別れと魔獣と双子・・・仲間5
気がついたらこんなに経っていました。
申し訳ありません。
取り敢えず投稿します。
スピカの修行はゆっくりと続いていた。
言っていた通りケンは初日以外部屋へは来ておらず、顔も食事以外合わせることはない。
今日にいたっては朝食にも出ずに、神殿を出ているらしい。
「え、しばらくケンさんは帰ってこないのですか?」
ケンの代わりに修行を見てくれている神殿長が教えてくれた。
「ええ、ケンはここからは見えないですが、トゥームで一番高く神殿が唯一見える山に登っています。高くはないんですが、道が険しく切り立った場所が多くて…。若く体力がある神官が登るのが通例になってしまっていましてね」
扉の方向にあるのであろう山を思い出す様に長は目を伏せた。
「もう年を取りましたね。昔は私も登ったんですが…。最近では書物塔に登るのでさえも大変で、つい弟子たちに任せてしまって…。こうして知らない土地で修行をしているスピカさんを見ていると頑張らねばならないと感じてしまいますね」目尻に刻まれた皺を一層深くして笑った。
「いえ、私は何というか成り行きで修行をつけていただいているだけですので…。長様もお忙しいのですよね?」申し訳ないと頭を下げるスピカを止めるように、長が口を開いた。
「もう私もしばらく修行をつけていませんでした。ケンやその兄弟子にまかせてばかりだったんです。楽しいんですよ私も。それに儀式についてはもう私の出る幕はありません。当日だけです」
好々爺然とした笑みでスピカを見た。
神殿長は髪も眉も白く年を思わせるが、長というだけあってどこか威厳を感じさせた。
最初に逢った時は近寄りがたい雰囲気だったが、今では時折お茶をするほどにまでなってしまった。
もちろんカイトも一緒に修行もお茶もしているが、やはりというか何というかカイトに対してはとても厳しい態度を取っている。
一度カイトに厳しくないのかと尋ねたことがあったが「修行なんてそんなもの。昔の親父とおふくろと何ら変わりはない」とくたびれた様子ではあったがそう答えた。
そういえば、スピカは長の顔を見て思っていたことを聞いてみた。
「長様とケンさんは親戚か何かなのですか?目元などが似ていると思うのですが…」
「そうですか…?始めていわれましたね」少し悲しげな表情を浮かべ、遠くの方を見た。
この話は聞いてはいけなかったのだと彼の雰囲気で察したスピカは余計なことは聞いてしまったと思った。
「…あのう、質問してもよろしいですか?」
話しにくい空気が漂っていたがどうしても聞いておかないといけないことを思い出した。
「何でしょう?」
「ここの神殿は何故“名も無き神殿”と呼ばれているのでしょうか?“水の神殿”ではないでしょうか?」
確か最初に逢ったときケンは“水の神殿”から来たと言っていた。が“水の神殿”という神殿はない。と本に書かれている。
実際の神殿は海の上に建っており見に行くことは出来ない。船で行けるのだろうがよそ物のスピカに入ることは許されないだろう。
「それですか、もう何人にご説明したでしょうかね…。懐かしい質問です。さてここからは座学に致しましょうか」長は流していた魔力を止めた。
「すこし休憩をしてからにしたいと思うので、スピカさん以前にお渡ししていた本と地図をご用意できますか?私はお茶を頼みましょうかね」
よっこいしょ、と小さな声にのせ立ち上がった。
スピカも言われたものを用意するため立ち上がると、こわばった背を伸ばした。
少し行儀が悪いとは思うがスピカに用意された部屋の机では全部開けなかったのだから仕方が無い。と床に地図を置くことになった。
「リンが用意したのはこの地図ですか…。大きくて見やすいので私にはいいのですが、如何せん大きすぎるんですよね」床に広げるかどうするかで少し悩んだ。幸いこの神殿全体が土足厳禁なため床は綺麗だ。だが、大変高価な地図を床に置くという事に抵抗を覚えたのはスピカも同じこと。
「仕方ないですね。さて今いるトゥームがここ。神殿はここにあります」
海の小さな点を指す、その後も神殿があるカミーナ、クソン、コンシャースなどを神殿と一緒に指す。
「スピカさん復習です。魔法属性すべて上げてください」最後の一つを指し終わるとスピカの方に顔をあげた。
「魔法属性ですか。“風”“然”“水”“土”“火”“闇”“空”です」
いきなりの質問に多少慌てはしたものの、詰まることなく答えることが出来た。
「はい良く出来ました。ではそれを神殿の名前と照らし合わせてください」
スピカは地図を指しながら“風”は“風の神殿”と照らし合わせていった。
「あ、“水”が“名も無き神殿”という事になるんですか…」
「と、思われるでしょうが違うんですよ。スピカさんはまだ神殿の多くをご覧になられていないと聞いています。カミーナでも神殿を直接見てはいないのですよね?」確認するようにスピカの顔を見る。
小さく頷くスピカを見て長は手にしていた本を開いていった。
「神殿にはその属性を示す紋章が彫られています。風の神殿にも合ったかと思います。が、“名も無き神殿”には何もないのです。どの属性を祀っているのか示す紋章が。だから先人たちは他の土地の神殿と属性を照らし合わせ残った“水”がそうなのだと考えたのです。実際このトゥーム近辺は“水”の属性持ちが多い、それもあって“水の神殿”と名乗るようになりました。まぁ名乗るときに「“名も無き神殿”のより“水の神殿”の神官です」の方がいいでしょう?」
ゆっくり各神殿の紋章が書かれたページを開いていく。
“名も無き神殿”には名前だけで他は白紙だった。
「何故…か聞いても?」
長の表情がとても切なそうに見えた。
「……理由は…本当の事はわかりません。ただ“神様”と呼ばれる存在がとても“水”を嫌っていたのではないかと考えられています」




