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ヒロインは死にたくないので婚約破棄します!  作者: 朝比奈 呈
婚約破棄したいんです
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11話・五宝家の一人、宰相サーファリアス(二十五歳)◇アンバー侯爵家

「嫌だ。これじゃ、どう動いても死罪確定?」

「何を悩んでいるの? ジェーン。きみの憂いは晴らしてあげるから安心して」


 うな垂れそうになったわたしの呟きにルイが反応する。目の前のルイは優美な笑みを口元に湛えていた。この少年王は美しすぎるが華奢で……と、彼の顔から首、そして肩に目をやったわたしは思わぬ変化に驚いた。いつの間にか彼は成長していたようだ。肩幅が広くなり胸板が厚くなっていた。彼も十四歳。成長が著しい年頃となったのだと思うと、尚更、姉貴分として彼を守らねばという使命に駆られた。これなら彼の御世を長く続けられる。いや、続けてみせる。わたしの死罪を回避する為にも。

 拳を握り締め、天を見上げていたらルイに苦笑された。


「このタルト、美味しいよ。ジェーンは食べないの?」

「頂くわ」

「そういえばどうしてきみはギルバードと婚約破棄したの? あれだけ彼のことを気に入っていたのに」

「あなたも知ってるとは思うけど、ギルバードとは色々ありすぎて目が覚めたから」


 タルトにフォークを刺したところでルイが聞いてくる。それに目を落としながら言うと仕方ないよね。と、同情した声が返ってきた。


「彼は女性との噂が絶えなかったしね。余の父が認めた婚約とはいえ、申し訳なかったね」

「いいのよ。しばらくは男性なんて必要ないわ。花の独身生活を楽しむつもり。清々したわ」


 貴族社会では婚約破棄した女性なんて、男性よりも良く思われないし、このまま行かず後家か、もしくは既婚者の後妻に入ることが多い。でも前世を知るわたしとしては、異性との付き合いは恵まれなかったし、別に無理に婚姻なんて考えなくてもいいんじゃないかと思っている。

 あのメアリーでさえ、十九歳になった今も独身なのだから気にする方がおかしいと思う。メアリーの場合は婚約相手が次々病死で亡くなって、現在は婚約相手がいない状態だ。なんだかきな臭いけど。


「でもその花の独身生活はいつまでもつかな? ギルバードとの婚約破棄を聞きつけた他の五宝家の子息達を初め、大勢の独身貴族達が自分にもチャンスがあるんじゃないかと、パール公爵のもとへ婚約の申し込みに押し寄せていると聞いたよ」

「そんなの初耳だわ。単なる噂話でしょう?」

「いいや。さっそく訪れたようだよ。お邪魔虫が」

「えっ?」


 顔を顰めたルイにどうしたのかと思えば、耳ざわりのよい声が近づいてきた。


「陛下。そろそろ執務にお戻りを。これはパール公爵令嬢。いつもながらお美しい顔を拝見できて光栄にございます」




 ルイを呼びにきた宰相のアンバー侯爵は、わたしを見て一礼した。アンバー侯爵は五宝家の一人で、乙女ゲームの中でもヒロインの攻略相手の一人でもある。彼は二十五歳の若者で金髪に茶色の瞳をしていた。右目に金縁のモノクル(片眼鏡)をつけている。


「お世辞でも嬉しいわ。宰相さま」

「私のことは宰相と言う肩書きなどではなく、どうかサーファリアスと」

「サーファリアスさま」

「ああ、良いですね。あなた様の声で名前を呼んで頂けるとは。後日、あなたさまのお屋敷に参ります。色好い返事が頂けると良いのですが」

「はあ?」


 サーファリアスは、じっとわたしを見つめてくる。一体、どうしたのだろう。わたしの知るアンバー侯爵は、ギルバードと共にいたわたしを害虫か何かのような目つきで見ていて好意的ではなかったと言うのに。


「サーファリアスさま。お昼になにか悪いものでも召し上がられたのではないですか? それともお熱があるのでしょうか?」

「ジェーンさま。私はいたって普通ですよ」

「それならば良いのですが……」


 心外な。と、言う感じで見返してきたサーファリアスに苦笑で返すと、ルイが笑った。


「ハッハッハ。お昼に悪いものでも召し上がりになられたか。ジェーンは鈍感だと思っていたけど、こりゃあ、面白いね。ねぇ、サーファリアス」

「ルイさま」


 ルイの発言に思うところがあったようで、サーファリアスは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、わたしには全然意味が分からなかった。


人物紹介◇サーファリアス。五宝家の一つ、アンバー侯爵家の当主。

この国の宰相。二十五歳。独身。

金髪に茶色の瞳をしていて

右目にモノクル(片眼鏡)をつけている。


 ジェーンには好意を抱いているものの、

今まで彼女の側に軟派な許婚が張り付いていたことから

その許婚ギルバードを面白くなく

にらみ付けていたことが、ジェーンが自分は宰相に

嫌われていると誤解されることに……。


 彼としてはジェーンのような理想の女性に

女性との浮名が絶えない男が許婚としていることが

許せないようです。

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