別れと魔獣と双子・・・仲間
昨日の内にカイトを伴って依頼者である商人には会っていた。
カイトは保護者兼保証人として。
ギルドを通しての依頼ではあるが、ギルドカード以外に身元を保証してくれるものはスピカにはなかった。
シュナは神殿の関係者なのだから、身元ははっきりしてはいるがやはり実績がないのが痛い。
依頼を受ける際に保証金として少しのお金を預けては来たが、カイトという目に見える形での方が依頼者受けはいい。というカイトからの助言もあり付いてきてもらった。
カイトの助言通り、最初二人をみた商人はいい顔をしていなかった。
新人で一人は女で未成年。しかもどうやら箱入り。
シュナの丁寧な対応と神殿関係者という肩書きでしぶしぶ、という表情。
カイトが保証人ということでカードを提示するとやっと多少の笑顔が出てくる、という始末
カイトがいなかった場合どうなっていたか想像に難くない。
大量の荷物が荷車に積まれているのを見て、スピカは昨日の内に地図を貰っておいて正解だったとつぶやいた。
シュナと二人で遅くまでルートを話し合い、色々な対策を検討してた。
いなかった場合の隣人への対応。荷物の番。など様々
そしてここからが今回の依頼の山場、だとスピカは思っている。
「午前中に市民街の荷物、配達し終わっていてよかったね」
シュナもこれから行く場所と荷物の量を見て、スピカと似たり寄ったりの事を考えたのだろう。
「…ですね。でもこれだけの荷物でもたったの2件で終わりなんですよね?」
「うん、大量だけどそうらしいね…」
シュナは荷車を引き、スピカは押しながら目指すは貴族街へと入れる門。
そこで貴族街の地図を初めて見せてもらえる。
防犯の為とはいえ、当日でしか見せてもらえないというのは少々厳しいものがあった。
「じゃあ、話し合った通り僕が対応してくるから、スピカは荷物の方を宜しく」
スピカが頷くのを見るとシュナは門番がいる詰め所の扉を叩いた。
「カイデル商会のものです。マクベル卿とマーク卿のへ荷物を届けに行きたいので確認をお願いします」
詰め所から顔を出した兵士がスピカの方ーー荷物を見た
「わかった。こっちに」
と、指されたのは荷車でも通れる大きさの扉。
そこで荷物の確認をするのだろう。
「予定に聴いていた時間よりも早かったな」
身分証明のギルドカードを確認している兵士が話しかけてきた。
「思ったよりも平民街の配達が早く終わりましたので、それとこの荷物ですので確認に時間が掛かるかと思いましたから早めに来てしまいました」
怒られるか・・・と思い無礼でもいいから丁寧に説明したシュナ。
「いや怒っているわけではない。いつもそうしてもらえるとこちらも助かると常々思っていたのだ」
カードを返しまじまじと二人を見た。
「うん。君達なら大丈夫だろう。正直初見の者は貴族街へ入る事は出来ないのだが、今回だけは特別だと卿から伺っている。監視として私が君達に付いてゆくが気にしないように」
確認に10分程を要しやっと貴族街へ入る事ができた。
荷物の確認に時間がかかる事も監視が付く事も、そして身形や態度など見られることもすべて昨日の内に話し合っておいた。
大人に慣れ多少身分の高い人にも慣れているシュナが表に立ち、会話なども彼が受け持つ事。
平民街の配達が終わると、上着だけは着替える事。最悪向かっている途中で汚れてしまった場合はシュナの魔法でどうにかする事。--こちらはしなくて済んだが。
少しでも印象を良くする為に早めに詰め所へ着く事。
細かい事を話し合い少しでも面倒に巻き込まれないよう細心の注意をしてここまできた。
どうやら今朝の寝不足は無駄にならずに済むようだ。
「少し遠回りになってしまうが、マーク卿から先に配達をするよう言われている」
こっちだ、と監視もかねて道案内もしてくれるようだ。
石畳の道を先程と同じようにシュナが引き、スピカが押す。
平民街と違うのは軽く坂道になっているようで、思ったより進まないことだった。
「スピカ大丈夫?代わろうか」
シュナの言葉に素直に従う事にした。
「少しインチキするけど黙っててね」
後ろで押さえていたスピカと代わる際に、シュナは兵士の目を盗み見ながら声をかけてきた。
わかったと軽く頷いたのを見るや、シュナは小さく魔法を唱えていた。




