別れと魔獣と双子・・・仲間
日数計算面倒くさい。
じぶんで設定したのに…
良い情報が手に入ったと、ほくほくしながら心配そうにこちらをみるカイトとシュナの所へと戻った。
スピカが二人に手に入った情報を報告していると、解体している5人の様子がおかしいことになっていた。
仕切りに空を見上げて、わぁわぁと何やら興奮しているようだ。
三人は顔を見あわせ木陰から、空が見える彼らの近くまで移動した。
「あ、竜だ」
ポソっと呟いたのはスピカ。
「珍しい、野生の竜か…」
眩しいのか目を細めながら見上げるのはカイト。
「ああ、アルクだ…もう?」
げんなりした顔を浮かべ、空をにらみつけているのはシュナ。
約束の一か月まで二週間以上残っている。早い、とシュナはごちた。
「まぁ、落ち込みたいのはわかるがあのままじゃ彼らがかわいそうだ。帰ってもらうか、降りてきてもらうかどうにかしてくれシュナ」
カイトがポンと肩を叩きながら言う。
苦笑いを浮かべているのは迎えが竜だとは思っていなかったからだろう。
そんな二人のやり取りを聞きながら、スピカは悠然と空を飛ぶ竜に目が離せなかった。
* * * *
数週間後…
スピカはトゥームの街に来ていた。
「シュナから大凡の話しは聴いていますが、もう少し詳しい話をお聞かせ願えませんか?スピカさん?」
シュナの兄であるケンが笑顔を浮かべつつも、困惑した表情でスピカとカイトを見ていた。
忙しない数日だった…
そもそもスピカの立てていた予定ではカミーナの双子を仲間にしてからここ“トゥーム”に来るはずだったのだ。
それが狂ったのは
「へぇ…私(僕)がその世界を救う占いの“希望の光”っていう奴だってスピカは言うのね(んだ)?信じられないから何か信じられるもの持ってきて(よ)?」
彼ら双子の一言。
その時の双子の顔は悪魔の顔だった…
ほんの一日前までスピカの事を丁寧にもてなし、スピカの訪問の理由も笑顔で真摯に聞いてくれていた。
神殿にも泊めてくれた。
なのに、コレだ。
スピカは人間不信になるかと思うくらいの手のひら返し。
その時の彼らの表情、空気を思い出すだけでスピカは今でも鳥肌が立つ。
因みにその時には曽祖父である神官は不在だった。
彼がいれば多少は違っていたのかもしれない。
わかってはいた、覚悟もしていた。
しかしいざそうなるとスピカはどうしようもないほどの虚しさと共に怒りを覚えた。
何故かスピカの感覚で彼女ら双子が仲間だとわかった。
自分でも不思議だが、それがわかったし信じようと思えた。
でも、証拠と言われても困るのだ。
何かを言おうとして出来ず、口を噤むスピカをカイトが連れ出した。
彼にクソンで言われた事よりも、何故か悔しかった。
仲間だとわかっているからかも知れない。
それから二人はまだホクゾトにいると思われるシュナに逢いにトンボ返りした。
ギリギリでシュナを捕まえ、事情を話しトゥームへ一緒に行かせてもらうことになったのだ。
アルク=竜で。
「事情は分かりました。神殿には沢山の書物があります。それこそ数世代前の物から最近の物まで。大変古いものにはなりますが、占いの事が書かれているものもあります。残念ながら私もシュナも忙しいのでお手伝いは出来ませんが、彼女が手伝ってくれますよ。リンお願いしますね」
ケンはそういうと後ろに控えていた女性を紹介した。
「なっなんで!……リンです、出来る限りお力に添えるように致しますね。よろしくお願いします」
驚いたように顔をあげ、ケンに意見を述べようとしたが立場的な何かがあるのかもしれない。
頭を下げ、丁寧にお辞儀をした。渋々のように見えたが…
「聞きたいことはリンに聴いてください。では私はこれで失礼します。夜にまた」
「ありがとうございます!」
頭を下げるスピカとカイトに、神殿の役目ですよといいケンは出ていってしまった。
彼が出ていったかと思うと、リンは
「あーやってらんないわ。全くもう…。で?占いの何が知りたいの?スピカさんたちは…」
先ほどまでの清楚な雰囲気はどこへやら、リンはソファーにドカリと座るとふんぞり返った。
「……あー」
「いいわ、取り敢えず書物庫へ行きましょう。分類はしてあるから探すものそこまで大変じゃないと思うしね」
あっけにとられる二人を他所に彼女は素早く立ち上がり扉の前まで行くと
「何してるの?早く行きましょう?」
と、二人に声をかけた。
* * * *
「…リンに任せてきたけれど、大丈夫だろうか?シュナ?」
「……大丈夫ではないと思うけど…。でも」
「仕方ないんだよね…」
ケンとシュナ二人の声がはもる。




