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刀様の言う通り!?  作者: 神山 備
Taverna la Bianca
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まずは、試食会

 まずは、レクサント家での試食会。

「香りは普通だな」

とオービルが言う。実の所、あたしにとってはいつものより甘い香りなんだけど。パンよりもパネトーネに近い感じかなって。だって、あたしが日本で使っていたのは市販のドライイーストだったもん。無臭とはいわないけどあまり良い臭いではなかったと思う。あたしは、

「まずは、そのままで食べてみて」

と言った。ホント言うと日本でもスープと一緒にパンを食べる人は多いから付けても良かったんだけどね、そしたら、こっちの人は確実にダンキングするもん。まずはそのままでこの柔らかさと、肌理を味わってもらわなきゃ。

 そう言えば、ウチのばーちゃんは、味噌汁でパンを食ってたなぁ……ああ、味噌汁。パンが完成したら、味噌と醤油は絶対に作りたいな。麹がないとダメだけど、お米があるんだから、その発酵体の麹は探せばきっとあると思うんだよね。菊宗正、見つけてくれないかな。

 あたしがそんなことを考えてると、

「まぁ、なんて柔らかいんでしょう。これならこのままでも食べられますわ」

むしろそのままで食べたいですと、一口食べたイオナさんが叫んだ。

「確かに旨いな」

とオービルも頷く。おっしゃ! でも

「だがこの前から思っていたんだが、削った皮はどうするんだ?」

今まで食べていたものを捨てるのはどうかと思うぞと、領主らしくそう付け加えた。

「別に捨てたりしないよ。おクスコフの皮(何だかなぁとは思うけど、もうそういうことにしておく)は熟成させて野菜を漬ければ美味しい前菜になるし、小麦バレッタの皮は家畜の餌にしてたよ。それに、少しだけ戻してピペ(パン)焼くこともあるよ。

大体、白米は美味しいけど、皮の部分のビタミンB1がなくなっちゃうからね」

「そのべタメンB1ってのはなんだ」

「ベタメンじゃなくてビタミンだよ、ビタミン。お米の皮(糠)や小麦のふすまに含まれる栄養素のことだよ。あと多いので有名なのはボゴダの肉かな」

相変わらず、アルスタット人の日本語の発音は悪い。こっちの発音の方がずっと複雑なのに。どうも耳自体が慣れ親しんだ音で捉えるみたいだ。人間の耳ってホント不思議。因みにボゴダというのは、豚とイノシシの間くらい。イノブタってとこなんだけどね。その分、ビタミンB1含有率は多そうだなってあたしは思ってる。だけど、

「その栄養素というのは何ですの?」

イオナさんにそう言われてあたしはこけそうになった。そこから? ま、確かにアルスタットには成分解析なんて技術はないだろうけど。で、

「どう言えば解りやすいかな。食べ物の中には栄養があるのは解るよね。でも、その栄養は一つの食べ物に一つじゃないの。たとえばこのパン。主成分は小麦だから、炭水化物タンスイカブツだけど、油も入れるから脂質シシツも入ってくるし、中にオーラを入れたら蛋白質タンパクシツも入るし」

一応説明してみる。ただ、栄養素の名前はこっちに対応する言葉がないのでそのままで。

「は? タンシュイカ・ブツにチャンパクシツ? なんかの呪文か」

すると、案の定オービルにそう言われてしまった。でも、呪文ってねぇ……あたし、魔法使いじゃないんだけど。チートな刀は持ってるけどね。

「別に、フツーに学校で習うことだよ」

「ノーマ様は前の場所でもそういう研究をなさってらっしゃったんですもんね」

「確かに、そういう学校には行ったけど、この栄養素の話は基礎学舎(小学校)の子でも知ってるよ」

確か、栄養素の話は三年生で習ったよね。

「そんな学問的なことを基礎学舎で学ぶんですか!」

アルスタットでは、学校は日本の小学校に当たる基礎学舎と職業訓練もかねた専門学舎と分かれる。基礎学舎とは、昔で言うところの「読み書きそろばん」を習う場所で、実の所それもちゃんと行ってないで家の手伝いなんて子も多い。

「そんな小さい頃から高度なことを学ばねばならないのしたら、成人するのに時間がかかるのも頷けます」

そして、それを聞いて妙に納得するダリルさんだったが……

「何ですか、これは!」

次の瞬間、ダリルさんはそう言って目を白黒させて震えていた。ありゃりゃ、ダリルさんには間違えて後で渡そうと思ってたあんパン先に渡しちゃってたよ。


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