紋章、占い、旅立ち・・・迷子
その後お茶を飲みながらエッジワースの妻である、パーヘルを紹介してもらい気がつけば夕方ということもありスピカは神殿を後にした
明日また来る事を約束し本を借りた
風の魔法が書かれた本で、とても貴重な物だから汚さないで欲しいと何故かパーヘルから念を押された
管理はすべて彼女がしているのかもしれない。と二人のやり取りをみながら思ったが口には出さずにいた
* * * *
次の日のお昼過ぎにスピカは神殿へと向かった
「う~、眠たいです」
あくびをかみ殺しつぶやいた
昨夜借りた本を読むうちにはまってしまい気がつけば深夜を回っていた
おかげで覚えた呪文は多いが、使用したことがないので出来るかどうかは怪しいところだった
後は、練習場を確保できれば尚良かったのだが、そこはエッジワースに聴くしかない
少し高台にある神殿
山道を登っていると先を行く人がいた
重そうな荷物を背負い、汗を流しながらゆっくり登っていた
「くそ、おやじの本が重い」
そんな呟きが後ろを歩くスピカの耳に入った
「あのう、もしかして神殿の関係者ですか?」
驚かせないようにわざと足音を立てながら前に回った
「ああ、そうだが…あんたは?」
「私、昨日から神殿にお世話になっているものです。よろしければ荷物持ちますよ」
スピカの気遣いのおかげなのか、旅をしてきたスキルなのか男は驚くこともなく荷物を降ろした
肩を回しながら不躾にスピカをじろじろと見、
「それ、神殿から借りた本だろ?ってことは許したって事か…。その細腕で持てるかわからないが、この荷物持ってみてくれないか?試しに」
手に持っていた本を見て何か納得したのだろう。肩にかけていた荷物をひとつ渡してきた
その言い方に少しムッとしたが、何気に渡された荷物をスピカは普通に受け取った
「おっ重い…」
思わず落としそうになるのを慌てて持ち直した
「悪いね。それが一番軽いんだ。それも持てないって言うのなら断ろうかと思ったけど良かった。俺はカイト。あの神殿にいるもんの息子だ」
歩きながら自己紹介をしてきた
(なんでしょう?いちいちむかつきますわね)
スピカも続いて名前を名乗り目的も話した
言葉の端々にイラつきながらも二人は雑談を交わしながら神殿を目指した
「おーい、おやじおふくろ。今戻った」
神殿の入り口とは違う場所から中へ入りエッジワースを呼んだ
おそらく、住居なのだろう。土間があり奥には竈や流しも見えた
昨日とは違い生活観がある場所だった
「カイト。“今戻った”じゃなくて“今、帰った”ではないのかな?…とスピカさん。まさかカイト運んでいただいた訳ではないですよね」
顔を出したエッジワースはカイトを見た後、スピカと彼女の手にある荷物を見、カイトを睨んだ
ピシャリと背中の扉を閉め、上り框に正座をしながらカイトの正面に着いた
「えっ、…仕方ないだろう重たかったんだから。そもそも誰の荷物だと思ってるんだよ?重たいのは全部おやじの本だよ?おふくろに頼まれたものなんてスピカに持ってもらった荷物だけなんだからな」
「なにを言っているんですか!女性に荷物を持ってもらうなんて男の風上にも置けない。私はそんな教育をした覚えはありません!」
「あのなぁ、カミーナからここまでこの荷物を抱えてきた俺の身にもなってくれよな。重たくて何度も紐を縫い直したり、他の旅人から冷ややかな目で見られたりしたんだぞ」
「私は馬車を借りるように言いませんでしたか?それに途中までは乗り合い馬車があったはずですよ?利用しなかったのですか?あなたはいつもそうやって歩いて帰ってくる。…カイト。お礼は言ったのですか?どうせカイトの事ですからお礼など言っていないのではないですか?」
「あ、そうだった。スピカありがとう」
と、カイトは入り口付近で呆然としているスピカから預けた荷物を受け取ると握手をしてきた
思い出したようにお礼をいうカイトにエッジワースはため息をつくと共に手で顔を覆った
「そういう事ではなくて…」
親の苦労は子知らず。といったところだろうか?
この世界は基本レディファーストです
何故なら女性が圧倒的に少ないから
田舎にいけば行くほど少ないです
アウズもクソンも田舎です
女性が男性と一緒にいる場合男性がすべての荷物を持ちます。
が、今時の若者はそこまで気にしていません。
そこをパパは心配してました




