あたし、アヤシイ者ではございません
だけど、歩き始めて1時間半ぐらい経っても何も見えてこない。闇雲に歩き始めたのは失敗だったかなと思いながも、だからと言ってあのままあの場所にいてもどうにもならないんだしと、さらに歩き続ける。その内、、やっと道らしきものが現れた。
助かった……この道をたどって行けば、そのうちどっかにつくだろう。あたしは勢いよくまた歩き出したんだけど、甘かった。行けども行けども道しかない。もしかしてこの世界の人は絶滅していないのかもしれない。ふとそんな考えが過って泣きそうになるけど、それでもあたしは歩き続けた。
そして、遠くの方に家らしき建物が見えた時には、ホッとして地面にへたり込みそうになったほどだ。このとき既に、道が現れてから2時間、歩き始めてからは3時間半が経っていた。
さらに進んでいくと、家は一軒じゃなくどうやら町みたい。しかも、家並の向こうに海が見える。港町? だとしたら、ここのご飯はきっと美味しいよね。そう思ったら、あたしのお腹がぐうっと鳴いた。ああ、早くなんか食べたい。あたしが家を出てきたのは、パパとママのいないお昼前。それから今まで水一杯飲んでないんだもんねぇ。
それと、ここがどこなのかも知りたい。もし地球だったら時間をかけても家に帰れるだろうし。地球じゃなくても、とりあえず今晩寝る場所だけは確保しなくちゃ。
だけど、町に入ったあたしは、ここがそこか聞こうとした同世代っぽい女の子にいきなり逃げられた。確かに見ず知らずの人間だろうけどさ、顔引きつらせて逃げなくても良いじゃん(怒)
そして、その女の子が町の奥に消えた後、しばらくしてわらわらと人が集まってきた。そのほとんどが屈強な海の男って感じの……しかも、手になんか武器とか持ってるし! あたし何気に悪者フラグ立ってる? な、なんで?? あたしは首を捻っていたが、彼らが一様にあたしの手元を見ていることに気づく。あたしが手に持っているのは……「菊宗正」! うわっ、あたしってば、平和な町に突然襲撃した奴っぽい? いやいや、あたし、いきなりここにやってきただけで、アヤシイ者じゃありませんから! 信じて……くれなさそうか。
あたしはとりあえず菊宗正を地面に置くと、ホールドアップしながら得意のジャパニーズスマイルで笑った。