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「見てみないとなんとも言えないよ」
運転席に座り、エンジンを回してから僕は依頼書に目を通す。
調査依頼。
緩漸私立中学校にて六名が屋上にて集団落下した。
各学年より二名ずつ落下しており、クラス、部活、性別、生まれによる共通点は希薄である。
屋上にはフェンスがありよじ登らなければ落下は困難。普段閉鎖しており、鍵は職員室にて保管されていた。
鍵は吹奏楽部が放課後の練習で時折使う程度であり、通常は貸出は許可されておらず当日は何者かが持ち出したものかと思われる。
現在六名は近くの病院にて治療中であり、命に別条はない。
現在の緩漸中学校におけるタスクドール使用者の有無についての調査を依頼する。
タスクドールの使用が考えられるため複数名での調査が好ましいが、緩漸中学校の中にタスクドール使用者が残存する可能性については情報操作の杜撰性から低いと思われる。
なお、落下した六名については恋木紅が調査結果ではタスクドール使用者はいないとのこと。
「ふむ」
大城蜜柑辺りがまとめたのだろうか。
粗野な振るまいや、外見からは想像がつかない程いつも丁寧にまとめられている。
少女に依頼書を手渡してから僕はサイドブレーキを外し、アクセルを軽く踏む。
「目的地は?」
「緩漸中学校」
僕のさらりとした返しに、少女は何度か小さな声で復唱する。
「何か言いたそうだね。行きたいとか?」
「行きたくない。人は嫌い」
「そう」
僕の方は別に強要するつもりはさらさらない。
しかし、あまり離れられても困る。
それは少女の管理面からもそうであるし、僕のタスクドールの回復がタスクドール使用者の近くでしか行えないことにも起因する。
なぜか。
簡単だ。
オーバーワーク。
要するに僕は一度タスクドールを使い過ぎてしまった。酷使したツケはまだ回復手段以外で大きな症状として出ていないのが幸いだが何が起きても不思議ではない。