52話・エメラルドグリーン家の三人兄弟
ギルバードは部屋の中に、熊のように雄々しく気の優しい義兄がいるのに気が付いた。義兄のガルムはソファーに腰掛けていた。
「ガルム義兄さん。ありがとうな」
「いいってことよ。いつでも頼ってくれ。おまえは俺達に気兼ねしてかなかなか頼りにしてくれないから兄ちゃんは寂しく思っていたぞ」
ガルムがトントンと自分の座っているソファーの隣を叩く。ギルバードは義兄の隣に腰掛けた。すると大きな手でがしがしと頭を撫でられた。
「義兄さん。俺、もう子供じゃない」
「遅れてきた反抗期なのか? 俺から見ればおまえはいつでも可愛い弟だ」
義兄にとっては、ギルバードが九つほど年が離れているので幼い頃から可愛い、可愛いと言っては甘やかしてきた。それが嬉しくもそんなに構ってもらっては、自分より年が七つ上で、サーファリアスたちと同い年になるグレイが面白く思わないのではないかとギルバードは考えていた。
「……グレイ義兄さんに悪いよ」
「なんだ? 妬いてるのか? 俺にとってはあいつも大切な弟だが、お前の方が可愛い点では勝っているぞ。あいつは特殊だからな」
「それには同意するけど……」
「安心しろ。ギル。あいつも来てる」
「はああ? グレイ義兄さんが? なんで?」
目を見開くギルバードに、ガルムが何を驚くことがある? と、言ってくる。
「おまえに会いに来たに決まっているだろう。実はな、今回の件であいつと結構揉めたんだ。あいつ、拗ねてな、なんでギルは自分を一番に頼って来ないんだって。こういう場合は、ギルの好みは何でも知り尽くしている自分を頼りにするのが当たり前ではないかって。女みたいにきゃんきゃん騒いで煩いからその辺に放置しようかと思ったんだが……」
「いやあ、放置したら駄目でしょう。周囲の迷惑になります」
「その通りだ。だから連れてきたぞ。本人の希望で」
「どこに?」
「ここだよ。ギル~」
「へぇ?」
細身の男がソファーの下から転がって出てきた。
「会いたかった。ギル~」
「うわああっ。グレイ義兄さん。なんでここから?」
すくっと立ち上がって抱きついてこようとした細身の美男子相手に、ギルバードはぎょっとした。思わず拳を握った手で伸してしまう。それを見てガルムは豪快に笑った。
「はっはっははは。これで我ら兄弟三人そろった。今夜はおおいに飲み明かすぞ」
「うおおおおお」
賛同したのはギルバードに殴られた頬を擦りながら起き上がったグレイであり、渋々ギルバードは了承した。この二人の前に拒否権など存在した試しがない。今夜は寝せてもらえそうにないなと腹を括るしかなさそうだった。




