第5話 水ないと人ってヤバいよ。
ちゃんと一月中に投稿したズェエェェェェエええ‼︎
第5話 水ないと人ってヤバいよ。
謎のジャングルに迷い込んでもう丸一日以上経った。
緋之美も何やかんや言ってたけど結局ツチノコ(?)の丸焼き食ったし、お腹は暫く大丈夫だ。
しかし俺たちはここにきて、決定的かつ致命的な課題にぶち当たった。
「喉乾いた。」
「私も・・・。」
まさかの水分なし。飯食った後なので余計に喉が渇いた気がする。
「あ、あれは?お茶買ってたわよね。」
俺は学校でお昼ご飯を食べる際、購買でペットポトルのお茶(600ml)を買っていた。たしかにそれの中身は残っているはずだ。
「ああ、ちょっと待っててくれ・・・。」
そう言って俺はカバンを弄った。確かこの辺りに入れたはずだったが・・・あった!いや、でもコレ―――
「結構少ないな・・・。」
お互い一口ずつ飲んだら多分“完”だ。
「どうする?」
「どうするって・・・飲むしか無いだろ。」
「いやそりゃそうだけど、私が言ってるのは―――」
「や!待て、みなまで言うな。分かってるって・・・。」
“コレ飲み干したらどうするか”なんてさ。
ぶっちゃけ考えたくねー・・・。だってワンチャン死ぬよ?この問題。
「まぁ取り敢えず飲めよ・・・一口な。ガバッといくなよ⁈」
「わあってるわよ・・・ほら、早く頂戴。」
そうれ、と軽く投げて渡す。すーっと飛んで行ったお茶入りペットポトルは緋之美によってナイスキャッチされた。彼女にはムッと眉を吊って、投げるな!とお叱りを受けたが。
そしてキャップを開けていざ飲もうという時、緋之美の手はは「あっ」と言って止まった。
「どうした?」
「・・・。」
まじまじとボトルの飲み口を見つめながら、緋之美はちらちらと俺と飲み口を見やっている。何やってんの?
「どうした?」
土でも付いてたか?
そう思って緋之美に近づくと、ゴキブリもかくやというスピードでババッ!と後ずさりした。
あれ?避けられてる?
「わ、悪い、なんかしたか?何かやっちまってたら謝るけど・・・。」
状況が飲み込めない故に、ややしどろもどろな口調になってしまったが、まぁこの際仕方ない。
「いやー、アンタがやったって訳じゃなくて、 や、一応アンタか・・・あれ?あのーほら、まぁ・・・ね?」
「いや“ね?”って。」
何かも分からんのに同意を向けられても困るんだが・・・。
「・・・。」「・・・。」
暫し微妙な空気の中沈黙。
「あァっもぅいい!」
「はっ⁉︎」
突然何かにキレ始めた緋之美はグイーーッとお茶を喉に流し込m・・・いやいやいやちょっと待て!
「おいっ一口分俺の!全部飲むな‼︎」
「・・・あっ、ゴメンゴメン。」
危ない危ない。ほ俺の水分摂取量が0になるところだったぜ・・・。
「・・・う〜ん・・・。」
ペットボトルを渡さず、何処か嫌そう(名残惜しそう?)な振る舞いを見せる緋之美に、流石にもう我慢の限界だったので、
「はーやーく寄越せー!」
俺はわっしとボトルを掴み、やや強引に引き寄せる。
「あっちょっとまって・・・!」
果してどういうわけが緋之美もセットで付いてくる。
「ええい離せぃ。俺にも飲ませろよ!」
「ほ、ほら飲み口とか拭いた方がいいんじゃ無い⁉︎」
黙らっしゃいそんなもん暴論だわ。
そんな言葉は気にせず俺は残ったお茶を喉に流し込んだ。うまい。
▼
「さて本題だが。」
「しかも割と切実なね。」
お茶を飲みきってしまった今。どう水分を調達するか、だ。
「血でも飲む?」
「バッカじゃ無いの⁉︎そんなこと出来るわけないでしょ!痛いし!」
じょ、冗談だって・・・そんなに強く言わなくても良いじゃのいこ。
「近くに川でも湖でも在りゃ良いんだがね。」
「・・・中は?」
「なか?」
「洞窟の中よ・・・奥の方。こう言うところって地下水なり雨水が溜まってたりしないかしら?」
「あぁ・・・。」
洞窟の奥を見る。俺たちの居る所から10メートルも進めば、そこにはもう影が落ちている。
「でもライトとか無いと危なくないか?」
「スマホのライト使えば良いのよ。充電器だってあるし。」
「そうか―――」
一瞥した後、俺は緋之美に視線を戻した。
「―――行ってら☆」
「は?」
一瞬「此奴は何を言っているのか」みたいな顔になった彼女だが、直ぐに眉を釣り上げて物申して来た。
「いやいや、こう言うのって男の仕事でしょ?あんたが行きなさいよ。」
「いやでもホラ、レディファーストって言うし。」
「アレって言っとくけど本当は“女性のマナー”みたいな物だからね⁉︎って言うか、か弱い女性に一人であんなとこ行けっての⁉︎」
「言い出しっぺが行くべきかなーって。」
「それだったら一緒に来れば良いじゃ無いの、一人じゃなくて。」
「怖いの?」
「違うわよ!」
てんやわんや、やいのやいの。
お互いしょーもない論戦を繰り広げた挙句、決まったのは・・・
「「洞窟の外をまず探してみよう。」」
と言うことだった。
もちろん、ちゃんと理由がある。洞窟が怖いとかそう言うのも・・・まぁ込みで。
まず、洞窟の中は入り組んでいる可能性があり、迷子になったらそれでチーン、という身の毛もよだつ恐ろしい事態になりかねない事。そして、外だったらこの洞窟がある小山が目印になって迷子にならない事。もう一つ、2人で行けばもし水源を見つけられた時一々往復する手間が省け、何かあっても一緒に対処できるからだ。
「じゃ、行くわよ。」
「乗り気だなぁ。」
というより、ちょっと急いてるように見える。
「そ、そう?」
肩まで伸びた綺麗な髪を弄りながら、緋之美は呟いた。
「ニオイとか、気になるし・・・。」
「なんか言った?」
「えっ、⁉︎な、何も言ってないわよ⁉︎」
「そうか?」
なんかボソッと言った気がするんだけど・・・まあ深く詮索しない方がいいだろう。
幾つか言葉を交わせながら、俺たちは洞窟を後にした。
▼
「それにしたって、見慣れない植生ね・・・熱帯雨林のそれには似てるけど。」
「植生ってなんだっけ。」
緋之美が歩きながらぼやいた言葉は、俺が緋之美よりはるかに馬鹿であることを証明した。
「あんたバカ⁉︎前に授業でやったじゃない・・・。」
あぁそう言われればやった様なやってない様な。なんだっけ・・・ツンデレだっけ。いやツンドラか。
「ていうか緋之美は凄えな。植物とか分かるんだ。」
素直な感慨を口にしただけだったが、緋之美にはそう聞こえなかったらしい。プイとソッポを向いてしまった。
「・・・。」
「え、何々・・・なんかした?俺?」
首を傾げていると、
「・・・だけ。」
「え?」
「言っただけ・・・授業で習ったやつをちょっと言ってみたくなっただけよ。」
「・・・。」
反応に困る理由である。だが、ムスッとしたまま言ったあたり、俺の言ったのが嫌味みたいに聞こえてしまったのだろうか。
「いや、嫌味で言ったわけじゃなくてだな・・・」
「分かってる。・・・分かってるわよ、それくらい。」
緋之美は頸を触りながら、バツの悪そうに言う。
「そうか。・・・ってそれより、スマホ置いてきてよかったのか?」
ちょっと微妙な空気になったような気がしたので、俺は話題を振った。
「まぁ有っても無くても同じだし、少しでも軽いといいかなって思ったんだけど。」
「なる。」
まぁ確かに、地図が使えるわけじゃ無いしな。
そうしてまた話ながらしばらく歩いていると・・・
「ん・・・。」
「どうした?」
「し!静かに・・・。」
「・・・。」
言われた通り口を紡ぐ。
―――、―――
「聞こえた?」
ちょっと嬉しそうに言いながら振り向いた緋之美に、俺は首をかしげる。
「何も聞こえんかった。」
「は⁉︎えぇいこの難聴!もっと静かにして聞き耳立てて!」
難聴⁉︎酷くね⁉︎
まぁ言われた通りにやるけど・・・。
頑張って耳に全神経を集中させ、聞き耳を立てる。
サァァ・・・
「!」
微かにだが、水の音が聞こえた。
緋之美の耳が良い事はそれこそ幼稚園児くらいの頃から分かってはいたが、まさかここまでとは。アレじゃね?絶対音感持ちなんじゃね?
「ほら、あっち!」
彼女はグイ、と俺の手首を掴んで駆け出した。
「お、おい!」
突然走り始めるので、最初の数歩を躓いてしまう。
「ちゃんとしなさいよ、もう少しなんだから!」
「わあってるって。」
手を解き、俺も走る。
「ぁっ、」
草枝を掻き分けて、進む。こんな時ばかりは、長袖で良かったと思う。薄手か半袖だったら、枝とかで結構傷付いたかも知れないからな。
ザッ、ザッと進むうちに、草木を掻き分ける音に混じって、ザァァーーッ、と水流の音が聞こえる様になった。
「もう直ぐだな!」
「う、うん。」
ざっくざっくと落ち枝を踏み潰し、草木を分けて進む俺の後を、緋之美は付いてくる。
「あ、前見て前!もうすぐ!」
振り向いていた俺に指をさして、言う。前を見返すと、もうすぐ森を抜けそうだ。陽光が眩しくて、その景色は望めないけど。
「よし、行くぞー!」
森の終わりを目指し、走り抜ける。その先には―――
まっ茶ッ茶色の川がまぁ憎らしいまでに滔々と流れていた。
「「マジかよ。」」
これじゃあ飲めねーじゃん・・・・・・。
あと2、3話で本格的にストーリーに入ります。
……いか旗みたいに騙してるわけじゃないぞ!