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変態オオカミと忘れた君 ラストワンダーランド  作者: 新藤 愛巳
第四章 空美と赤雪姫
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神の供物

「お姉ちゃん」


 家に帰るとクールで可愛い海美が待ってくれていたっス。


「どうしたの? 海美」


「お姉ちゃん。その……今回の捜査はうまくいっているのか? 人柱の事件」


「いつも通りっスよ。違うことと言えば今回は少しターゲットと仲良くしているっス」


 フレンドリーな感じっス。


「そっか。友達は作らないといけないな。お姉ちゃんは我慢のしすぎだよ。家長だと言っても一個人だ」


「うんうん。そうっス。友達は作るなって家訓に今まで従ってきたけど、その考えはもう古いっス。時代に沿わないっス」


「私様もそう思うよ」


「えへへ」


 私は嬉しくなった。同じ気持であることが嬉しいな。弾んだ気持ちで前を向く。


 海美は顔を少ししかめて言った。


「ところで赤雪姫は?」


「それが今回は大人しいっていうか、あまり話しかけてこないっていうか」


「それは考え物だね」


「何か企んでないといいんスけどね」


「前にもなんかあったの?」


 海美は少し青い顔でそう尋ねた。心配性だなあ。もう。そんなところがとてもかわいいっス。えっへ。


「何も。ただ、何回か引きずられそうにはなったっス」


「お姉ちゃん。お母さんは大人になってから赤雪姫を受け継いだって言っていた。まだ早かったんじゃあ。大丈夫か。私様は心配だ!!」


 あはは。そんなに心配してくれるなら、このままでもいいかなんて。


 母はまだ病院で寝ている。満月狼はそれほどまでに強かった。あの銃マスターでさえ苦戦した。


「そうっスね。でも、私は何とかやっていくつもりだから。えっへ」


「お姉ちゃん」


「海美には協力してほしいっス!!」


「もちろんだよ」


 私たちは握手した。海美と仲良く出来ることが私の幸せだから。こうしていろんなことを話せるのが私の幸せだから。


 カナデちゃんのところはどうなんだろう。妹さんの話は聞かない。仲がよさそうな口ぶりだったのに。

 どうしてカナデちゃんは妹さんの話をしないんだろう。そのことが酷く気になった。


     ☆     ☆     ☆     ☆    ☆


 皓人は私の話をうんうんと聞いた。


「そいつは嫉妬かな」


「嫉妬。なんで?」


「なんでって、妹がうらやましいんじゃないか? よくわからないけど」 


「羨ましいか……。私にはわかんない感覚だなあ」


「まあそれだけお前は恵まれているよ。良い妹じゃないか、海美は」


「いい妹過ぎてお姉ちゃんは心配になるよ。ちゃんと、思いを吐き出せているのかどうかとか。前はもっとおどおどした性格だったもん」


「そうだな。人は変わるよ。壁にぶち当たっていいように変わっていく。人生三度は大きなピンチが来るらしいじゃないか」


「そっか。海美は強くなったんだね。満月狼のおかげで。皓人も強くなったの?」


「俺はわからないな。肉体的には強くなったけど、精神的には成長できていない気もするし、これからかな」


「成長株っス」


「違いない。ところで空美、っスはやめたのか? 最近あんまり言わないな」


「友達がね、やめた方がいいって」


「お前らしさだろう。付けておけよ」


「うん。でも、なんかね。なんだか、みんな……」


「みんな?」


「何かを悲しがっているみたいなんっスよ」


「悲しがっている?」


「弔い合戦みたいな雰囲気がするんス」


「弔い合戦。誰の?」


「まだよくわからないっスけどね、何かあったんじゃないかって」


「その幼馴染仲良しグループにか?」


「う~ん。出島と関係があるんスかね」


「出島と関係あったら大事だろう。そうでなくても、御禁制の品が出回って世間は荒れているというのに。そのおじさんつかまえろ!」


「そうっスよね。平賀限界さん曲者っすね」


「曲者なのは、真里菜ちゃんと似たような力を持ったカナデちゃんじゃないか?」


「カナデちゃんは良い子っすよ」


「いい子過ぎるだろう。その年で」


「そうっすかね。海美もいい子っスよ」


「そうだよな……」


 皓人はにこにこ笑った。


「ともかくお前に友達が出来てうれしいよ。くれぐれも巻き込まれんなよ」


「うん」


「ところで、人が柱になる事件だが」


「まだ見ていないんっス」


「見ない方がいいに決まっている。人柱は古代から神の供物だ」


「神の供物……」


 なんだろう。よくない予感がする。

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