ニチジョウ
日が落ちる前の夕方ごろ
「ああああああ!!!!なんで!!!なんでえええええぇぇぇぇぇぇぇあああああああああ!!!!!」
「あああもうっ、うるせえよ!!!」
俺は、姫宮 将貴。
そしてこの叫んでいるうるさい奴が、朝霧 陽太。
スキルのランクはBで、台風ほどの風じゃなければ、自分の周りの風を操れる『風の指揮者』というちょっとアレな名前。
といってもスキルが普及しているこの世界じゃ何も言われないが。
明日、近所だが何気にマンモス校な星宮桜高校、通称:星宮学園という高校に二人一緒に入学する。ちなみに全寮制で、頭もいい方だ。
陽太は、俺の幼馴染で結構仲が良い。
もう一人、幼馴染がいるが今この場にはいない。
ちなみに俺達は、小学校から仲が良かったということもあり、人間不信にはならない。
もう一人の幼馴染も同様だ。
「俺のぉぉぉぉ!俺のカリンちゃんがあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だから、うるせえって!」
俺が、家でゴロゴロしながらゲームしてた時に、陽太からいきなり連絡が来て『なあ将貴、今日泊めてくんねえ?今日姉ちゃんの彼氏が泊まりに来るって言うからさ、隣の部屋でアンアンやってるのを一人寂しく聞くって、ちょいと酷じゃないか?』と泣きそうな声で言われたから、渋々了承してやった。
祖母が昨日倒れて、入院したので祖父も付き添いとして行った。だから今は誰もいない
俺も付いて行くと言ったら入学式があるんだろう?と言われたが全寮制だからもうしばらく会えないと言ったら、苦しい顔で会うより、嬉しい顔で会う方がいいだろうと言われて断られた。
少し不満があったが、これも渋々了承した。
そして陽太が、フィギアやラノベなどを持ってきて泊まりに来た。
ちなみに陽太のルックスは、何気にいい。整った顔に角が丸っこいメガネをかけて、体型も太ってないしかといってガリガリでもない。
ラノベを持ってくるのは、まだわかるがフィギアを持ってくる理由が全く分からない。自慢でもしたいのか?
俺はオタクじゃないが別にオタクが嫌いというわけではない。
有名なネタなどは大体わかるが陽太と比べると全くだ。そう、陽太は重度のオタクだ。
そして、陽太を自分の部屋に通して、何をしようかと悩んでいた時に、急に部屋をキョロキョロと見渡して。
「なあ!エロ本はどこだ!」
と言われたので、笑顔で
「バキッ!」
そして今の状況である。
ーーーーー
「うおおおおおい!!どうしてくれんだあ?お前もカリンちゃんみたく首の骨を折るかあああ!あああん⁉︎」
「うっせえ、せっかくお前がかわいそうだから泊めてやろうと思ったけど、はいっやめやめ〜、今日は帰れ」
「なっ⁉︎わ、悪かったって!冗談だろ?俺たちの仲じゃないか、あっはっはっはー!」
ちっ、こいつめ現金な奴だな。
まあいい風呂でも入るか。
また部屋の中、物色したら意識刈りとって家の裏にある神社の墓場に埋めるからと言っておいて部屋を出た。
もう時計は、6時をまわっており太陽もほぼ沈みかけていた。
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風呂から出ると陽太が
「なあ、美由は誘わねえのか?」
と聞いて来た。美由というのは、小暮 美由という、例の幼馴染だ。ちなみに美由も、星宮学園に入学する。
「別にいいけど、来るかなあ?」
「お前が、頼むのならほぼ来ると思うがな。」
「ん〜、そういうことじゃなくて〜。」
「?」
「いや〜、あいつ今日までずっと入学の準備してなかったみたいでさ、朝に一緒に買い物行こって言われたけど、めんどくさいから断っとい————」
「バカか、お前は!お、おま、せっかく休日に女の方から誘ってくれていやがりますのに、何それを無駄にしてんだ!しかもそれが普通の女ならともかく、あの美由だぞ!」
「どの美由だよ……。まあ一応誘っておくよ。」
といって美由に連絡をしておいた。
なんか陽太が、「いいかお前、そもそも女の子から誘わ(ry」とか語り始めて、いい加減うざくなったから「俺、今日なんか墓場行きたい気分だわー、どうしよかなー」と言っておいた。2秒で黙った。
そのあと陽太とラノベやアニメの話しで盛り上がっていたら。
プルルルル、プルルルル
という音がスマホの振動とともになった。
「おっ、美由か?」
「ん?……いや、学園長だ…。どうせまた生徒会に入ってくれって話しだろうな。ったくまだ入学もしてないのに何言ってんだ、この学園長さんは…。………はい、もしもしー。」
『もしもし、将貴君?学園長の花苗だけど。まあ、前にも連絡したからわかるわよね?』
「いえ、誰ですか、わかりません。ついでに生徒会の件も断っておきます。では用事はこれだけですよね。さようなら。」
『ちょっと待ちなさいっ!…はぁ、あなた凄いわね。仮にも私は、明日あなたが入学する高校の学園長よ?もう少し緊張してもいいんじゃないかしら?』
「だってまだ入学してないですし。何度も断っているのに無理やり生徒会に入れようとする学園長様(笑)とは、もうあまり関わりたくないです。どうします?終いには、自分の権力を使って強制的に入れますか?職権乱用ですか?」
『……はぁ、もういいわ。諦めるわよ。その代わりうちの学校へ来てもちゃんと実力を発揮してね?入学試験で、ほぼ満点を取った首席さん?ふふっ。—— ツーッ——ツーッ」
「ちっ……。」
あんのクソババア……。
そして電話を切り終わった直後に再度。
プルルルル、プルルルル
「またかよ……。はい、もしもーし。」
『もしもし〜?将く〜ん?』
「ああ、美由か。で、お前も来るか?」
『うん、あのね〜。今、最後のお店にいるから、ここでたら向かうね〜。』
「へ〜、お前がこんなに早く買い物終わらせるなんて珍しいな。槍でもふるのか?」
『降らないよ〜?だって今日は、真矢ちゃんと一緒に行ったから。ホントは将くんと行きたかったけどね〜。』
スマホごしに、えぇぇ⁉︎という声が聞こえたが無視。ちなみに真矢というのは、美由の友達。
「真矢?あ〜、あの見た目が小さいくせにプライドだけ無駄に大きい、バカそうなやつか。」
『将くん悪口言ったらダメだよ〜?』
「ああ、悪い。そいつには、絶対謝らんが。」
『うふふっ♪じゃあね〜、将く〜ん♪』
「おう、また後でな。」
見ての通り、俺は幼馴染以外にはいつもこういう態度をとっている。もう癖になって喋り方変えられない、変える気は一切ないが。
「ほんっとお前って、俺たち以外には厳しいんだなあ。なんかかわいそうだわ。」
「えっ?俺が厳しくしてないのって美由だけだけど?正直、美由以外信用できない。美由は裏表があんまないからな。」
「おいおい!俺は⁉︎俺は信用してないのか⁉︎」
「冗談だよ、それなりに信用してるよ。」
「それなりって、なんだよ!あと目、そらして言うなよ!…まさか、俺に裏表があると思ってんのか⁉︎」
「もちろん!」
「うわああああぁぁぁん!!!!」
泣きながら俺の部屋を出て行く陽太は、まさに滑稽だった。
そんな楽しい会話をしていた俺たちには、これから起こることなんか全く予想していなかった。