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古神機 ~繋がれし古の神々~  作者: 堤桜
第二章 日輪よ
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 学校かメールか、両方共が機能していないのか、情報を得らないまま登校してみる。

 妹は大事をとって、今日は病院にだけ行ってから休むそうだ。


 予想通り、あれだけの事態が起きたわけだから、昨日の今日で日常に戻れるはずも無く、暫くの間休校と、登校していた教諭から説明を受ける。

 登校して来た生徒の氏名を確認しているのは、安否確認ということなのだろう。


 帰宅を指示されたが、先輩に返すつもりでジャージを持ってきていたので、神社に向かうことにする。

 学校からは、電車で一駅分の距離なので、歩いて行くことにした。



 思ったより時間が掛かって、三十分程で神社に着くと、待ち構えていてくれた様に先輩が出迎えてくれる。


「おはようございます」

「おはようございます。早速来ていただけてありがとうございます」


「早くお返ししないといけないと思いましたので」

「北山剛さんでよろしいんですよね」


「どうして僕の名前をご存じなんでしょうか?」

「失礼だとは思いましたが、調べさせていただきました」


「調べたって……何の為に?」

「お話ししたいことの内容に、秘匿性があると思ってください」


「秘匿性って昨日のことに関してですか?」

「はい、その様なわけで着いてきていただけますか?」

 僕は頷き案内のまま社に入った。



 社の奥の扉の両側にガードマンが立っているが、昨日の方とは違っている様だ。

 開かれた扉を通り抜けて先に進むと、歌?音楽?が鳴り響く地下空洞が目の前に拡がる。


「こ、ここは?」

「真の本殿であり、神が降臨されると伝えられている場所なのです」


「昨日の出来事を経験した後では、神の存在は信じられますね」

「お話ししたいこととはそのことなのです」


「僕には何も分からないんですけど」

「知っていただきたい事を伝えたいのと、感じた事を伝えて下さるだけで十分です」


「それなら何とかできるかもしれません」

「ではこちらにどうぞ」

 研究施設の様な建物に案内された。



「神話の時代の遥か前より、この場所があるというのは驚きますね」

「世界中の神話に共通点が多いというのは、それが作り話では無く真実を伝えていると思われます」


「僕は神話に詳しく無いので何とも言えませんが、昨日の出来事はまるで神話という感じでしたね」

「昔の人でしたら、なおのことでしょうし、信仰にもなるでしょう」


「心配しているのは、大抵の神話に大きな闘いが語られてますし、我々の伝承でも、危機に神が降臨されるとなっている点なのです」

「昨日で終わりじゃ無いということですか?」


「初めての事態ですので何とも言えませんが、用心するに越したことはありません」

「でも用心は出来ても、対処は出来ないんじゃないですか」


「それは私が一番聞きたかったことなのですが、どの様にして神と同化されたのですか?」

「それは僕にも全く分からないんですよ」


「実は伝承では、神が降臨なされた時に役目を果たすのは、私のはずだったのです」

「この神社は天照大御神を祀られているのでしょうが、昨日の神様は違うと思いますよ」


「同化されたあなたが言われるのですから、そうなのでしょうね」

「実はその同化というのをする前に、不思議な出来事があったのです」

 ガレキの下から妹を救い出した事を伝えた。


「純粋な思いが引き金になるとすれば、私も一歩手前まで到達出来たかもしれません」

「僕の経験だけで、何の根拠も有りませんよ」


「他の誰もしたことが無い経験ですから、とても参考になりますよ」

「ありがとうございます。何でも聞いてください」


「同化された感じはどうでしたか?」

「まさに同化という表現がピッタリな、自分の体そのものといった感じです」


「経験しないと分からないんでしょうね」

「あの感じはそうだと思います」


「とても気になったのですが……」

「何でしょう?」


「何で裸だったのですか?」

 突然顔を真っ赤にして聞かれた。


 昨日を思い出して、一瞬答えに詰まってしまったが、思ったことを話してみる。


「同化する前はスポーツセンターにいて、衣服等はソコに残っていましたから、体だけが移動したのだと思います」


 話しながら、先輩が同じ事態になったシーンを想像してしまい、俯いてしまう。

 先輩も僕の考えを察したらしく、少し気不味い空気になってしまう。

 そんな空気を吹き飛ばす様に、警報が鳴り響いた。


「一緒に来てください」

 先輩に先導され下の階に降りると、多くの人々が真剣な表情でモニターに向かっている。


「報告をお願いします」

「月方向より突然に、多数の未確認物体が観測されたと防衛省よりの情報です」


「突然と言っても、昨日は衛星軌道に来るまで分からなかったのに比べれば、早いかもしれませんね」

「次いで物体のサイズは約十メートル、数は百程度との観測結果が報告されています」


「昨日とは大きさも数も違い過ぎますが、嫌な感じがします」

「先輩は昨日との関連を心配なされているのですか?」


「この場に鳴り響いている音は、一昨日から始まって昨日の事態の直前に音量が上がり、未だそのままなので関連性が無いとは思えませんね」

「危機は終わって無いということですか……」


「次いで現在の速度と進路だと、約十時間後に地球に衝突するとのことです」

「その大きさだと大気との摩擦で燃え尽きそうですけど」


「先輩は物理苦手なんですか?」

「え?何で分かったんですか?」

 先輩の意外な弱点は萌えというやつなんだろうか、可愛らしいと思う。


「それより防衛省より情報なんて、ココはどういう施設なんですか?」

「最初に話しておくべきでしたね」

 先輩が真顔に戻り静かに語りだした。


「この場所は、遥か昔より昨日の様な事態に備えて、各時代の権力者によって守られている地なのです。この国の支配者になるということは、この地の庇護者となる義務も負うのです」

 政教分離とかいうレベルの話では無い様だ。


「ここの皆さんが先輩の部下の様に感じるんですか、どういうポジションなんですか?」

「危機が訪れた時に矢面に立つのが私の役目で、彼等はその為のサポートをするのが役目となります」


「全てが先輩の為にあるということですか……」

「遥か昔から続いている仕組みなんです」


「気の毒と思えるくらい、大変な役目なんですね」

「もう覚悟は出来ていましたが、神と同化するのは私の役目だと思っていたので、戸惑っています」


「何の予備知識も無かった僕は、話を聞いた今でも戸惑ってますよ」

「同化できる素養を持つ者は、血脈があっても訓練を積んでも中々出てこないのに、何も知らずにいきなり同化出来てしまうとは驚きです」


「正直何で僕なんでしょうねぇ?」

「神に選ばれるというのはそういうことなんだと思います」


「妹を助けることが出来たのは、感謝しています」

「望みを聞いて下さったのですね」


「その恩は必ず返さないといけないと思っていますが、神様に恩返しってどうすれば良いのか分かりません」

「自分の出来ることを精一杯やるということだと思います」


「おお、先輩の言われる通りだと思います」

 僕の返事に先輩は沈黙してしまう。


「本音を言うと、神と同化されたアナタの力を借りたいと思っています。本来ならば自分の役目なのに、人に望むなんてズルイですよね」

「まだ先輩が神に選ばれないと決まった訳でも無いし、説得によって僕がやる気になれば、先輩が役目を果たしたとも言えるんじゃないですか」


「優しいのですね……」

 やはり先輩を目の前にするってヤバいな。


「神様に選ばれちゃったんだから、しょうがないってだけですよ」

 わざと軽口で答えたが、妹の他に全てを賭けて護りたい人が出来てしまった。


「登校してみるだけと言って出てきましたから、家族も心配するでしょうから一旦帰って出直してきます」

「夕食くらいの時間になりますし、昨日の事もありますから、出直すなんて大丈夫なのですか?」


「神様の御加護があるだろうから大丈夫でしょう」

 女神の願いを聞く訳だしと心で思う。


「あっ!ジャージを届けるという肝心の用事を忘れてました」

「間違いなくお預かりします」


「驚きの連続で完全に忘れてましたよ」

「当事者でなくては、信じろというのが無理な話でしたものね」

 談笑しながら扉まで先輩が送ってくれる。


「それではまた夕方」

「お待ちしています」

 挨拶を済ませ通路を通り社から境内へ出る。


 

 妹が仁王立ちしてこちらを睨んでいた。

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