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「なるほど」
少女は僕のすることに賛成も反対もしなかった。
少女が協力してくれればかなり時間短縮になりそうだが僕からは何も言わなかった。
少女の自主性に期待はしていないし、する気もない。
「この方法で回っていきます」
申請を取り消し、おおざっぱに教室を一周してから次の教室へ。
学校全体で六人がいないので生徒の人数と机の数が違えば名簿で確認したり教師に確認したりすることになるが一つの教室にかかる時間は精々五分くらいだ。
少女と繋いだ片手がもう少し機能すれば早いかもしれないが僅かだろう。
一生懸命にするつもりはないが、手を抜くというわけではない。
「この中にはいないか。次に行こう」
隣の教室へ。
ルーチンワークのように申請を飛ばす。
わずかであっても遅延は見られない。
小さくため息一つ。あと何回すればいいのやら。
「津久野さんも学校に通っていたの?」
作業中、少女は当たり前の質問をしてきた。
「そりゃね。義務教育だよ」
「義務教育だから行くの?」
軽口で返すと哲学的に返された。
「未熟だから行くんだよ」
刹那だけ考えてから口を動かす。
「僕は未熟じゃない」
少女は強がる。だが、軽い。
「知的機能を差すのならそうかもしれないけれど、学校で一番学ぶのは集団に属するということだよ」
「……よくわからない」
「教えられるものではないからね」
学習装置や本では得られないことだ。
少女はややむっとした顔で考え始める。
僕はそれを横目に作業を終える。
二組にも使用者はいないようだ。いてくれれば早く帰れるというのに。
「そういえば……」
タスクドールを手に入れてからあまり猫を被ることをしなくなった。それが良いのか悪いのか今の僕にはわからないけれども。