『リア充爆発しろ』ってくらい幸せになれ!
で、退院したナオに茉莉ちゃんも加わって、俺たちはドレスオーダーの会社を始めた。社長はナオ。ナオは、
「アタシなんかガラじゃないわ、圭介、アンタがやりなさいよ」
って言ったけど、んなもん俺の方がガラじゃねぇ。第一、俺はデザイン画の線一本引けないぞ。それに、俺まだ今の会社、辞めるつもりねぇし。
んで、お姫さんは200年とは言わず、あっちに帰れるみたいだ。ネマーサが、つながってないはずの麗子の情報をやけに知ってやがるから、問いつめたらあっさり吐きやがった。
ただ、ネマーサと菊宗正を媒介にしているので、お姫さんがあっちに帰ると、必然的に麗子がこっちに戻ってくることになる。それで、元通り丸く収まるんじゃないかって? 甘いな、麗子はあっちで結婚してガキまでいるんだぜ。そうなれば、旦那はともかく、子供をおいて来なきゃならなくなる。それに、俺だって、お姫さん……いや、コーデと二度と会えなくなるなんて考えられない。
そんな俺を見て、
『そうじゃろう、そうじゃろう。これが最善の策というものよ』
と胸を張るネマーサ。刀に表情なんてないけど、ほくそ笑みが見えるような気がして寒気がしたぜ。だけど、手放す気がないってか、俺のその気がなくなるまで、黙ってただけじゃねぇかよ、この確信犯、めが。
ま、あのままあっちの世界にいたら、コーデは生きてるか死んでるかわかんないような暮らしをずっと続けて、いつか本当に自ら命を絶ってたかもしんない。ネマーサが縦しんばそれを阻止続けたとしても、心は崩壊してしまっていただろう。それを側で見てるだけだなんて、このおしゃべりな刀には耐えられねぇだろうからな。
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『これでは妾だけ蚊帳の外ではないか。なぜ手伝わせてはくれなんだ』
結婚式をあと一週間と迫ったとき、やっとできあがったナオ渾身のウエディングドレスを前に、ネマーサがぶうたれていた。しかも、何だかネマーサが宙に浮いているように思えるのは気のせいか。暴れるつもりじゃねぇだろうな。ナオはそれを横目で見ながら、
「んなこといったてさぁ、アンタに手伝わせたら結局生地はコーデちゃんが切らないといけないから、ちょんばれになるじゃない。
結婚式には出れるようにしてやったんだから、そこは我慢しなさいよ」
と恩着せがましく言う。
そんなナオが
「コーデちゃんは元々お姫様なんだから、この際、ロイヤルウエディングをコンセプトにいきましょ」
と、俺に提案したのはコバルトブルーに金糸の刺繍が入った、中世の王様が着そうな奴。でも、そんなデザインだからか、ネマーサを背負っても、浮いた感じがしないんだな、これが。ってか、逆にこのド派手な宝剣が見事に映えるんだ、悔しいことに。それに、背負った俺と腕を組んでいるから、コーデに言葉の心配もなくなるというおまけ付き。ナオにしちゃ、良い仕事してやがる。だけど、
『それはまぁ……恩に着ておる。だが、あの姫様の召し物はなんだ、あのように胸を深く開けるなど、以ての外。姫様は下賤な輩とは違うのじゃ』
というネマーサの言葉に、
「相変わらず堅いわね、ばーさんは。キレイなものはみんなに見せなくっちゃね、茉莉」
なんて抜かしやがるし、
「そうよ、あたしなんか見せたくたってないって……ナオちゃん、なに言わせるのよ!!」
おまけに、茉莉ちゃんまでんなことを言い出すし、
『ばーさんとは何じゃ、貴様は妾をすぐ年寄り扱いしおる。妾に歳は関係ないわ!』
ネマーサは明後日の方向で怒り出すし。こいつら……
「やかましいわ、お前等全員ぶっ殺す!」
コーデは俺のもんだ、文句あっかと言ってコーデを見ると、コーデは俺たちを見ながらはらはらと涙を流していた。それを見て、
「あら、そんなに胸を開けるのイヤだったの?
じゃぁ、考えないとってったって、今から手直しなんてできるかしら」
慌ててそう言うナオ。けど、コーデはふるふると首を横に振ると、
「いいえ、わたくし嬉しいんですの。こんなにすばらしい方々とこれからも共にすごせるんですものね」
と言って涙を拭う。
「そうだよ、圭介さんとケンカしたからって、異世界なんかに帰っちゃだめだよ」
それに対して茉莉ちゃんがそう言うと、
「帰りませんわ。わたくしの居場所はもう、ここにしかありませんもの」
と笑う。そうだよ、コーデ、お前が生きるのは地球の俺の側だけだ。だが、ちょっと考えるような仕種をして、
「ですが、陛下にこのように幸せに暮らしているという事だけはお伝えしたいですわね。ネマーサ、何とかなりませんの?」
と言い出す。
「えーっ、お前を捨てた奴のことなんてどうでも良いじゃん」
「あら、わたくしはただ、お礼が言いたいだけですの。
陛下があの場に私を置いてくださらなければ、わたしは今こうして、ここにいないと思いますから」
この期に及んでまだ『陛下』かよ。コーデに夫婦の情なんてないのは解ってるけど、それでもムカつく~!
ま、城の塔かなんかに幽閉されてたら、このトリップ自体成立しなかっただろうからな。すると、
『伝えてやらんこともないがな、まだあやつの反省が足らぬ。
そのうち、程良く灸も据わったら夢枕にでも立たせてやろう。
その間に、姫様は今より以上幸せになられよ』
とネマーサが言い出した。
そうだ、薄情な王様なんてカンタンに安心させてたまるかよ。なんなら一生後悔したままでいてほしいくらいだ。
ま、それじゃコーデの気が済まないんだろうな。なら、夢で会うときには王様に
『リア充爆発しろ!』
って言われるくらい、幸せになれ。
-否、俺が幸せにしてやるから-
―The End―




