第3話 今晩はよく寝れそう
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第3話 今晩はよく寝れそう
陽はもう傾いて、この洞窟の中にもオレンジ色の陽光が差し込んでくる。ちょっと眩しい。空気中の屈折率の関係で確かオレンジ色に見えるんだっけか。太陽光がスーッと網膜に染み込んで、これは・・・あっ待って目が痛え。
うううう・・・と目を抑えて悶えていると、丁度いい感じの大きさの岩に座っていた緋之美がため息混じりに、
「バカねぇ・・・太陽光直視なんて子供でもダメだって分かるのに・・・。いや――アンタは子供未満だったわね。」
おーおーこのやろう、バカにしてるだろ。
「やることがなさすぎるのが悪いんですー。」
「やる事ならあるでしょ!ほらアンタもやる!」
言って、緋之美はゴチ、と俺の頭を打った。
「えー・・・めんどい。」
「アンタがやろうっつったんでしょうが!」
ムキーッと叱りつけるように怒る緋之美は、まるで何処ぞの母親の様だ。
「分かった分かった・・・そう怒んなって。」
そう言って立ち上がり、緋之美の手伝いをする。
ちなみに今俺らが何をやっているかと言えば、ズバリ・・・バリケード造りだ。
先程(っても、もうかなり時間過ぎてるけど)、森の中で追いかけられたナゾの生き物を始め、特に夜の森では何が起こって、何が出て来るか分かったものではない。俺たちは特殊部隊よろしくそのテの訓練を受けた人間でもなければ、ジャングルに挑むテレビのスタッフでも無いワケで。
そんな訳で、ごくごくフツーの日本人高校生男女でしかない俺たちがどう考えても野生的獰猛的危険的生物サン達に敵うわけがない・・・じゃあせめて、奴さん達が入って来ない様にするしかないよね?って事で、俺が「日が暮れる前にバリケードつくろうぜ。」と発案したのだ。
っつー事で、バリケードを作り始めたはいいものの、どう考えてもバリケードに使えそうなものがそこら辺に落ちている石ころか、木の枝ぐらいなもので、一瞬でやる気を損失してしまったわけだ。
「ほら!やったやった!」
「ういーす・・・。」
急かされるがままに、適当なサイズの石や枝を運んでは積み木よろしく積み上げる。いやー又これが退屈って言うか暇ではないんだが、やってて億劫というか・・・やる気なくすんだよね、言った本人が何だけど。
「もうっ!ボサッとするな、このバカ!」
緋之美がブラック企業のお偉いさんに見えてきた・・・・。
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「できたー・・・。」
褒めて褒めてー・・・とでも言うような目線を緋之美に向けるも、
「遅い!」
と辛辣な御言葉を承った(泣)。
実際、辺りはもう暗かった。これでは「日が暮れる前にバリケードつくろうぜ。」など自分からとほざいていたのにすっかり暗くなっているのでは、確かに遅いなぁ・・・・。
「いやぁ申し訳ない・・・。」
「はぁ、まぁ良いわ・・・・一応出来たんだしね。」
何だかんだ言っても最終的にはちゃんと認めてくれる緋之美ちゃんほんとすこ。
それはさておき、と緋之美は一息つき、
「それで、どうする?」
と言った。当然、何の事かわかりゃしないので
「何が?」
と返す。
「ご飯よ。」
「え?」
「だから、ごーはーん!何も食べてないでしょう私達!」
「あぁ・・・。」
バリケード(笑)を作った達成感ですっかり忘れていたが、俺たちは着の身着のまま。弁当や購買で買ったものは既に学校で食い尽くし、この時間帯は完璧に家にいる予定だったので夕飯など持ち合わせていなかった。
いや・・・?
「そうだ緋之美、お前お菓子持ってるって言ってなかったか?」
「え?・・・まぁ一応・・・。」
「それ食べよう。」
「・・・。」
何という事だろうかと思う。なんと緋之美は、お菓子を持っているのにもかかわらず、俺にそれを寄越したく無いようなのだ!
いや、実際に行ってる訳じゃ無いけど、分かるもん。その目見れば分かるもん。如何にも「お前なんかにやる分はないわゲスめ。」みたいな顔してるもん。
「ちょうだいよぇ〜〜。」
「ダぁメ。私の。」
「いいじゃん、くれよー。」
やいのやいの。
まぁなんだかんだ言って緋之美ちゃんは優しいので、ちゃんと分けてくれました。
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「眠い。」
ふわぁ、と大きく欠伸をして、そう呟いた。
「じゃあ寝ればいいじゃない。」
緋之美は興味なさそうに、岩壁に背を預けてそう言う。
「じゃあ寝るか?一緒に。」
おどける様にそう言うと、「は、はぁ⁉︎バッカじゃ無いの、そんなことするわけないでしょ!」とめっちゃめっちゃ拒否られた。
普通にショックだった。
だが、一睡もしないわけにもいかない。とうの昔に陽は沈んでいて、体感時間は凡そ20時から22時くらいか?睡眠しないと身体にも障るし、結構動いた後だ、身体も休みたがっている筈だ。
「・・・じゃあお先に寝るわ。緋之美も、寝ておくんだぞ。」
「・・・考えとく。」
いや、ちゃんと眠れよ。
「ふぁーーあ・・・。」
また欠伸。
横になったら、すぐに睡魔が襲ってくる・・・今夜は、良く、眠れそうだ・・・。
ごめんなたい