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刀様の言う通り!?  作者: 神山 備
Taverna la Bianca
29/96

VS宰相(ただし、根回しあり)

「しかし、このクスコフは白いですな。アモナ(ミルク)で煮たのでも無さそうですし、どうしたらこんなに白くなるんですか。」

ひとしきり試食会が終わった頃、宰相のエルド・バーンズさんがニコニコとそう言った。実はエルドさんはこれが白米だってことを知っている。ってか、お土産のパンを絶賛したジェイ陛下に、

「そんな美味しくて他にないものならば、この国の特産にしてはどうでしょうか」

と進言した、謂わば影のブレーン。細身でメガネが似合いそうないかにも黒幕タイプだ。

「おクスコフの薄皮を剥くとこのように白くなるんです」

「薄皮を剥くですと?」

それにしても、あたしの説明に驚いてみせる様は、役者も真っ青な演技力。ま、それじゃないとこの陰謀渦巻く宮中を仕切れないと言えばそうなのかも知れない。

「はい、おクスコフは外皮(籾殻もみがら)を剥いた後でも周りにまんべんなくぬかが膜のように纏わりついてますよね。あれ、当のおクスコフ同士を擦り合わせると剥がれることに気づいたんです。そうしてぬかを剥いで水だけでたいたモノがこのフィエット(おむすび)なんです」

それに応えるように、あたしも背筋を伸ばしてなるたけ賢そうな感じで受け答えする。なんせあたしの今日のキャラは発明家だもんね。

「同じように小麦の薄皮を剥いて挽いた粉で作ったのがこのピペ(パン)です。ちぎってもパラパラしないので、中になんか入れちゃえって、思って」

「しかし、甘い豆だなんて大胆ですね」

「もちろん、おかずでも良かったんですけど、フィエット(おむすび)が塩気のモノだから、こっちはお菓子エランジュにしちゃえって、それだけのことです。この甘い豆はばぁちゃん……いえ、祖母が好きな味でして。

ちなみに、海鮭シェルタを和えてあるのは卵にお酢と油でとろみを付けたソースです」

と、さりげなく移民としての要素も入れる。レズノルドで甘い煮豆が食べられているかどうかなんて知らないけど、アルスタットでチリビーンズが主流なのはここが南国系の気候だからと思うから。

「ほぉ、お祖母様の味ですか。そう言えばレディ・レクサントは色白ですね」

「レズノルドからの移民です。と言っても、あたしはレズノルドのことは全く知らないですけど」

あたしが移民だというと、さっと顔色の変わった人がちらほら。ほら、やっぱりね。同じ世界の別の国でもこれなんだから、次元の違う星から来たなんてことが分かったら、何言われるか分かったもんじゃないわ。 それにしても、オービルの三代前って設定も絶妙だと思う。下手に親の代で移民してきたなんて言ったら、親からいろいろ聞いてることとかあるはずだもんね。


 なかなか本題に入らないのにしびれを切らしたのか、

「して、このクスコフの皮を剥くのは難しいのか?」

ジェイ陛下が割って入る。

「擦ればとれるんですけど、あまり力入れちゃうとおクスコフが割れちゃうんです。割れても食べられないことはもちろんないですけど、炊くとどろどろになってしまうので。で、おクスコフ同士を擦り合わせればどうかなって思って、こういう容器を作ってですね、入れて回したら、きれいに剥けることがわかりました。剥くと言うより磨くです」

そこであたしは書いてきた絵を見せながら構造を説明する。ジェイ陛下は昨日職人さんを呼んでおくよって言ってたけど、さすがにいきなりは無理だということになったんだろう。ジェイ陛下(王族)が個人的に食す分だけならそれもアリなのかもしれないけど、国を挙げてとなれば、王様と宰相が密室で決めてしまったと反発は必至だ。たとえそれがどんなにすばらしいものであったとしても。ううん、素晴らしいものであればあるほど、やっかみで色んなことをいう輩が出てくると思う。つくづく王宮って面倒なとこ。

「ではこれはそちが考えた方法なのか?」

「はい、一応あたしのオリジナルです」

……ここの世界では(ははは……)

「では、このケイレスでもこのからくり作ってみよ。

余はこの味、いたく気に入った。中に入れる物を変えれば色々にたのしめそうだしな」

「はい、解りました。作りましょう。

……ただし、条件があります」

あたしはジェイ陛下の言葉にそう言ってにっこり微笑み返した。


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