プロローグ:幼き若者に旅立ちを
プロローグ
ああ、熱い。夏だから、ていう簡単な意味じゃない。熱いのは俺の無二の親友、大阪祐樹の影響だ。今日はこの夏一番の猛暑だっていうのに俺を家から引っ張り出した挙句バスケをしよう、などという提案を出した。ああ、めんどくさい。
「いいじゃんか、ダチ呼んだし3対3で軽くゲームしようぜ。」
「こんな熱い日に汗がぼうぼう出るバスケなんかやってられるか。人迷惑極まりない。」
「ええーー。」
こいつ、祐樹は無鉄砲でスポーツ万能でバカな奴だ、うん。成績はいいくせして思考がとにかくバカだ。ああ、バスケしたくねえ。
「いいじゃん、渚。お前、俺よりスポーツ万能なくせに。」
「関係なくね、それ。」
俺は佐倉渚。苗字はサクラって読むんだけど、花の名前みたいでしかも名前は女子のもんだしよく名前で勘違いされる。本当、俺の親なんでこんな名前つけたんだろ。今となっちゃ聞けないけど。なにせ6年前に死んだし。
「じゃあ、バスケする前に涼めてやるよ。」
「どーやって?」
「ふふーん。」
嫌な予感しかしない……。
祐樹は渚をバスケ場の奥にある売店まで連れて来させた。飲み物買ってくれるのか、などと甘く見ていたがそうでもなかった。
「この売店の裏に小さな路地があってな。出るんだって…。」
「なにが?」
「…幽霊…。」
信じるか、俺を何歳だと思ってるんだ。祐樹、お前と同い年で来月にはお前より早く成人式を迎えて二十歳になるんだぞ。
「……。」
無言で返してやると祐樹はちょっと物足りそうに言った。
「絶対、信じてないな。ちょっと見せてやるから来い。心の芯まで涼ませてやる。」
「ゆう、お前俺より幽霊とか駄目じゃなかったっけ?」
ギクリッと祐樹の体は大きく震えた。
「…そう、言えば…。」
時、すでに遅し。誰も通りそうにないその路地はなぜか昼間なのに薄暗かった。
信じられない。路地は30メートルそこらだというのに端が見えなく、遠ざかっていく。
「ど、どういうことだ、ゆう?」
「俺に聞くな…。」
親友の足はガクガク震えてる。そこについには恐ろしく真っ白な皮膚と漆黒の瞳と髪をした美しい少女が天から舞い降りた。
「キャ、キャ、キャー!」
祐樹と俺でできる限り叫んだ。こ、怖い。怖い!!熱かったはずの体はというとみるみる冷たくなっていった。気づくとそこは真っ暗な空間になっていた。
—―怖がるでない。童はソナタらに願いがあるのじゃ。
美しい声と美貌だった。
「は、はあ?」
祐樹はしゃべれそうになかったので俺が代わりに話す。
—―童の父上が造った大きな別世界があるのじゃ。だが、そこに悪魔のごとし邪気を放つものが現れのじゃ。おかげで世界に混乱と暴動が起き、邪心の卵が世界中に現れたのじゃ。このまま孵化すると卵の宿った生物は第二世代へ変貌を遂げる。
意味は理解できなかったが大変そうな印象を受けた。
「で、俺らに一体何を求める?」
—―ソナタらには邪心の卵の回収およびせん滅を頼みたい。
「俺らにそこへ行けってことか?」
—―ソナタらには必要最低限の荷物、着替え、金などをもってゆかせる。そのリュックは入れたものを縮める魔法がかかってるのでたくさんのものが入る。取り出した時には元の大きさに戻せる。
そういうと普通に売ってるような黒と青色のリュックを2つ渡した。中にはいろいろ入っているようだ。
「待てよ…俺らは…」
渚を無視し話を続ける謎の幽霊、いや亡霊?
――言語が通じるようにもした。向こうの世界のどんな言語もソナタらの脳にはインプットされているぞ。
話聞けよ。
「だから、俺らそこ行ってどーするの?」
—―心配はいらぬ。すでにお前らの入り口には童の使いを待機させておるわ。ソヤツから聞くのじゃな。
イラついて来た。
「幽霊の嬢ちゃん。俺らはなんで巻き込まれる必要がある?帰れるんだろうな?!」
――もちろんだとも。ソナタらが卵の回収して終われば童の父はソナタらをこの異界に返してくれる。
返してくれるのはいいが、こんなめんどくさいことに巻き込まれるとは。この祐樹のせいだ。
――むこうでソナタらにその場所に適応していれば魔力の高い種族として、しなければ魔力適正値が無い人の子として転生されるじゃろう。
「はあ?」
意味が分からない。人以外に生まれる可能性があるのか?魔力?
――童はソナタらを信じておるぞ。ではまたな、童の希望よ。
そういって別れを告ぐと地面に黒い穴が現れた。お、落ちる!!すでに気絶していた祐樹は虚ろな目で呆然とし一方俺は…
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ただただ、叫ぶだけだ。先の長い穴の恐怖に意識が遠のく。
いつの間にか眠っていたらしい。起きるとそこは深い森で木々が揺れている。
隣には…祐樹がいる。まだ目を回しているが。祐樹は剣士のような服を着ていた。鎧は付けていないが胸当てを付けている。あの幽霊が渡したのか…
すると自分の姿が気になり、自分の体を見る。膝下まである黒いローブに茶色いブーツを履いている。
――あれ?俺の手小さくね?
自分の腕や足、体が縮んでる。顔も…?頭を触っていると妙なものがついている。
――耳だ…
そう気づくと自分の尻にも違和感がある。ローブの上から触ってみる。
――しっぼだ…。
しばらく考えているとあの幽霊が種族とか何とか…。事の重大さを渚は悟る。
「俺、人間じゃねええええええええええええ!!!!!」
作者のきまぐれ作品です。ただの自己満足作品です。多めに見てください。駄文なので。