えっ、ホントにあんの!?
ヘイメに帰れると思ったとき、最初に思い出したのは、オービルの遺髪のこと。そう言えば、味覚障害やオーレンの妊娠で結局遺髪のこと誰にも言えないままだった。正直、3年経った今では、ちょうど良い具合に白骨化してるかもしれないけど、今更墓暴きなんて言ったらそれこそどん引きだよね。あたしもそこまでして『連れて行く』気はなくなってたりするし。
でも、オービルの身につけていた物を何か持って行こう。何が良いかな。あっちにも荷物は残ってるだろうけど、より、オービルの側にあったものが欲しい。
そこで、
「なんか、オービルらしいもの、残ってないですか。ホントは髪の毛とか爪とか体の一部があれば良いんですけど、さすがに残ってないし」
あっちの家の庭にもう一個オービルの墓を作ろうと思うからとオービルママに話すと、
「良いわね、オービルは本当にヘイメが好きだったから。
髪の毛でいいのね」
と即答された。ホントは骨が……それは、いわぬが花か。にしても、ホントに髪の毛があんの!? びっくりするあたしに、オービルママはなんと裁縫グッズの中から、油紙に包まれた物を取り出した。中には間違いなく筋肉達磨には似つかわしくない柔らかく細いオービルの髪が。
しかし、何故に裁縫箱? 首を傾げたあたしに、
「針山に入れるのよ。こうするとね、針が錆びないのよ」
あちらでもやってなかった? と聞くオービルママに、あたしは頭を振った。ばぁちゃんあたりなら知ってたかもしんない。けど、自慢じゃないけどあたしは料理以外の家庭科はからっきしダメ。するとオービルママは、
「ノーマちゃんの世界なら、そんなことしなくても錆びない針とかありそうだものね」
と言う。ステンレスの針とかあったっけ……ま、どうでもいいけど。
「ありがとうございます……」
「私たちもね、最期はヘイメに帰してやりたいと思っていたのよ。でも、長旅は絶対にあの子の命を削っただろうから。結局、私もカクタスも言い出せなかったわ」
「それに、オービル自身も行くとは言わなかったと思います」
あの堅物は、仕事を残してヘイメに帰るとは絶対に言わなかっただろう。
何にしても、ここにオービルの遺髪がある。そして、それをヘイメに持っていける。あたしはそれだけで嬉しかった。
あたしは、きれいな箱にオービルの遺髪を入れると、オーレンだけを連れてヘイメに旅立った。マリエルはあと半年だけど、基礎学舎が残っていたし、あたしも気持ちの整理がついたらかえってくるつもりだったから、まさかそんなに長居するとは自分でも思っていなかったのだ。




