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刀様の言う通り!?  作者: 神山 備
Taverna la Bianca
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味覚障害、そして……

 一回目は寝起きだったからだと思ったあたしも、次の食事にもその次の食事にもまったく味がしないと、さすがに凹んだ。完璧味覚障害だ。

 味覚障害の原因は大まかに分けて三つある。

 第一には亜鉛不足。亜鉛は主に貝類に多く含まれるが、必要量はすごく微量なので、普通の食べ方をしていれば、心配することは何もない。特に、このアルスタットにはせっかく摂った亜鉛を無効化させる化学物質なんて添加するはずないから、過激なダイエットでもしなきゃ亜鉛不足になる事なんてまずあり得ない。ただ、オービルのお葬式以来、食べる暇も食べる気力もなかったし、ぶっ倒れてから4日間は飲まず食わずだった訳だから、不足していた可能性も否めない。

 第二には、ストレス。これはもちろんオービルの死。急に事故で死んだわけではないから、一応覚悟はしていたつもりなんだけど、実際問題彼の棺に土をかけられるのはホントにイヤだったりしたし、見えないストレスは感じていたんだろうと思う。

 そして、第三には外的要因。あたし自身に怪我をした記憶はないけど、4日間昏倒するほどだし、意識を失った時に頭を激しく打っている可能性は捨てきれない。

 と、原因になりそうなことがありすぎなのだ。それだからこそ事実はすんなり受け止めることができたんだけど、問題はその後で、医療の専門家ではないあたしには、その中の原因の特定もできなければ治療法も亜鉛を含む食品を食べることと、休息ぐらいしか思いつかないけど、味が分かんないと食べる気がしない。少しでも弾力があると飲み込めなくなってしまった。


 そして、カロリーの摂取が少なすぎることで、気分は更に落ち込んでいく。所謂ダイエット鬱という奴だ。オービルが寝たきりになったときに、あたしの仕事は既にスタッフに振り分けられていて、息急き切って仕事に復帰しなくても大丈夫ではあるんだけど、逆にそのゆとりがあたしを追い詰める。この味覚障害はもう治らないんじゃないか。そしたらあたしなんてなんの価値もなくなってしまう。早く治さなくちゃ……だからといって焦っても治るはずはなく、イライラが頂点に達したあたしは、菊宗正を手にして台所に向かった。そしてあたしは泣きながら、

「菊宗正、今すぐあたしを日本に返しなさいよ! あたしが今、ここにいたってもう、何もできないじゃん。

日本に帰ったら死んじゃう? 良いよそれでも。どうせあたしは9年前に死んでたんでしょ!!」

と叫びながら、あのおっさんたちに切りかかった時のように、やにわに菊宗正を振り回した。なんで台所かって言うと、寝室なんかで振り回しちゃうと、家具とか傷付いちゃうもんね。なんでそういうとこだけ冷静なんだってのは言いっこなし。主婦の悲しい性よ、性。

「うへっ、何!?」

だけどその時、台所の隅からいきなり“何か”が飛び出してきて、あたしに襲いかかってきちゃったのだ。


何がいるの? この台所!



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