別れと魔獣と双子・・・仲間
世界が回る。
グルグルグルグル
熱い、熱くてたまらない
でも、寒い…寒い、痛い…
熱い熱い…熱い
「風邪ですね」
ボーっとする頭でそんな声を聴いた気がする…
でも、誰の声だろうか?
カイトさん?
もっと懐かしい気がしたけど…
だめだ、眠い何にも考えられない
寝る
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「兄さん!スピカさんが!」
部屋にいたケンの元へ慌てて入ってきたのは弟のシュナだった。
そばにはスピカの連れのカイトがいる。
「あ、すみません。これから休むところだったでしょうか?」
部屋と言っても執務室。
ここではシュナはケンの弟子の一人。
入ってきた時の態度は弟子としてはいただけない
「いいや、大丈夫。スピカさんがどうかしたのか?」
神官服から私服に着替えていたケンの様子から休む=帰ると思ったシュナ。
そんな彼に訂正しつつ慌てていた理由を聞いた。
「申し訳ない、スピカが倒れたんだが医師か薬師を呼んでもらえないだろうか?」
シュナの代わりに答えたのはカイトだった。
「…残念ながらこの時間は医師も薬師も休んでいますよ。簡単なもので良ければ私が見ますから部屋まで案内してくれますか?」
椅子にかけていた神官服の上衣だけを簡単に羽織ると、シュナに棚に仕舞っていた薬箱を持ってくるよう指示した。
「スピカさんはまだ癒しを使えないのですか?」
「え?癒し?」
後ろからシュナが付いてきていることを確認すると、早歩きになる廊下でカイトに聴いた。
「風の神殿では癒しの魔法は消えてしまったのですか…」
“残念です…”と続けるケンにカイトは
「いや、俺も両親も大した魔法を使えない。癒しなんてそれこそスピカやケンくらいの魔力がないと使えない」
“消えた”という言葉に少しムッとした。
風の神殿が、いや今まで両親そして祖父らがしてきたことが否定された気がした。
「あ、すまない。そういう意味じゃないんだ。もうそんなに魔法が消えかかっているのかと思って…すみませんでした」
「いいや、俺もついカッとなって言葉がきつくなってしまった。すまない」
「私も言葉が悪かったですすみませんでした。しかしそこまで減ってしまっていたのですね“風”は」
“ギリギリだったのか…”
互いに謝りあうが、足音のせいで最後の言葉カイトの耳には入らなかった。
「今スピカさんのそばには誰が?」
「リンさんについてもらっています。リンさんしか顔見知りの女性もいないですし…」
勝手なことをしてしまったか?と自信なさげに答えるシュナ。
「いいや、それでいい。良い判断だよシュナ」
シュナが後ろにいなければ、二人きりであったのならばそして今神官服を着ていなければ、もっと褒めてあげたいと思った。
「でも、リンさんも女性だろ?大丈夫なのか?移ったり…」
「「しません!」」
カイトが心配し二人に聴くが、二人は喰い気味にそれを否定した。
「…いや、でも…」
「大丈夫なんです」
「…わかった」
スピカの部屋の前で見たケンの顔をみて、この話題をするべきではないとカイトは学習した。
ノックをして入った部屋にはリンが水桶を用意していた。
すぐさまスピカのそばにより手を握り魔力で診察してゆく。
「倒れたと聞いたけどどこで?」
「浴場の脱衣所で。私がお風呂に誘ったのよ。長旅でろくに湯船にも浸かれていないだろうと思って。頭はぶつけていないと思うわよ。私に寄りかかるように倒れてきたから。体が少し熱い気がしたから水桶を用意したんだけど」
いらなかったかしら?とケンの顔を伺う。
「風邪ですね。頭をぶつけた様子はないし、リンがいてくれて良かった。水桶もありがとう助かったよ。長旅からくる疲労で体調を崩したんだと思う。なんにせよスピカさんが起きない限り薬は飲ませられないから今は魔法で誤魔化すしかないか。シュナ」
スピカから手を離すことなくシュナの方を見た。
シュナにはそれだけで何を言いたいのかわかったのだろう。頷くとカイトを連れ部屋を出ていった。
リンは息を飲んだのがわかった。
「リン、申し訳ないけれど長に今から魔法を使うことを伝えてきてくれないか?理由は話していいから。使わないといけないから」
リンが口を開く前にケンが話し始めてしまった。遮るように。
「…そんなに彼女を癒すのが大切なの?…本物だと?」
何も言わないケンに少し怒ったような表情を浮かべ
「わかったわ。怒られればいいのよ」
ふんっとわざと声に出して部屋を出ていった。
「一体どこで奴に逢ったんですか?しかもここまで気が付かないとか。俺も焼が回ったかな?」
顔を上げたその表情には怯えと不安が入り混じっていた。




