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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

せめて結ばれるまでは

作者: 片結 あるふ

 彼と僕の違いがわからなかった。

 子供頃から家族同然に過ごしてきた彼が、どうして今はここまで遠いのかと不思議に思う。

 幼稚園時代から変わらずに、だいたい同じ時間に家を出て、お互い一言で挨拶を交わし、同じ道を行く。

 僕より背の高い彼だから、同じ道でも見え方が違うのかもしれない。でも見え方の違い程度で僕らはここまで遠くなってしまうのだろうか。

 僕がいないときでも誰かと居れる彼だから、僕のことだって他の誰か程度になってしまって。彼がいないと何もできない僕だけが、彼への依存を強めてしまう一方だ。

 もう僕は十七歳で、少し早く生まれた彼は十八歳で。その小さな差は僕が追いかけようにも追いつけない絶対的な壁で。きっと、僕と彼が違う決定打でもあり。そんな身勝手な劣等感が余計に僕と彼を突き放す。

 今日もすぐそばに彼がいて、僕は他愛ないことを言う。子供の頃どうでもいいことに言い合った彼はもう居なく、大人びて僕の話に笑う彼は遠い。

 そうしてるうちに僕の大嫌いな交差点が近づく。

 車通りの少ない道で健気に赤信号に止まっていた反対側の少女がいつも通りの笑顔で僕たち、彼に手を振っているのが見えた。

 僕の話を聞く彼の表情が一層明るい笑顔になるのを僕は今日も見上げるように見るだけだった。

 信号が青になると同時、彼が僕と目を合わせる。その行為に僕が期待する意味なんてあるわけもなく、それは彼なりの礼儀に過ぎなくて。

 少女は儀式のように可愛らしい素振りで彼に駆け寄り、手を取り合う。

 僕よりも背の小さな少女が彼と並んで、より小さく見える。

 その高さでは彼の見ているものなんて何も見えないはずなのに。僕の方が少しだけ、彼に近いものを見ているはずなのに。

 どう足掻いたって、僕はそこに立てなくて。

 それが当然なことが寂しくて、悲しくて。それでも、今の彼に僕が邪魔なことは十分に解ってしまって。何より、青信号に覗いた彼の眼がそう語っていた。

 彼は僕なんかと違って、一人でも進んで行ってしまう。幼い日いつも並んで歩いていたけれど、本当はいつだって、すこし歩幅の大きい彼が僕に合わせてくれていた。

 家族同然に同じ時間を過ごした僕らなのに、僕と彼はこんなにも違っていて。

 彼に依存する僕は、その違いに苦しんで。

 彼に届かない僕は、その距離に苦しんで。

 彼を求める僕は、この想いにうなされる。

 けれど、この想いは解っているから明かさない。そうしておけば、せめてもう少しは自然と彼のそばに居られるはずだから。

 せめて彼が、僕じゃない誰かと結ばれてしまうまでは。

 

BLもの……だと(驚愕


……自分で書いたけど。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物事の裏側(?)をすべて語っているわけではないけど、それでも読み手の想像で内容がイメージできる構成が素敵だと思いました。 [一言] ご自身で書かれた作品に驚愕しておられるのに失礼ながらくす…
2016/02/17 13:25 退会済み
管理
[一言] 切なくて良かったです。
2015/10/03 10:49 退会済み
管理
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