表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインは死にたくないので婚約破棄します!  作者: 朝比奈 呈
婚約破棄したいんです
36/117

36話・ファーストダンスは誘われたことはない

 メアリーは近くまで来たがわたし達の傍に寄ってくることはなかった。ただ、ギルバードをねめつけるように見て来ただけで、わたしと目が合うとそれを避けるように目線を逸らした。

 しばらくしてこの夜会の主役であるルイ陛下が顔を出し、舞踏会が始まると皆が踊り始めた。夜会では、皆が許婚や配偶者と一番最初に踊るのが礼儀とされている。周囲の人達が自分のパートナーを連れて広間の中央に集まり出し、わたしもギルバードに連れられて広間の中央に歩み出た。


「ジェーン。きみと踊るのは久しぶりだ」

「そうね。初めてじゃないかしら? こうしてあなたに誘われて踊るのは」

「そうかな。きみとは……何度か踊ったよね?」


 今までギルバードと夜会に参加することはちょくちょくあったとは思う。でも、会場に着くと彼は友人達と話しこんでしまい、連れのジェーンは壁の花状態で、ファーストダンスを見送ることが多々あった。友人達のなかには異性もいて、彼女たちと楽しそうに踊りの輪に入り込んでいく許婚を、複雑な気持ちで眺めていたこともある。


 彼に誘われるのはラストダンスだけ。舞踏会では存在を忘れられ、最後の最後で終いのダンスに誘われるのだ。そんな時ほど惨めに思われることはない。着飾った自分を褒めてくれるのはラストダンスが終わった後なのだから。しかも帰宅の馬車の中。


「ファーストダンスは一度も誘ってくれたことなかったわ」


 ギルバードに手を取られ、踊り始めて思わず低い声が出た。これまでのジェーンは、ギルバードに好かれたいばかりに、彼にとって扱いやすい女に成り下がっていたような気がする。でもそんな自分はもういらない。ここにはギルバードの思うようにならない女がいるのだと思わせなければ。

 ギルバードはわたしが不機嫌なことに気が付いたのだろう。機嫌を取るように言ってきた。


「ジェーン。ごめんよ。僕が悪かった」

「謝ってもらわなくてもいいのよ。これからもどんどん好きになさったら? わたしも好きにさせてもらいますから」

「ジェーン」

「だってわたし達、別れるんですから」


 その言葉にギルバードは傷付いた顔をしながらも、踊る手を止めなかった。わたしは無言になった彼のエスコートでくるくるとその場で回ってみせた。今更傷付いた顔をしてみせたってもう心は動かないんだから。黙って踊り続け曲が途切れると、わたしはもう踊る気になれなかった。


「喉が渇いたわ」

「じゃあ、向こうで休憩しよう」


 広間のバルコニー席に連れられていくと、彼がここに座ってて。と、言い残し広間へと取って返した。わたしはギルバードに期待などしてなかった。今まで彼は飲み物を取りにいくと一刻も戻って来なかった。代わりに給仕の者が来てグラスを置いていくだけだ。今回もそうだろうと思っていたら違った。

 すぐに彼は戻ってきた。両手に赤と白のワイングラスを持って。それにおやっと思う。赤と白。何かを暗示してるような……?


 ギルバードはわたししか見ていなかった。彼にしては有り得ないほどの熱心さで普段とは何か違った。そのギルバードは彼にしては珍しくも、注意力も散漫になっていたようだ。こちらに向かってくる途中、誰かにぶつかったと思ったら女性の悲鳴があがった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ