キマグレ
しばらくしたら美由が来た。
「将く〜ん、ご飯の用意買ってきたよ〜」
「おっ、やっぱり美由は気がきくな。…どっかの遊び道具しか持ってこないやつと違って…。」
「いやいやよく考えろよ。俺がご飯の用意買ってきて、将く〜ん、ご飯の用意買ってきたからオカズとして私を————わー⁉︎うそうそ!冗談だってー!嘘だからその手に持ってるスタンガンを捨てろー!!」
「うるさい、今この瞬間お前がこの家に泊まれる権利は消え失せた。俺の前から早急に消えろ。」
「将く〜ん、乱暴はよくないよ〜?それに陽くんも冗談っていってるよ?」
「と、思ったがもう夜も遅いし、美由もこう言ってるから許してやろう。」
「ありがとう〜!美由〜、お前がいなかったら俺は闇の世界へまっしぐらだったぜ〜!」
「えへへ〜、いいよ〜♪私は、将くんの家に来れただけでとってもうれしいからね〜。」
「ありがとう、美由。早速、夜飯作るからその袋かしてくれ。」
「ううん、私も手伝うよ?将くんの手料理も食べたいけど、将くんだけに作らせるのは嫌だからね〜。」
なんて嬉しいお言葉なんだ、嫁に欲しい。そんな気持ちを抑えつけて。
「なら手伝ってもらおっかな。じゃあ早速、美由は芋の皮をむいてくれ。食材から見て、カレー食べたいんだろ?美由は。」
そして美由は、驚いたような顔をして。
「え〜?なんでわかったの〜?まだ言ってないのに〜。」
と目を見開いて言った。
「だって美由って、ちょっと子供っていうかさ……。」
「む〜、子供っぽくなんかないよ〜。」
ほっぺを膨らませ、こちらをかわいい目でにらんでいる姿は、さながらリスのようだった。
はっきり言うが滅茶苦茶かわいい。
くっ…、だが俺はクール系なんだ…、ここでデレデレしたらひかれる可能性もある…。
ここは得意のポーカーフェイスで…
「そ、ソうだヨね〜。」
ポーカーフェイス!もっとやる気だせ!
「もう、お前ら付き合えよ…」
陽太が放った言葉に反応したのは、美由だった。
「え!え、えっと〜、付き合うのはもうちょっと経ってからかな〜?あはははは〜…」
何!ちょっと今、聞き捨てならないことを聞いた。
「み!美由は誰かと付き合う予定なのか?」
できるだけ冷静に、できるだけ平静に。そう言い聞かせてかけた言葉だったが。
……シ〜ン……
え?なにこの空気?
え?ちょ、待って。なんでこんないきなり静かになったの?
「………」
「………」
「………」
お願い!誰か喋ってー!誰でもいい!
そこで口を開いたのは、陽太だった。
「美由………頑張れ…」
何をだよ!
「…うん…」
「ごめん…俺もう見てらんねえわ。トイレいってくる。」
おい逃げんな。
「……まあ、とりあえずカレー作るか。」
ここは無理矢理締め切ってもう終わろう。
「うん…」
その後、俺たちは学校の事や、入学試験のことなど話していて、気がついた頃にはもう寝る時間になっていた。
「じゃあ、私はもう寝るね〜。明日、お寝坊しそうになったら起こしてね〜。」
「おう」「うぃーす」
「じゃあ俺も今日は、もう休むわ。」
「わかったー。」
さて何もやることがなくなったな。
俺も寝るかなー。
そして俺は、布団にくるまって寝息を立てた。
————————
そこはとても薄暗く、だがチリひとつなさそうな研究所のようだった。
「ねー、今日は何かあった?」
そこには、見た目は爽やかそうな青年だが、モニターを見て子供の様な笑みを浮かべている者がいた。
「いえ、今日もまた目立ったような動きはこの世界で見られませんでした。」
その青年の右後ろには、眼鏡をかけた金髪の美女がいた。
「も〜、本当につまんない。なんでこの世界は、こんなに平和なの?せっかくスキル何ていう面白いものを全員にあげたのに…。バカなのかなあ?」
「おそらく、この世界の住民は争うことが嫌いなのでしょう。なのでここ最近は、大規模な戦争などは一切起こっていません。」
「なんで昔は、あんなに面白かったのに急に平和主義になったのかなあ?理解しがたいよ。……本当に昔は、面白かったなあ、連日連夜殺し合いを続けてて、戦争のない日はなかったぐらいなのに。………ん?おお!いい事、思いついた!」
そこで青年は、左掌に右手をグーにしたのをポンッと置いて。
「僕たちで、殺し合いをさせればいいんだ!」
その青年の一言で世界がかき回されることになった。