紋章、占い、旅立ち・・・迷子
少し長めです
村を出たスピカは一番近くの村、クソンを目指すことにした
近いといっても歩いて半日はかかるし、乗合馬車も今は走っていない
地道に足で稼ぐしかなかった
旅の道連れがいるわけでもないスピカは早々に退屈になってしまった
大陸の端にあるアウズは商人が来るのも月に一回程度
街道沿いを歩いてはいるが人っ子一人会わないでいた
だからかついつい独り言を言っていた
「クソンはどのような村なのでしょう?とても楽しみです」
地図を見ながらこれから寄るであろう村や町を想像していた
それと同時にこれからどう歩こうか、とも考えていた
まずは紋章の事を聞かなければならないが、村長が言っていた事も思い出した
「紋章のことはおそらく隠しているでしょう」
と。スピカのように村が占いを知って尚且つそれを尊重しているのならば問題はない
だが、それを迫害の対象としていたら…
占いを蔑ろにしていたら…
スピカが情報を得るのは簡単なことではなくなってしまう
そうでない事を祈るしかなかった
考えながら歩いていると陽は高く登っていた
そろそろお昼にしようと木陰に腰を下ろした
母親が用意してくれたお弁当
しばらくは食べられないだろう、大切に食べなければ…とゆっくり咀嚼した
「やぁ、お嬢さん。それおいしそうだね」
「! んんん~!」
突然声をかけられ喉に詰まらせてしまった
「おいおい、大丈夫かい」
声をかけた人が心配そうに背中をさすってくれた
正直誰のせいで、と言いたかったが背中をさすってくれたのは有難かった
「ケホケホ、ありがとうございます。すみません」
水を飲みどうにか収まったスピカは声をかけた人を見た
「いやぁ、俺の方も悪かったよ。いきなり声をかけてしまった」
頭をかきながら謝った
「いえ、私のほうも驚きすぎました」
まさかこのような場所で人に逢うとは思っていなかった。まして声をかけられるなんて想像すらしていなかった
「いや、こんな場所で女の子が一人旅しているのが珍しくて、つい声をかけてしまった。申し訳ない」
スピカの隣に腰を下ろしながら再度謝る男性は、隣に何かを連れていた
「それは何ですの?」
「ああ、こいつか。こいつはキルシュ。珍しいだろう?耳長猫族だ。ちなみに俺はストラだ」
よろしく、手を差し出してきた。キルシュの方もスピカの足元にほほを摺り寄せてきた
スピカも握手をし、キルシュも抱き上げた
嫌がることもなくスピカにじゃれ付いて来た
そんな様子をじっとみるストラ、なにか言いたそうな表情をしている
「あ、私になにか用だったのですか?」
声をかけてきたのだから用があったのだろうか?でも先ほど珍しいからとも言っていた
「いやぁ~ね。そのお弁当を少し分けていただけませんか?」
申し訳なさそうに笑う
スピカは手をつけてしまったとはいえ、まだ半分ほど残っている弁当をみた
もう、5時間ほどすればクソンにつくしだいぶお腹も満たされた
そこで
「いいですよ?私の食べかけでよろしければ」
と、お弁当を差し出すか出さないかで…
「ありがとう!」と、大声でお礼を言われ半ば奪うように弁当を抱え食べだした
「私クソンまで行きますが、ストラさんはどうなされるのですか?」
聞けばストラはクソンを通りアウズに向かう途中だったらしい
クソンで用意してもらった食事は悲しいことに、目を放した隙に獣に持っていかれたそうだ
お腹がすきどうしようもなくなっていたところにスピカを見つけ声をかけたそうだ
「そうなんですか…。とても残念でしたね」
「いや、スピカさんに逢えて良かった。人心地付きました。ありがとう」
綺麗に空になった弁当箱を返してきた
くずひとつ残っていない
ここまで、食べてもらえればお母様もうれしいだろう
少し寂しく思っていたが弁当箱を見てそれもなくなった
「私、もう行きますね。あまり長居していると門がしまってしまいますし」
荷物を片付け立ち上がった
「ああ、そうだね。あまり遅くなると村に入れなくなってしまうか…。そうだ、これ」
ストラも立ちあがったかと思うと、鞄の中をあさりだした
「あった。これ大した物ではないけれどお礼。ぜひ受け取ってほしい」
そう、渡されたのはランタンだった
「え、私持っていますし…」と、断ろうとしたのだが
「これはただのランタンじゃないんだ。魔力があれば油を足さなくても灯りが点くっていう代物だ。消費が激しいから非常用としてしか使えないけれどもらってほしい」
無理やり持たされてしまった。
「あんた、魔力持ちだろう?見ればわかるって。絶対に役に立つから」
最後にこう言い残し走っていってしまった…
「まぁ、あっても困るものではありませんしね…」
と、仕方なく鞄にしまったスピカだったのだが、これがこの後重要なアイテムになるとは思っていなかった
文章力がほしい




