海猫亭再生化計画
「ここをバイキング・レモア(レストラン)にします!」
と意気込んで言ったあたしだったが、オッティーさんたちの反応は暗い。でも何で……
「そのバイキングってのは何なんだ?」
そしたら、オッティーさんが首を傾げてそう聞いてきた。えっ、ああ……そういやバイキングって日本語だったわ。それ以前にこの世界にはビュッフェバイキングってシステムもないし。
「来たお客様が一定料金を払えば、一定時間お店に陳列してある食べ物や飲み物を何を何杯食べても飲んでも良いっていう提供方法です」
「一定料金で何を何杯飲んでも食ってもいいだってぇ!?」
あたしの説明に、二人の目が更に驚きに開かれる。
「最初はランチ限定で、400ギルでどうかなって」
時間制限って言っても各人が携帯どころか時計も持ってないこの国ではムリ。だから、開店時間を制限時間にする。だけど、ミラさんが食いついたのは金額の方だった。
「400ギルだって!!」
「やっぱ高すぎます?」
大体、ここの男たちの昼食の相場は340~50ギル程度。好きな物を好きなだけ食べられるという付加価値込みの価格設定なんだけど、高いとみんな来てくれないかな。
「逆だよ、逆。安すぎだよ。港の男をナメるんじゃないよ、そんな料金でやったら、あっという間に食い尽くされて、早晩この店潰れちまうよ」
すると、ミラさんに心底あきれた顔でそう言い返されてしまった。だけど、ここで怯んじゃいられない。
「でも、お店に来るのは男の人ばっかじゃないですよね。
それに、いろんなものを少しずつ食べられるという点では、女性や子供、お年寄りにこそウケるとあたしは踏んでるんですけど」
「いろんなものを少しずつねぇ」
そう言っても、2人はまだ納得の行かない様子だ。
「ええ、あたしたち女にはこういうお店の一皿って多いですよね。もちろん、男と違って家族と来ることが圧倒的に多いからシェアはできますけど、それも2つか多くても4つ。コレなら思った全部の料理が食べられる。一皿なら気になっていても勇気のでなかった所謂『食わず嫌い』の料理にだって、簡単に挑戦できます
それに、相手の注文を聞くんじゃないから、予めそこそこ作って置いて、売れ行きを見ながら追加を調理すればいいんですし、料理を運ぶのはお客様自身だから、片づけだけをすればいい。
これなら、相当数のお客様が来ても3人で対応できます」
と、訳もなく力説しちゃったよ。
「まぁ、言いたいことは何となく解ったけどよ、肝心の料理、何をどれだけ作りゃいいのか……そいつを量るのが飛んでもなく難しいんじゃねぇか?
試行錯誤でやれるような経済力はウチにはねぇぞ」
おまいさん、それじゃいくら持ち出してもキリねぇぞとオッティーさん。
「確かにそれはそうなんですけどね。
そこは、あいつを使います」
あたしはそれに対して、ニヤリと笑ってそう返した。




