出会いと別れ
連載では初投稿です。あまり書いたことがないので拙い文章ですがよろしくお願いします。あらすじを読まないと分からない可能性があります。
「君のその足、一体何があったんだい!?」
「誰だあんたは・・・」
「そんなことはどうでもいい!すぐに処置をしないと・・・そうだ、私の家まで連れて行こう!」
「やめろ!俺はあそこに戻らないといけないんだ。」
「何を言っているんだ!君にはその、戻るための足がないだろ!」
「うるせえ、ぐっ・・・」
「お、おい!」
・・・
ここは、どこだ。なくなったはずの足に感覚がある。わけがわからない。俺はさっきまで何をしていたんだ。
「やっと目を覚ましたか。」
声のする方を向くと、白衣姿の男が立っていた。そのまま、視線を周りに移してみるとどうやらここは手術室らしい。
「なんで俺はここにいる。」
俺が白衣の男に尋ねると、奴は不思議そうな顔をした。
「なんだ、君は覚えていないのか?」
覚えているわけがない。そもそも覚えていたらこんなことは訊かないだろう。しかし何か重要なことを忘れているような気がする。
「君は新人類用オイル製造工場の近くで倒れていたんだよ。足のない状態でね。」
オイル工場。そうだ、俺たちは作戦の途中で罠に嵌って爆発に遭ったんだ。なら他の奴らは?俺以外の奴らはどこにいる。
「近くに誰か倒れていなかったか?」
「どうやら思い出したようだね。君以外は誰も倒れていなかったよ。」
「そうか、分かった。」
そう言うと俺はすぐに立ち上がろうとした。だが立てなかった。足をうまく使えていない感じがした。いや、感じではなく実際に使えていないのだ。足を見てみるとそこには信じられない姿があった。
「どういうことだ。」
俺の足が、機械になっていた。目を疑った。しかし見えているものは確かに機械の足である。まさかこの白衣の男が?だが、何のためにやる必要があった。俺のことを助けなければいけない義務などない。ましてや富裕層だと思われるこの男が、貧困層の俺を助けるなんてありえないなどと考えていると、この男の方から話してきた。
「足がないと色々不便だろうと思ってね。勝手で申し訳ないがそれを付けさせてもらった。なれるまでしばらくかかるだろうが我慢してくれ。あ、その足の代金はいらないよ。私が勝手に取り付けたものだからね。」
ますますわけがわからない。機械の足など普通に買ったら手術代込みで一億を超えるぞ。そんなものを俺の足に取り付けて、おまけに代金がいらない?この男は一体何を企んでいるんだ。だが俺も貧困層の人間だ。危険かどうかより無料かどうかに左右されてしまう。
ありがたく使わせてもらう。」
だから俺はもらうことにした。邪魔になれば売ればいいだけのことだ。
「そうか、キレられたらどうしようかと思ったよ。ところで君はこのあと、どこかに行く用事はあるかい?ないなら経過を見たいからしばらくここにいてほしいんだが。」
それはできなかった。爆発に巻き込まれた仲間のことや組織のことがある。俺には、戻らなければいけないところがある。
「すまない。俺は他の仲間を探さなくてはいけない。だからあんたの頼みを聞くことはできない。」
そう俺が言うと白衣の男は少し残念そうにしたあと、ポケットから何かを取り出し俺に渡してきた。俺が受け取ると男はそれの説明をしてきた。
「それはオイルと地図だ。オイルは、足が傷ついたらそこに垂らすんだ。勝手に修復する。で、地図なんだが。今私たちがいるのがルーツ地区のここだ。で、スラムがここ。道は自分で探してくれ。私は門以外のスラムへの出入り口は知らないからね。」
男は丁寧に教えてくれた。だが俺はスラムの意味が分からなかった。おそらく貧困層用の地区のことなんだろうが。だが間違っていたら困る。俺は質問してみた。
「なあ、スラムってのは貧困層用の地区のことか?」
「ああ。そうだよ。なんだ、そっちでは広まってないのか。」
イラっとした。スラムという言葉にイラっとしたのではない。この男にイラっとした。恐らく普通に言っているのだろうが何かイラっとくる言い方だった。まあそれくらいで怒るほど俺も小さい人間じゃない。スルーしてここを出ることにした。
「そうか。ありがとう。じゃあ俺はもう行く。」
「分かった。玄関まで送ろう。そこから先は君だけの道だ。何が起きても私に責任は取れないよ。」
「それくらい分かっている。」
そして俺は白衣の男と、玄関に向かった。