紋章、占い、旅立ち・・・迷子
御無沙汰いたしております
旅の始まりは気持ちよくスタートしたいものだ。スピカは不機嫌なオーラを出すシュナをみて思った。
付き合いは2週間ほどだが彼が自分の感情を、ここまで態度に表すのをはじめてみた。
それは隣の女性も同じようで…
「驚いたわ。あんなに不機嫌なシュナを見たのははじめてよ」
ミサトが呆れたような、驚いたような声でつぶやいているのが聴こえる
原因は…
「何で兄さんがわざわざ迎えに来るの?一人で大丈夫だったのにさ」
神殿の用事が主で迎えはついでだ。と兄であるケンが何度言っても、聴く耳を持たず文句を言い続けていた。
「申し訳ありません。みなさんにご迷惑をおかけしまして」
弟の態度に少々情けない顔をしている。頭を下げるのは余計に不機嫌になると思い見える所ではしないようにしている。
「まぁ、反抗期みたいなもんだろ?気にしなくても大丈夫さ」
カイトが“気にするな”と声をかけシュナの方へ駆け寄っていった
彼なりに気にかけてくれているのだろう。
ケンはありがたく思った。
神殿を出てから早一時間。もうすぐ街の門に着く
その間ずっとシュナの態度はこうだった
「悪いな、少しオレが甘やかしたか?」
「ケッツ。いいやこうなる事はわかっていたんだ。仕方がないさ。それより悪かったな。無理を言って面倒を押し付けた」
軽くため息をついたが気分を変えるように目を瞑りケッツに頭を下げた
「ああ、こっちも人材不足だったし、渡りに船って感じだったしな…。頭上げろよケンリ」
ポンっとケンの肩に手を置き、ニヤッと笑うケッツ…
「うげっ」
気が付けば天地が逆になり、背中が地面に着いていた
「余程殺されたいようだな?」
「いえ…冗談です…」
投げられた相手に乾いた笑いを浮かべる状態になってしまった
調子に乗りすぎた。と思うがこれがいつもの彼だ
因みにこの二人のやり取りは、スピカ達が門番に手続きをしてる間に行われた物で二人以外知らない
「あれ?ケッツさんスーツ汚れているけれどどうしたの?」
ミサトの問いにケッツは何も言えず、誤魔化す様に笑うしかなかった
門をくぐりクソンを出ると一台のカゴ…竜籠が止まっていた
白く陽の光を反射する鱗。額に生えた白い羽毛。自分など一飲みできる牙の生えた大きな口。
滅多に見ることが出来ない竜にスピカは唖然とすると同時に恐怖を覚えた
「あ、シロ。迎えに来てくれたの?」
スピカが“危ない”と声をかける前にミサトが竜に飛びついた
シロと呼ばれた竜もミサトを見ると嬉しそうな雰囲気をまとった
そんな一人と一匹の様子にスピカは聴きたい事があると口を開くが
「あ、あ、あ」
とパクパクと口を開くしか出来なかった
「ああ、これ?シロはミサトの飼い竜だよ」
じゃれ合うミサトの代わりにシュナが答えてくれた
「えっ!?」
後ろにいたシュナの方を勢いよく振り向くスピカ
竜を飼えると言う事は…
「コンシャースの方の貴族らしいからね…。大金持ちなんだと思うよ?」
「…」
話し方や所作などから良い所の出だろうとは想像していたがまさか貴族とは
開いた口がふさがらなかった
「へぇーアルビノ種って事は…。え?」
カイトか珍しい物を見たとつぶやいた。が途中何かに気が付いたのかシュナ、ケッツそしてケンの顔を見た
三人が三人共に頷き、首を横に振った
“何も言うな”との事
「ミサトさん、私も近くに寄ってもよろしいですか?」
好奇心旺盛なスピカ。カイトが止める間もなく走っていってしまった
「あ、おいスピカ」
「気にしなくて良いさ。そんなの気にしないから」
ケッツが慰めるがカイトの白い顔は変わらなかった
それからしばらくシロとじゃれ合っていたが
「籠に荷物は積んだから直ぐに発てますよ」
シュナがミサトに声をかけたのを切欠に発つことになった
「シュナのお兄さんありがとう。シュナまたな」
御者は頭を下げシロを羽ばたかせた
一言も話さなかったがヘルメットから覗ける赤い瞳がやけに印象的だった




