13
桜は好意で来ているのでとやかく言わずに僕らは玄関口へと向かう。まあ、仮に起きていたとしてもやることにあまり変わりはないので良いとしよう。前向きな言葉を使えば戦力分散とも言える。伏兵として機能すれば儲けものである。
玄関ホールは外から見てもわかっていたがかなり広い。吹き抜けで二階まで見えるためかそれも相まってかなり広く感じる。ここだけで鬼ごっこが成り立ちそうなくらいだ(勿論人数にもよるだろうが)。
沢山の具足入れを横切り、万が一に備え靴を履き替えるなんてことはせずに僕らは土足のまま中へと踏み入った。スリッパにして走れなくなっても仕方ない。
土も付いていないし、私立なんだから掃除も頑張っているだろうと勝手に考えた結果である。
少女は僕の行為を気にしない。
単純に履きかえることを知らないのかもしれない。
聞く気はないけれど。
「さて」
まずは入口にある学校の見取り図を頭の中に入れる。
四階建てで一階は特別教室のみ。二階に職員室と三年生の教室があって三階は二年生、四階が一年生となっている。
広い学内だが、L字構造となっているため迷いはしない。
特別教室の細かなところは覚えずに、教室の位置だけ把握してまずは階段で四階へと上がる。
「ふぅー……」
一息。
少女は涼しそうな表情をしている。軽く息が上がってしまったのは年のせいにはしたくないものだ。
というか私立ならエレベーターを付けてくれなんて戯言を吐きたくなる。
「ところで津久野さん」
「なに?」
「どうやってタスクドール使用者を探すつもりですか?」
ちなみに一メートルまで近づけば僕はタスクドールの有無がわかるが方向がわからないため判別は難しい。それに隠れていた場合の対処が遅れてしまう。
ではどうするかというとだ。
僕は少女に説明せずに一緒に入るように身振りで促し、一年一組の教室に入った。
タスクドールの効果により僕らは認知されない。この効果を切ることも出来るが今回は切らずに入っていく。不思議と僕ら以外のものが一緒に動いても目立たないらしく生徒は忙しなく板書を書いている先生の方を見ているか、それを書きいれているらしい。
真面目だ。
私立なためか、いかつい先生の前だからなのかは知らないし、知りたくもない。
『申請:動作』
簡単な動作を僕はクラス全体に指示を飛ばす。
それは右手を上げ、目を閉じるといったものである。
タスクドール使用者であれば拒否できる申請のため真似をする際のロスタイムを利用してみた。
「一年一組には誰もいないようだね」