表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刀様の言う通り!?  作者: 神山 備
Taverna la Bianca
44/96

衝撃のトリップの真相

 そのとき、いきなり周りが光り始め、あたしは思わず目をつぶった。と同時に、すっと下に落ちる感じがする。


「奥様、気がつかれましたか」

そう言われてビックリして瞑った目を開けると、ジュディーちゃんと目が合った。ジュディーちゃんは、ケイレスのレクサント家のお手伝いさんだ。あたし、アルスタットに帰れた? ってか、日本の方が夢オチだっただけ??

「なかなかお目覚めにならないので心配しました」

と、ジュディーちゃんは続けて涙目でそう言った。あたしはあの日台所で倒れていて、もう4日も目を覚まさなかったらしい。

「ごめんね、心配かけて」

と謝る。だけど、

「ホントそうだよ。もうお酒は飲み過ぎちゃダメだよ」

続いて聞こえてきた声にあたしは口を歪める。

「ジェイ陛下、仕事さぼってこっそりお城抜け出してきたんですか」

「人聞きの悪いこと言わないでよ。ボクはノーマちゃんが心配で来ただけなのに。

それに、仕事はちゃんとやってるよ」

それに対して、ジェイ陛下はそう言って、唇を突き出す。仕事をしてるからって、ちょくちょく城を抜け出して良いわけじゃないでしょうよ。それにあたし、コップにお酒は注いだけど、結局一滴も飲んでないよ。

「あ、そうだ菊宗正は?」

と聞くあたしに、

「キク様でございますか」

とジュディーちゃんが棚に飾ってある菊宗正を恭しく取ってあたしに渡す。

「キク様?……ああ、これってノーマちゃんが向こうから持ってきたっていうジョルトだね。でも、何で様呼び……」

それを聞いて、ジェイ陛下が微妙な表情で菊宗正を見る。一応、こいつはあたしとオービルを結んキューピットだからね、あたし以外には聞こえないけど、しゃべれることもあって、ヘイメのダリルさんもジュディーちゃんも、今ではシムルさんまで様呼びだ。

(菊宗正、ただいま)

『何故ただいまと言う。主はどこにもいっておらんのに』

あたしが告げた帰還の挨拶に、菊宗正は素っ気なくそう答える。だけど、

(じゃぁ、やっぱりここが現実なんだね)

と言ったあたしは、

『信じられぬかもしれんが、こちらの方が現実だ。主もあやつを失って、人恋しくなり生家の夢を見たのであろう。

大体、再び日本に戻るなどあり得ない、主は日本では既に死んでいるのだからな』

続く菊宗正の発言にフリーズする。

【今、何つったの!!】

菊宗正の聞き捨てならない発言に、思わず大声も出た。それを聞いて、

「の、ノーマちゃんどうしたの?」

と、まだ帰ってなかったジェイ陛下が心配顔でのぞき込む。

「あ、何でもない……デス」

と、ジェイ陛下にかろうじて取り繕いながら、心の中では、

(ちょ、ちょっと死んでるってどういうことよ!!)

と、菊宗正に目一杯凄みを利かせて尋ねる。

『もちろん、そのままの意味だが? 我とて何のきっかけもなく、闇雲に界渡りをさせるわけにもいかんのだ。

我はあの時、主がいたあの場所にいた女……名はなんと言ったか……とにかく、その女と主をと入れ替えたのだ』

(い、入れ替えたって簡単に言うけどさ!)

それが本当だとしたら、あたしの代わりにあの時あの場所にいた女性が殺されてるってことでしょ? 知らない内に殺人犯だなんて、あんた何やってくれたのよ。

『まあ、それには違いないが、彼の女は主と入れ替わらずとも、早晩死んでいたぞ』

そしたら、菊宗正は暢気にそう返した。続けて、

『その女はな、あの場所でまさに自ら命を絶とうとしていた。自分でそうするには躊躇いが入るからな、巧くいかず、苦しむことの方が多い。だから、我は苦しまぬよう、介錯をしてやったまでのこと』

なんてしゃらっと答えるもんだから、

【介錯って……もしかしたら、そのままなら誰か助けに来たかも知れないじゃん!!】

とあたしは再び大声を上げた。ああ、菊宗正との会話が日本語で良かった。とりあえず介錯とか物騒な用語がジェイ陛下に伝わんなかったから。

『主よ、主がアルスタットに降り立ったとき、周りに誰かおったか?』

すると、菊宗正はあたしにそう返した。

(ううん……誰もいなくて3時間半歩いてやっとヘイメにたどり着いたよ)

そう、人っ子一人いない草原だった。

『それはつまり、女が覚悟の上であの場にいたという事だ。それに、今さら、事実は曲げられんし、女もきっと長く苦しまずに済んだと感謝していることであろう』

と、淡々と語る菊宗正。


 ……確かに覚悟の上だったかも知んない。知んないけど、もしかしたらどうしても死ねなくて自殺をあきらめたかも知んないじゃんよ! そんなの、あたしが殺したのと同義じゃん。そんなにしてまで助けてなんか要らなかったよ!! 

【菊宗正の、バカぁ!!】 

  あたしはそう叫びながら菊宗正を放り投げ、慟哭した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ