットがなかなか外せなくて……」
「コルセット?」
「いつもダリー達に締め上げてもらって、後ろで紐を結んでるから一人で外せなくて……」
「僕でよかったら外そうか?」
「お願いしてもいいかしら?」
「後ろを向いて」
異性に脱がせてもらうなんて初めての経験だ。恥ずかしく思いながらも毛布で前を隠しながら後ろを振り向くと、コルセットの紐にルイの手が触れた。いくら弟のように思っている相手でも恥ずかしいものはある。毛布をぎゅうっと胸の前で抱きしめていると背後から聞かれた。
「いつも女の人は大変だよね? こんなものをつけてるんだ?」
「そうよ。あまり締め上げすぎても苦しいし、弛めすぎても気持ち悪く感じる時があるわ」
「付けるのをやめればいいのに。体を酷使してるよ」
「そうはいかないわ。ドレスを綺麗に着こなしたいもの」
紐がゆっくりと外されていくと、体への締め付け感が緩んだ。




