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古神機 ~繋がれし古の神々~  作者: 堤桜
第二章 日輪よ
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 暗がりの中で叫び声が響いた。


「一体どういうことなのよ!!」


 完全に追い込んで、後は止めを刺すだけだと思っていたところに、援軍が登場されて戦況をひっくり返されたのだから、怒るのも無理は無いだろう。


「飛行機能とは違うみたいですけど、飛んでいるかの様ですね」

「戦闘ポッドとはスピードの次元が違うみたいだな」

「頭部の横に付いていた飾りは外すと武器に出来るみたいです」


「もう一体の神機も空間から武器を引き出しましたね」

「オリジナルは我々でさえ理解出来ない能力を持っているのだな」

「たった一撃で戦闘不能にしてしまうとは、恐るべき攻撃力です」

「でも、どちらも飛行タイプを倒す事ができませんよ」

「こちらも何も出来ないみたいですけどね」


 光の束が走ったのが確認される。


「…………」全員が沈黙した。


 幾度か閃光が走り、送り込んだ全てを失ってしまった。


「こちらの神機の投入は今回見合わせた方が良さそうです」

「二機は完全起動状態と言っていいみたいですね」


「最後の光はアマテラスの神威だろうな」

「もしそうだとしたら、アマテラスは敵の手に渡っている事になりますよ」

「だとしたら、尚更こちらに一体もいないのは分が悪過ぎます」

「ツクヨミの解析とスサノウの捜索が急務になりますね」


「戦力増強の為にも、こちらの神機の適合者を作り出す必要が出てきた様です」

「強制適合は戻れなくなると判明して、禁忌となった技術のはずだったと記憶してますが?」

「元々ナチュラルに適合するのは、数百万人に一人いれば良いくらいの確率なのだから、我々には禁忌などと言ってはいられないでしょう」

「我等の悲願の為の犠牲なのだから、やむを得ないな」


「獣と戦闘ポッドがあれ程役立たずだとは、思いもよりませんでしたね」

「仕方がないでしょう、元々神機相手には負けるのが役目であって、勝負するなんて想定してないんですよ」

「確かに今回は相手搭乗者の未熟に期待して投入したのだし、途中までは上手くいっていたのが、望外というだけだったな」


「一連の流れから、最初に現れたのがタヂカラオ、今回のがアメノウズメで間違い無さそうです」

「初めてであれだけ動けるとは、アメノウズメの搭乗者の能力は随分と高いのではありませんか?」

「それを言うなら、タヂカラオにしても最初からあそこまでの力を出せるのは、有り得ないことです」


「搭乗者を直接叩くのが一番の良策かもしれませんね」

「スサノウの捜索と搭乗者の始末は任せて良さそうだな」

「拠点の整備と部隊の編制が済み次第行動開始しますね」


「私はツクヨミの解析と適合者の作成を始めます」

「私だってこのままじゃ済ませないから、獣の戦闘力上昇に取り掛かりますよ」


「期待する」

 


 獣の入った培養槽が立ち並ぶ施設内で呟いてる者がいる。


「元々神機の自演用の獣だけど、生物としては限界まで来てるのよ。戦闘ポッドだって、数で制圧する為の通常兵器でしか無いんだから、私の持ち駒は神機相手は無理なのよ。遺伝子工学が限界だったら、神機の技術を盛り込んじゃえばいいのよ。アイツにお願いするのは嫌だけど、結果出してなんぼよ」


 別の施設に向けて足早に歩き出した。


 施設の中央にあたる位置に、ソレは横たわっている。

 頭の先から爪先まで、全ての光を吸収するかの如く黒い巨人である。


「何で未開人にオリジナル神機が起動出来るのに我々に出来ないのだろう。ツクヨミの解析も何も資料は残って無いし、三貴神は分解する事も出来ないのだからどうしようもない。暴走した時に壊れてしまったのだろうが、本来の神機は不滅であると伝わっているから、違うとも考えられる」


 堂々巡りのループから抜け出せない……


「適合者の研究棟に行ってくるからこのまま作業を続ける様に」


 適合者を作るというのは、自我を消してしまうのが一番簡単な方法だ。

 そうされた者を人と呼んで良いものかは、戦時下とも言える今は別の話なのだろう。


「自我が無い方が作戦行動も上手くいくだろうし、本人も悩みが無くなって幸せになれるだろう」


 自分に言い訳をする様に考えながら、部下に自我を消す者たちをランダムに選ぶ様指示を出し、その場を去る。


 神機を新造している施設に着くと待ち人がいる。


「アナタの担当部署では無いのに、何故ここにいるのですか?」

「今は担当どうこうよりも戦力の底上げが優先だと思い、アナタに教えを乞いに来たのですよ」


 自分も戦力の底上げの為に、他人の自我を奪おうとしている後ろめたさから応えてしまう。


「その通りです、全ては我等の悲願の為に、力を合わせましょう」

「きっとそう言ってくれると思ったわよ」


 待ち人を施設の中に導いた。



 その施設は他と比べると遥かに小さいが、人員の士気は極めて高い。


「隠密性とスサノオ捜索を考えると、拠点は海中に置くのがいいわね」

「たしか、オリジナル神機の時代の拠点が沖縄という地にあったはずでしたから確認してみます」


「それさえ問題無ければ、私達の部隊は大掛りな準備もいらないし、直に行動に移れるわね」

「潜航艦と先発部隊の準備は明日には終えられそうです」


「私達の仕事は影だけど、表を喰う意気込みを持っていてね」


 全員静かに頷き各自の仕事に戻った。



「想定外の強さだったが、皆の士気が上がって、かえって良かったかもしれんな。時間が経ち過ぎたばかりに、再び神として降臨するのは無理の様だから、力尽くが必要とされるからな。我が力の解放も急がなくてはなるまい」


 本格侵攻の時が近付いていた。

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