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刀様の言う通り!?  作者: 神山 備
Taverna la Bianca
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なら、食べるな!!

 お鍋の中を覗くと、わーいできてるできてる『カニの穴』これってお鍋の中の水の対流がちゃんとできていた証拠。しかも、お米が立ってる!

「えっ、何コレ、何も味ついてないの?……」

でも、その炊きあがったご飯を見て、声を上げたのはイオナさん。こっちのご飯は何かしらのスープと一緒に炊くから、白いご飯をみたのは初めてなのかもしれない。

 女性のイオナさんでもそうなんだから、男性陣はもはや退き気味状態。だけどあたしは気にせず水で濡らした木べらで縁からご飯をほぐす。炊きあがってすぐこうしないと、ご飯のふわふわ感が生きてこない。炊いたままの状態で端から装っていく人いるけど、あれってあたしから言わせれば論外。そのまま15分放置するだけで、味変わるってぇの。うわぁ、底におこげまである。完璧ぃ~!


 そのご飯をあたしは一旦小分け用のサラダボウル(だって、こっちには当然だけどご飯茶碗がないから)に入れてぽんぽんと放り上げた。こうして粗熱取ってから、あたしはデカい方の水入りサラダボウルに手を浸し、塩を付けてご飯を結んだ。具は、海鮭シェルタの塩焼き。一番手っ取り早く用意できる具がこれだったからだ。ホントはツナマヨが欲しかったんだけどね、鰹もどきもあるんだもん。マヨも作り方知ってるしね。でも、ツナの油づけが、今日中にはできない。あ、鮭マヨって手もあったか。しまった、マヨも作るんだったよ。


 完成したおむすびを、トレイに所狭しと並べ終わってあたしは、

「さ、完成だよ。あたしの世界のご飯、『オムスビ』だよ。食べて、食べて!」

と、オービルに差し出した。でも、オービルは手を出さない。その顔は明らかに、『こんな物が本当に旨いのか?』と言っている。

「騙されたと思って食べてみてよ。さぁさぁ、ダリルさんもイオナさんも!」

と他の二人にも勧めてみるけど、彼らもご主人様のオービルが手を出さないものには手を出せないみたいで、困った顔で立ち尽くしている。折角がんばって作ったのに、その態度は何よ。何かプチっときたあたしは、

「いーわよ。もう食べてなんかもらわなくて良い。あたし一人で食べるから!!」

何よ、クソ真面目集団! そんな融通の利かない事言ってるから、この世界では美味しい料理が育たないんだよ。

 あたしは、一旦前に出したトレーを自分の方に引き寄せ、両手に一個ずつおむすびを持ってかぶりついた。美味しい。コレめちゃくちゃ美味しいよ。ママが作ってくれたお弁当のおむすびと一緒だよ……勢いよくおむすびにかじりつくあたしの目から涙がこぼれ落ちる。

「この料理はノーマ様にとって、特別なものなんですね」

そういったダリルさんに、

「べ、別に特別なんかじゃないよ……いつも食べてたものだもん」

と涙を二の腕でブロックしながら答える。

「そうかこれがノーマの世界の味なんだな。……では、俺にも一つくれないか」

で、そう言って手を伸ばしたオービルの手を、

「もういいよ。別に無理して食ってくれなくても良いから」

と言って、あたしはおむすびを持った手で更に皿を引き寄せた。

「まぁ、何ですの、これ! これが本当におクスコフですの?」

その時、あたしの横からおむすびを取って口に入れたイオナさんから、驚きの声が挙がった。見ると、イオナさんは目を瞠りながら夢中でおむすびにかじり付いていた。

「そうだよ。イオナさんもずっと見てたじゃん。これがおクスコフ本来の味だよ」

あたしは、ふっとため息を吐きながら、そう言ってオービルとダリルさんにもおむすびを手渡した。

「旨い! クスコフというのはこんなに甘いものだったのか」

「いやぁ、本当に美味しい。何だか今まで損をしていたような、そんな気がする味ですね」

二人はそう言いながらガンガンおにぎりを食べ進め、結局、気が付いたら海猫亭カイファレモアに持って行こうと思っていた分まで食い尽くされていたのだった。食わず嫌いなんだから、まったく……

 ま、いいや。精米したお米はまだまだあるし。お休みをじゃましちゃ悪いしね。明日の朝早く、もう一度炊いて持って行こうっと。


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