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古神機 ~繋がれし古の神々~  作者: 堤桜
第二章 日輪よ
18/36

 再び月より飛来した未確認物体が、沖縄沖に着水したのが確認された。


「ピンポイントでこちらに攻めて来てたのですから、続けて沖縄の海中に消えたというのには訳がありそうですね」

「そう考えて間違い無いだろうな」


「米軍の出方も気になります」

「米軍に被害でも出ない限り奴等は動かないとは思うが、興味深い対象であるだけに予測不能な面もあるな」


「やはり宇宙人なのでしょうか?」

「まだ分からないが、そう考えるのが自然だろうな」


「襲って来たのが、ドラゴンにフェンリルにガルーダというのは、どう考えれば良いのでしょう?」

「それらは神話の世界みたいだが、ボール状の物体は如何にも宇宙人的武器だからな」

 

 現時点では何も知らないのと同じだった。



 沖縄の西方沖海中施設

「かつての我等の力を思い知らされますね」

「一万年以上も放っておいた施設なのに、何の問題も無く使えるとは驚かされました」

「食糧をはじめとする生活物資の生産プラントどころか、獣の培養槽まで万全の状態で生きているとは思いませんでした」


「かつても侵攻の橋頭堡として使われたのでしょうね」

「神機と獣の部隊も呼び寄せても十分なキャパシティーがありそうです」


「まずは総員で施設を詳細に点検整備し、終了後に作戦会議を始めましょうね」


 今回降り立ったのは少数精鋭なのであろうか、僅か五十人程であった。

 その人数でも、完全自動化の進んだ施設だったので点検は直に終わり、整備の必要も無いのが分かった。


「編制の済んでいる潜入部隊は作戦室へ、整備班は潜航艦の準備を、他の者は必要物資を調べ月へ連絡してくださいね。施設が用意万端になったら、神機と獣の部隊を呼び込みますからね」


 各人がそれぞれの役目に散っていった。


「我々の一番のターゲットはアメノウズメです」

「アマテラスでは無いのですか?」


「再支配の為には、アメノウズメを手に入れる方が有効だと考えてます」

「主神様達との会議では、三貴神が優先事項だったのではないのでしょうか?」


「強力な戦力を持たない我等と違って、あの方達は少し考え方が力尽くなところがありますからね」

「どちらにしても、アマテラスの方が圧倒的に能力が高いのでは?」


「能力というものは使い様ですよ。アマテラスの能力だと殲滅になってしまいますね」

「敵に回られた場合に脅威となるのはアマテラスなのでは?」


「力勝負前提ならそうでしょうが、そういう勝負は必要ありませんし、再支配こそが目的なのですからね」

「アメノウズメの方が再支配の役に立つという事なのですか?」


「アメノウズメの真の神威は、広域精神操作ではないかと解析されていますからね」

「その能力が強力ならば、支配するには有用でしょうし、敵に回したら最恐じゃないですか」


「無血で支配する方が、焼野原を支配より良いですからね」

「昔の様に力を見せて支配するのは無理でしょうし、その為に殲滅させては本末転倒という事ですか」


「そもそもアメノウズメがいなければ、アマテラスは降臨出来ないと考えています」

「そう考えられるはまだ早いのではないでしょうか?」


「オモイカネさんも同様の考えに至ってる様ですよ」

「神機研究の第一人者の方がそう考えられたのですか」


「どうも皆さん疑問だらけの様ですが、作戦成功の為にも疑問は払拭しておいて下さいね」

「我等の不勉強と考え不足でした」


「いいでしょう。そして我等がターゲットとするのは、アメノウズメの搭乗者の方です」

「搭乗者相手なら我等でも闘えます」


「搭乗者が亡くならない限り神機は奪取出来ませんからね」

「搭乗者の確定及び殺害が我等の任務と理解しました」


「お願いしますね」


 任務を与えられた実行部隊は潜航艦で発進した。



 研究所長に、剛の事でトレーナーが報告に来ている。


「天才とかいうレベルではありませんよ、化け物と言っていいくらいです」

「そんなに凄いのか?」


「トレーニングを始めたばかりだというのに、既に中学どころか高校の全国レベルのアスリートになっています」

「神と同化したのがキッカケなのだろうが、同化していない状態でも身体能力が上がるという事なのだな」


「異常な伸び方ですし、私も直に付いていけなくなりそうです」

「武器の使い方を学びたいと言うから棒術の師範を付けたのだが、そちらもどうなるかだな」


「相当な達人を付けないと、すぐに力不足になりますよ」

「検討してみよう」


「妹さんも同化されたそうですが、その後どうなっているのでしょう?」

「近々連れて来てくれるから、本人が了解してくれたら検査させてもらおうと思っている」


「元々凄いアスリートだそうですから、楽しみです」

「どうも科学者とか君等みたいなタイプは、自分の欲求に忠実過ぎる様だな。相手を尊重しないといけないぞ。ましてや相手は子供なんだからな」


「分かりました。そろそろジムに行って剛君を待つ時間なので失礼します」


 トレーナーは一礼して退室していった。


「化け物か……静はまだ同化出来てないから変化は無い様だが、もしを考えると複雑なものがあるな。剛君兄妹はある意味被害者かもしれないから、出来るだけの事はしてやらんとな。親御さんにも説明しなくてはならないのだが、難しいな」


 責任ある立場故の苦悩を三上は感じた。



 放課後、ジムに向かう準備を剛がしている。

 下足に履き替えていると後ろから声が掛かる。


「お兄ちゃん私もスポーツジムに連れてってよ」

「お前は部活があるんじゃないか?」


「辞めようと思ってるの」

「何で?あんなに部活が大好きだったじゃないか」


「今でもチアは好きなんだけど、物足りなくなっちゃったの」

「もしかして、お前も運動能力が上がっているのか?」


「うん」

「そうか……」


「このまま続けるとチアを嫌いになっちゃいそうだし、何よりも今はやるべき事が違うと思ったの」

「…………」


「だから連れてって」

「分かった。でも先生や先輩にちゃんと告げたのか?お父さんやお母さんにも何も言って無いんだろう。先にそういう事をちゃんと済ましてからじゃないと駄目だよ」


「うん。そうする」


 舞は走って引き返して行った。


 ジムでのトレーニングを終えると、棒術の指南を受ける為研究所に行く。

 基本からじっくりと教えてもらうが、自身の身体能力が上がっているからか、理解力が上がっているのか、自分でも驚く程上達していくのが分かる。

 武道というものは、効率的な体の使い方を追求する道だと感じて、稽古が終わった。


「御疲れ様でした」


 シャワーで汗を流し着替えを終え、所長室に挨拶に行こうとしたら声を掛けられる。


「こんばんは先輩。これから所長にお礼を言って帰ります」

「お礼ですか?」


「今日から棒術の先生を付けて下さったんです」

「物凄い上達ぶりでしたね」


「誰かに見られている感じはしていましたけど、先輩だったんですね」

「感覚も研ぎ澄まされてきてるのでしょうね」


「そうかもしれませんけど、誰だか分からないんじゃまだまだですよ」

「日に日に強くなっていかれますね」


「それは僕の力じゃなくて神様に力を借りてるからですよ」

「ちゃんと努力されてると思いますよ」


「ありがとうございます」


 所長室に着きノックをし入室した。


「さっそく棒術の指南を付けて頂き、どうもありがとございました」

「私が協力出来る事なら何でもするし、礼などはいらんぞ」


「そういう訳にはいきませんよ」

「君の果たしてくれた事を考えれば、遠慮などいらん事は分かるだろ」


「それなら御厚意に甘えて、実は妹もトレーニングしたいと言ってきたので、トレーナーを付けて頂くお願いしたいのです」

「それは勿論構わんが、妹さんも身体能力が上がってきたのかな?」


「そうらしいです。それにこうなっては、妹も自分の身を護る為に鍛えるのは必要な事かもしれません」

「君が護る為に鍛え始めたのではないのかな?」


「勿論そのつもりですが、全力を尽くしても護り切れない事態になったり、むしろ逆に助けられたくらいですから、妹の能力を上げた方が安心だと感じました」

「承知した。君の憂いを無くす為にも、親御さんの説得も含めて最高の環境を用意させてもらうよ」

「ありがとうございます」


「剛さ…君の棒術の上達は凄かったんですよ」

「そうなのか?」

「私も小さい頃から薙刀をやっているから分かりますけど、有り得ない上達ぶりでした」


「それはさっきも先輩にも言いましたけど、神様の力を借りてるからですよ」

「そうなのかもしれんな。先程もトレーナーが付いていけなくなりそうだと言っていたが、神の力を得た者に人間が教えるのは無理があるのだろうな」

「それでも、効率的な体の使い方とかを学べるから意味はありますよ」

「そうか。なるべく早く連れて来てくれたまえ」

「部活の退部を済ませたら明日にでも連れて来ますので、宜しくお願いします」


 挨拶を済まし剛は家路についた。



「期待してくれてたみたいで心苦しかったけど、明日正式に退部届出す事になったよ」

「一年生レギュラーだったもんなぁ、それでお母さんには話したのか?」


「うん、後はお父さんに話すだけ」

「結局競技会の撮影も出来なかったから、寂しがるだろうな」


「楽しみにしてたみたいだもんね」

「申し訳ない気はするけどしょうがないからなぁ」


「ずっと神様のままじゃないよね」

「分からないけど早く終わるといいな」


「元に戻ってまたチアやりたいよ」

「そうだな」

 

 まだ幼いとも言える二人には重すぎる宿命だった。

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