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WORLD×world  作者: お猿プロダクション
第1章 異界サバイバル生活篇
9/14

第7話 緋之美は魔法使いだった⁉︎

まだ次話描き終わってないのに……

 


「火ってさぁ。」

「うん?」

「こう・・・まじまじと見てると、結構綺麗よね。」

「そうだな・・・。」

 ここに来てから4・・・いや3回目か。3回目の夜。

 パチパチと火花を散らしながら燃える光景を見て、そんな取り留めのない話が続く。

 一応、狩まがいな事をして食料も確保し、先程食べられる木の実っぽいのも見つけた。何とか水の問題もクリアした。多分、しばらくは持つだろう。そう、しばらくは・・・。

「・・・。」「・・・。」

 会話が続かない。

 お互い、ボロを出さないように、“その”話がうっかり出てこないように殆ど喋らなかった。しかし、それはそれで、何かとんでもない場所(実際とんでもない場所だけど)にたった一人で身を掘り投げているような恐怖感に襲われ、時折しょうもなさ過ぎる話をポツリポツリとしては、また互いに黙り込んでいた。

「じゃあ、寝るか。」

 勤めて明るい口調になるようにそう言った。緋之美は訝しげにこちらに顔を向けている。

「もう寝るの?」

「やることないだろ?」

「まぁ、そうね・・・。」

 緋之美はそれ以上何を言うでも無く、俺に背を向けて蹲った。もう寝たか?と思って身を乗り出してみると、

「いつも言ってるけど、ヘンなコトしたら燃やすから。」

 怖っ!殴るとかぶちのめすのでも無く燃やすのかよ!まぁ、この身を焼かれてまで緋之美に劣情を打つけたく無いので、手なんか出すわけない。

「しねーよ。」

「・・・。」

 反応が無いな・・・もう寝たのか?

「緋之美?」

「―――。」

 一応、声をかけてみたがやはり反応はない。もう寝てしまったらしい。早いなぁ、いつにも増して。

「・・・おやすみ。」

「・・・。」


 ▼


 翌日


 ふと、目が覚めた。洞窟の外に目をやると、空はオレンジ色に染まっていた。まだ日が昇ってから間もないらしい。

 緋之美に目をやるが、彼女はこちらに背を向けてまだすうすうと寝息を立てている。不意にその頭を撫でてみたくなるが、前回同様何をされるか分からないので我慢だ我慢。


「・・・そうだ。」

 日の登りきらないうちに、食料を調達してくるか。昼行性の動物ならまだ寝起きの奴もいるかも知れない。夜行性の動物なら今まさに寝ようとしているかも。

 そう思い立った俺は、即席の槍(笑)を手に取って一人、洞窟を後にした。さしあたって、先ずはこの洞窟の周りの岩を探してみよう。蛇とかトカゲとかカエルとかいるかも。まぁ捕まえたとして、緋之美にはキモがられるだろうが・・・。

 だがそんな事はどうでもよろしい。嫌がろうが何だろうが喰わなきゃ死ぬんだから。

 と言うわけで、岩場を登ったり降りたり、岩場の影を覗いたり覗かなかったり。

 そうこうしているうちに・・・

「おっ。」

 みっけた。

 数メートル先、岩場の陰に身を入れようとしている蛇。夜行性なのか、すでに動きが鈍いように見えた。

 俺の槍(笑)の長さは大体1.5メートルほど。腕をいっぱいに伸ばせば、大体2メートル先くらいには届く。

 毒を持っているかもしれないので、なるべく遠くから仕留めたい。

 そんな訳で、俺の姿勢は必然的に(恐らく)めっちゃダサいと言うかカッコ悪い姿勢になる。へっぴり腰で腕をいつでも突き出せる状態にする。

「・・・ふーーっ。」

 深呼吸し一旦心身を整える。落ち着いて目標に近づくことが重要だ。

 ゆっくり、ゆっくりと近付いていく。しかしあんまり遅すぎると蛇が岩陰に完全に行ってしまう。その辺りのスピードの調整が難しい。

 手に汗が滲んでくる・・・やはり、この瞬間は慣れないなぁ。

 やがて、俺と蛇の距離は1.5メートル程になる・・・この距離なら!

「・・・でりゃ!」


「・・・!」


 弾き飛ばした様に突き出した槍(笑)は、確かに蛇の腹を捉えた。蛇は何が起こったか分からず、激痛にのたうち回っている。

 ・・・正直、この時が一番、自分の行動がやるせない。そうしなきゃ自分が、自分達が飢え死ぬことは分かってるんだが、自分で他の生き物の命を刈り取るってのは・・・。


「ーーっ‼︎」

 これ以上見てられないし、もし噛まれて毒があったらたまったものじゃない。俺は持ってきておいたハサミで蛇の頭を切り落とす。

 ブツッ、バチン!

 ビクンビクン、と痙攣した蛇の体は二度と動かない様になった。頭は、食べ終わってから一緒に埋める。これは、始めてこの狩り紛いの事をしてから必ずやっている。緋之美にバレると100パーキモがられるので彼女には話してないけどな。

「・・・あ、そうだ。」

 実は昨日、果物っぽい何らかのなっている木を見つけた。それももし食えたら持って帰ろう。


 場所は近い。洞窟から、直線距離で2、300メートル程の所だ。毒蛇踏んで噛まれて死んでは余りに様はないので気をつけて行動する。

 しばらく歩くと、その果物っぽいものがなっている木に辿り着いた。神経使って歩いて来たのでかなり歩いた気がするけど・・・。

「これ食えるのかねぇ・・・。」

 パッと見はトゲトゲした外見の赤い実・・・何だっけ・・・そう、ドラゴンフルーツみたいな。

 もしもドラゴンフルーツと同じ様な果物なら、食える筈だ。擬態した超毒持ちの果物って可能性も無くはないが・・・。正直、ここに来てからずっと蛇とかトカゲとか虫くらいしか食っていない。そろそろ草・・・って言うかビタミンの一つや二つ食わないとヤバい気がする。

「いただきます。」

 プツンと、4つほど千切った。


 ▼


 洞窟に戻ってみると、緋之美は、焚き火の跡の前で蹲るように座っていた。彼女は戻ってきた俺を一瞥するも、一言も声をかける事なく視線を逸らした(俺も「ただいま」とかは言ってないけど)。

「どうした?腹でも痛いのか?」

「んーん、別に・・・。」

「?」

 なんか、いつになく元気が無い。

 アレかな。これが伝説に聞く“女のコの日”とか言う奴なのか?でもそう言う事を聞くのは非常にマナー違反なのだろうから、聞く事はしない。

 緋之美の隣に座り込んで、ドラゴンフルーツ的何らかと仕留めた蛇をみせる。

「朝ごはん。それと、果物っぽいの見つけたんだ。あとで食おう。」

「・・・ん。ありがと・・・。」

 話が続かん・・・。て言うか近くで見て分かったが、どうも目元が赤い。

「緋之美、泣いてた?」

「はぁっ⁉︎泣いてないし!涼介じゃあるまいし、そんなのするわけないじゃん!」

「お、おぉうそうか・・・悪い。」

 あまりに激しい剣幕で否定するものだから、ついそう言ってしまったが、間違い無く緋之美は俺の居ないところで泣いていた筈だ。目元が赤いだけで無く、水分を吸って少し腫れているのがその証拠だ。

 まぁ確かに、他の人に自分が泣いてるところを見られたり指摘されるのは気分が良いものじゃない。俺だってそうだ・・・にしてもそんな全力否定しなくても良くない?と、俺は思うのだが・・・。

 これに関しても、深く踏み込まない方が良さそうだ。こういう時、緋之美は何を言っても怒る。

「・・・火作るから、ちょっと離れてろよ。」

「・・・大丈夫。」

 力無く・・・本当に掠れたような小さな声でそう言った。本当に大丈夫か?体調的にも。

「いや大丈夫って、危ないだろ。火の粉とか・・・臭いし。」

「いいから、これ見て。」


 そう言って、おもむろに彼女は手元にあった長い木の棒を握り、目を瞑る。先端が焦げた様に真っ黒だ。やることが無さ過ぎて油性ペンでラクガキしたのだろうか。

「いいからって、お前・・・。」

 だが言い終わる前に、俺は凄まじい光景を目にする。

「―――フッ!」

 腹から思い切り絞った様な声を出して、緋之美が枝を前方に突き出し―――その直後。

 ボン!

 とガスコンロに火をつけた時みたいな音がした。緋之美の持つ枝の先っちょは、青白い炎に包まれている。

「?」

 一瞬、何をしたのか分からなかった俺は、マジマジと緋之美と枝の先端の青白い炎を交互に見る。


「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


「―――でしょう?大丈夫って・・・。」

 枝を放り、再び蹲る様に座る緋之美。気付かなかったが、彼女は頰を僅かに湿らせていた。

「はは・・・なんか―――アレでしょ。魔法使いみたいでしょ?」

 自虐的にそう言うと、彼女はこの“火が出せる”様になった経緯を話し始める。


 火が付いたのは、ほんの十数分前らしい。

 朝目が覚めて、俺がいなかったので暇だったらしく、太陽光発電式の充電器の充電の様子を見たり、スマホを弄ったりしていたらしい。だが遂に暇を極めた彼女はそこらにあった手頃な枝で「ちちんぷいぷい〜(意訳)」的な事をし始めた。自分でも何でそんなアホな事を始めたのか全然分からない様だが、そうしているうちに、「本当に火が出たら、毎度毎度火を作るのもラクだろうな」という考えに至った様だ。

 で、実際に、何の気なしにやってみたらこの有様だ、と。


「気持ち悪いよねこんなの・・・。考えてるうちにさぁ・・・ホントに戻れんのかなって―――もしかしたら、もう、人ですら無いかも、何て・・・考えちゃって、さ・・・っ。」


 ポロポロと彼女の目から涙が溢れる。

 そりゃ、親も友人も知人もいない、全く見ず知らずのジャングルでたった二人で放り出されては、心細くもなる。一人だけだっら尚更だ。

「ま、まぁ・・・火を付ける手間が省けただけ良いって考えようぜ?」

「そんな風に考えれれば、どんだけラクでしょうね。」

「・・・さっき緋之美、“人じゃ無いかも”なんて言ってたよな?」

「だってこんなの、人間じゃ無いわよ・・・火出せる人間なんて居ないでしょ・・・。」

 ずび、と鼻水を啜りながら緋之美は目も合わせずに、ボソボソと言う。よっぽどショックだったんだろうか。

「お前は人間だよ。」

 ほら、と手を取った。

「この手が握ってた枝から火が出たのに、緋之美の手は変なところなんて一つも無いじゃないか。一番ヤバそうな手が大丈夫なんだから、お前も大丈夫だ・・・ほら、身体も何ともない。」

 ぺたぺたと緋之美の身体を触ってみる―――実際、変なところは無いように思えた。いつも通り、ふにふにの柔こい身体でございまする。

「能天気に思うだろうけどな・・・はは。」

「・・・そうね・・・そう考えるようにしておくわ。―――なんかありがとね・・・そうよね。火が出せるんだから、もしヤバそうなのが来ても私が追い払ってあんたに恩を着せれるもんね。」

「うん・・・うん?」

 なんか最後の方おかしな部分があったが、まぁそう言う事だ。緋之美の調子も元に戻ったようだし、一件落着と。


「―――ああそれとね、涼介。」

「何・・・?」

 なんとかなく、背中に氷点下レーザーを浴びた気がした。恐る恐る振り向くと、顔を真っ赤にして最高にヤベー笑顔をした緋之美が、俺に木の枝を向けて―――


「アンタ胸揉んだでしょ!子女の胸、触るとか許さないんだから‼︎」

「ひぃぃいいぃぃぃいぃい!危ない危ない危ない‼︎」

 ズバッ!と炎の玉がぶっ飛んで来る。コイツ早速使い慣れてやがんな⁉︎さっきまでのしおらしさどうしたよ‼︎

 咄嗟に岩陰に隠れるが、やはりバシン、バシンと炎の玉が飛んで来ては岩や岩壁に当たり爆ぜる。火の粉が絶妙に熱い。

「何だよいきなり!」

「黙らっしゃい!アンタみたいに女の子の胸揉む奴は二、三回くらい上手に焼かれればいいのよ!」

「死ぬわ!普通に!て言うかお前さっきまでトラウマ抱えたみたいになってた癖に!」

「わははははははアンタがトラウマ解消してくれただけよ〜おほほほ!」

 くっそうあいつ調子のりやがって!


 しかしまぁその件は何とかなり、俺たちは素手とカッターナイフとハサミと槍(笑)の他に、緋之美の“ナゾの炎”というサバイバルに大変役立つ力を手に入れましたとさ。


 ▼


「ん?」

 ザク、と草叢に踏み込んだ足を止め、彼は振り向いた。頭に深く被った帽子の隙間から見える耳は、人間のそー れと比べるの二回りほど長く、そして刃物の様に鋭かった。

「どうした?早く行くぞ。」

 傍の男が彼に問いかける。ジャングルに長く留まるのは危険だ。足を止めている暇などないはずだが・・・それでも彼は、何か凄いものでも見つけた様に、背後の岩山を気にしている。

「 今・・・“マナ”が使われた気がした。」

「何?そんな訳ないだろう。この辺は“魔獣”なんてでねぇし、こんな山奥まで来る人間の“魔術師”もいないだろうよ。自然現象じゃ無ぇのか?」

「・・・いや、そうかも知れんな。よし急ごう。」

 ザッザッザッ、と男たちはジャングルの草木の中に消えていった。

今後、止めるつもりはありませんが、仕事とかで間違いなく投稿が遅くなると思います。申し訳ないです。




まぁこのシリーズ観てる方がいれば、の話なんだけど……

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