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別れと魔獣と双子・・・仲間

スピカは風邪をひいたらしい

ここ数年、いや物心ついてから軽いものならばあるのだろうが、寝込むほどの風邪などひいた覚えはない。

だから、驚いた。

食べかけのりんごを落すほどには…。


「カミーナの双子にはこちらから手紙を出しました。良ければトゥームに来ないかとも添えて。それからしばらくはスピカさんはベッドから出ないでください。まだ体調は万全ではありません。無理をして途中で倒れてしまってはいけませんから」

ケンに注意を受けたのはスピカが倒れてから三日目の朝の事だった。

スピカ自身二日も寝込んでいたことにビックリし、ケンの言葉にさらにびっくりした。

「えっ何故…?手紙…」

まだ、頭がはっきりしないのか驚きすぎてなのか言葉が出てこない。

「はっきり言ってしまえば神殿の落ち度です。占いに関して神殿は昔から調べていました。そして各神殿を司る神か精霊が関係しているという事も。まさか紋章が表面に出ているのに証拠を持ってこいなどと言われるとは思ってもいなかったのです。今回の旅はカイトさん、そしてシュナという仲間がいたから良かったですがこれから先、仲間がいないのは困るのではないかと思い、神殿の力を使いカミーナの双子にわかってもらおうと思いまして」

申し訳ないと柳眉を下げ話すケンだがおかしい。表情と言葉があっていない…。

「さっきは“来ないか”と添えたと…あれ?」

どう考えても神殿の力を使い“来い”と脅しているように聴こえた。

「幸い双子の親族は神殿関係者。カミーナの“然の神殿”よりもこちらの“名も無き神殿”の方が力が上ですが、来ていただけるように手紙に添えただけですよ?」

目を細めるように笑うが黒い笑みに見えた。

助けを求めるようにカイトとシュナを見るが、二人ともスピカと目を合わせてくれなかった。


「ところで、ケンさん私の風邪移してしまいましたか?」

顔色が少し悪い気がする。

今まではケンの周りの空気が澄んでいたように感じていたが、今はほんの少し澱んでいるように思えた。

「いいえ、そんなことはないですよ。儀式の準備などで忙しいのでそのせいでしょうか?ではカイトさんスピカさん失礼します。シュナ行きますよ」

慌てたように部屋を出ていく二人。

口では何ともないと言っていたが、顔色と態度が何かあると物語っていた。

「スピカ、今はあんまり考えるな。他人の事より自分の体調を治すことに専念しろ。心配したんだから」

クシャと髪を交ぜるように、頭をなでるカイト。

一先ずスピカの意識が戻って安心したような顔をしている。

「それ喰ったら薬飲むんだからな。取り敢えず水変えてくるからおとなしくしていろよ」

水桶とタオルを持ち立ち上がり、部屋を出た。


「…水がお湯になってる」

(よっぽどスピカに言い当てられて慌てたか…)

年下らしい表情が見られた。とカイトはクスリと笑った。


-----------------------------------------


一方本人曰く手紙に添えただけの一文に振り回されたのはカミーナにある“然の神殿”の神官たちだ。

コンシャースにある大神殿につぐ力のある神殿から、半ば強制的な召喚ともとれなくない手紙。

しかも呼ばれているのは神官でもなくただの一般人。

元神殿長のひ孫という色が多少ついたくらいだ。

一体何の用だというのか…。

もちろん当の本人もその曽祖父も驚いているし、曽祖父に至っては驚きすぎて腰が抜けるほどだったとか。

大慌てで正装をさせ神殿へ向かい呼ばれた理由と手紙を読んで、彼は腰が抜けるどころではなかったようだ。


「え?あれって本物だったの?冗談とかじゃなくて?」

マギとガータ二人ともに引きつった笑みを浮かべている。

青い顔をしたたくさんの神官たちに囲まれ、保護者の曽祖父は青筋を浮かべ怒っている。

何となく理由はわかるが、まさかここまでの事態だとは思ってもいない。

「これも本物だと大祖父ちゃんも思っているんだ?」

「これが本物?そう思ってんの?大祖父ちゃん」

マギとガータ二人ともに左右片手にある紋章を神官たちに見せた。

マギは左手。

ガータは右手。

それぞれに“然”の精霊を表した紋章が浮き出ていた。


それをみて驚愕の声をあげるのは神官たち。

二人が隠していたことも、そこからあふれる魔力にも驚いた。

驚いたのは神官だけではなく、

「何故二人とも黙っていた!だたの怪我ではなかったのか!」

曽祖父も同様に感じそして怒鳴った。

「昔から何度も話していただろう?占いの“希望の光”は神殿に関係していると考えられていると。お前たち二人は小さい頃から魔力が多く強い。だからなにか変化があれば言いなさいと言ってきただろうに…」

何故言ってくれなかった…。

怒りはやがてしぼまったのか、声は小さくどこか寂しさを含んだものに変わっていった。

「……はぁ、情けない。私は一体お前たち二人の何を見ていたんだろうな…」

そうつぶやく曽祖父の背中は小さく見えた。

マギとガータは顔を見あわせ


「ごめんなさい」


と頭を下げた。





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