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古神機 ~繋がれし古の神々~  作者: 堤桜
第二章 日輪よ
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「潜航艦及び部隊の準備は進んでいますか?」

「艦及び突入ポッドの準備は完了しています」

「先行部隊はすでに出発済みです」


「先行と言えば私達全員がそうだと思いなさい、先んじた者こそが栄誉を掴めるのです」


 一糸乱れぬ敬礼で応えるのは士気の高さをうかがわせる。


「海底施設の調査報告が届き次第行動開始しますが、あらゆる事態に対応出来る様にしておきなさい」


 やはり一糸乱れぬ敬礼は部隊の質の高さもうかがわせた。



「神機の技術を組み込んで素体を強化しても、獣の頭脳のままでは戦闘力の増加幅は小さいものとなりそうです」

「遠隔制御のタイムラグは致命的だから使えませんから、神機の様に搭乗型にしましょう」


「神機でさえ適合させるのが難しいのに、改造した獣と適合させるなんて無理でしょう」

「あちらでは強制適合に踏み切るらしいですから、我々も負けてはいられません」


「外道な真似はアイツだけで沢山よ。私達はもっとスタイリッシュでなくてはいけないわよ」

「AIの取り付け制御システムの見直しで大丈夫だと思います」

「素体強化の方もまだまだ余地があると思います」

「前回の戦闘で敵神機のデータもかなり取れましたので開発も進みます」

「我々も現地に拠点が必要だと思われます」


「私達は失地回復しなくてはならないから頑張るのですよ」


 敗北を経てかつて無いほど士気が高くなっていた。



「今回アマテラスの力が部分的ですが、解放されたのは興味深かったです」

「興味深いとは?」


「三貴神が起動する為には、リミッターが必要なのではという考えを持っていたからです」

「アマテラスが起動したのは、あの二体がリミッターとして先に起動していたからだということか」


「ツクヨミが暴走したのは、リミッターを失ったからだとも考えています」

「その考えに根拠は有るのか?」


「ツクヨミ暴走の直前に、何体かの神機が失われた記録があったのを覚えています」

「リミッターさえ仕立てあげる事が出来れば、ツクヨミ再起動を期待出来ると考えて良いのか?」


「私はその可能性が高いと思っています」

「このグループの研究が一番遅れている訳ですが、一番大きな成果を期待出来ますから進めて下さい」


 朧ながら大きな成果が見えて来た彼等の意気もあがっていた。



「やはり適合者は見つかりませんでしたか」

「申し訳ありません。現在の我々の技術では、十分な同調を得る為には間口が狭くなってしまうのは避けられないのです」


「オリジナルの優秀性を改めて思い知らされますか……」

「完全なヒヒイロカネの製法さえ分かれば、現状を打破出来ると思うのですが」

「ロストテクノロジーとは言え過去に出来た事ですし、資料を調べ上げれば、何らかの成果を上げられるはずです」

「強制適合の方はどういたしましょう?」


「大破壊を生き延びた方々に、非道な真似は出来ればしたくなかったのですが、そうも言ってはいられなくなりました」

「ランダムにという指示ではありましたが、一応適合率の高い組み合わせをリストアップしておきました」


「ご苦労様です。後は私の責任で選びますから、貴方達は作業に従事したというだけです」

「そういう訳にはいかないです。指示を無視して選んだのは、私にも責任があります」


「それは、少しでも自我を残してあげたいと思ったからでしょう」

「心を殺すというのは、実際に殺すのと同義だと思いますから……」


「その様な気持ちにさせない為に、私に責任者の役目を果たさせてください」


 厳しい選択を前に全員の気持ちが一つになった様だ。



 研究所では常時観測が続けられていた。

「月よりの未確認物体が、沖縄の西与那国島近くに着水しました」


「もう月から来るのを隠しもしないのですね」

「しかし何故沖縄なのだろう?てっきり今度もこちらに向かって来ると思っていたんだが」


「私は岩戸の間の音量が変わらなかったから、こちらには来ないと思ってました」

「取り敢えず剛君達に負担を掛けずに済みそうで良かったな」


「この短期間に随分と無理をさせてしまってますからね」

「心配か?」


「お父様の仰っている意味が良く分かりません」

「それにしても、剛君のここ数日の変わり様は凄いものがあるな」


「余程神との相性が良いのでしょうか、日々力強くなっていくのを感じますね」

「最初に会った時は普通の子供という感じだったのだが、今は男という感じをさせるからな」


「そうですね」

「それはどういう意味だか良く分からんな」


「…………」

 出会って間もな無い年下の男の子が、自分にとって大きな存在となってきているのを感じた。



「先行部隊より海底施設を確認と連絡が来ました」


「施設の状態はどうなんでしょう?」

「現在調査中ですが状態は極めて良好とのことです」


「過去の我等の優秀性がうかがえますね。直ちに出動しますが、準備は整っていますね?」

「勿論ですが、調査完了を待たないでもよろしいのですか?」


「我等のやる事は彼の地を取り戻すだけ、もうこちらに戻る事は無いのですからいいのです。もし施設に問題が有ったとしても支援体制は整えてありますよね?」

「勿論そちらも万全です」


「もう一万二千年も待ったのです。これ以上一刻も待つ気はありませんね」

「部隊に搭乗指示を出します」


「それは私の役目ですね。その気はありませんが、死地に赴く事になるかもしれませんから責任者としての務めですからね」

「宜しくお願いします」


 出動指令より間も無く戻らぬ決意と共に月を飛び立った。


「クシナダが出動したようだな。あの者にとってスサノオは特別な存在なのだから急ぐのも無理はないな」

「あの者が成り上がれたのはスサノオのおかげですから」

「そんな言い方は無いでしょ純粋な気持ちだと思いますよ」


「志を同じくする者を悪く言う事は無いな」

「失礼しました」


「物事を達成する為には、個々が力を尽くすのは当然だが、協力する事はもっと重要だからな」

「オモイカネ殿には獣の強化に御力を貸していただいてますよ」


「成果に期待して良いのだろうな?」

「数日中に完成するプロトタイプを、直にでも実戦投入するつもりですよ」


「私の方もツクヨミ起動の道筋が見えてきています」

「我も力を取り戻しつつあるが、もう少し時間が掛かりそうなので宜しく頼む」


「最期に支配活動をした地なのですから、アマテラスが残されていたのは当然なのですが、その地から再び支配を始めるというのは不思議な気がします」

「小さな島国だったから後回しにしていのに、今では先進国となっているとは驚きですよ」


「再降臨の舞台に相応しいな」

「我等も早急に降り立ちます」

「今更少しくらい待っても、などという気にはなれませんよ」


「今までは個々で張り合っている感があったが纏まってきた様だな」

「恥じる思いです」

「つまらぬ意地でしたよ」


 侵攻者は古の神々であったのか。 

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