捨てる神あれば拾う海産物あり?
異世界料理プロジェクトの第一弾は、とりあえずおむすびとパンに決定。
ま、あたしから言わせればベーシックすぎて料理の範疇にはいってない気がするんだけど、こっちの人からすれば却ってインパクトは大きいらしい。
それと、ちゃんとした一皿だと店を構えなければいけないし、そうなるとそれもコストに上乗せされてしまう。そうなると庶民には敷居が高くなってうしまうし、ここは港町……働く人たちの町だ。屋外でも簡単に食せるお弁当の方がウケると踏んだのだ。
まず、おむすびは定番ツナマヨと鮭の魚二品に決定。えっ、おむすびの定番は梅とおかかだって? それ、いつの時代の話よ。
それからパンの方は試行錯誤の末、ラプタデロンガー(エビのチリソース煮)に決定。
実は、ここヘイメは、エビの水揚げ量全国一。たくさん獲れるから安いし、ラプタデロンガー自体、このヘイメの人たちの食べ慣れた味。それがふわふわのパンから出てきたら、これはウケない訳ないでしょ。
んで、あたし一押しだったあんパンは、甘い物が苦手な男性陣が頑として拒否しやがった(怒)
でもね、そこで素直に引くあたしじゃない。カロアナという、マンゴーとメロンの間みたいな果物を甘さ控えめのジャムにして、プレーンなパンに添えて出したら、予想以上の大ウケ。ただ、こっちの人はパンが甘いとは端から考えないから、中からいきなり甘いジャムが出てきてドッキリというのを避けるためにも、プレーンなパンの横にセットで販売ということで落ち着いた。
ふんっだ、そのうち軌道に乗ったら、絶対にあんパン復活させてやるもん。
だけど、できあがった商品を並べてみて、あたしはうーんと唸った。予想以上に華やかさに欠けるのだ。 真っ赤なラプタデロンガーが中に入っているとしても、パンのままじゃそれは全く見えない。あたしは急遽パンの真ん中を割り、緑の野菜を挟んでコッペパンサンドを作った。
そして、同じ事がおむすびにも言えた。中身はここの人たち馴染みの鰹と鮭だとはいえ、それは味わってみて初めて解るものだ。それに、真っ白すぎるご飯。
完全に煮詰まってしまったあたしは、オービルと一緒に海に散歩に出かけた。
「なんか良いもの浮いてないかなぁ」
そう上手くはいかないかと思いつつ、見た波打ち際には……ウソ、ホントに浮いてたよっ! ワカメが!! そうよ、ワカメを乾燥させて鮭フレークと一緒に混ぜれば、彩りもばっちりだし、一見して鮭が入ってるって解んじゃん。
そして、岩にべちっとひっついているのは、これ海苔だよね。醤油がまだないから、佃煮にはできないけど、こっちでも日除けにはよしずが使われているから、ミニサイズのよしずに外枠を付けて漉いたら、板海苔ができるよ! わぁ、こっちに揺れてるのは昆布!!
「の、ノーマ! お前なにをする気だ!!」
思わず海にザブザブと入って行ったあたしを、オービルが真っ青になって抱き留める。
ったく、メニューに煮詰まったくらいで海に身を投げる訳ないじゃないよ。相変わらず過保護なんだから。




