紋章、占い、旅立ち・・・迷子
上手く投稿できていなかったようです。
7月中に投稿したかった…
市場は夕方も近づいている事もあり賑わいを見せていた
籠に詰まれた果物や野菜を品定めする者や、少し痛んでいるといい値切る者
それを見て苦笑いを浮かべる店主。
アウズでは見られない光景があった
「昨日は気が付きませんでしたがとてもにぎやかな町なんですね」
隣にいるカイトに話しかけたのだが、魚を選んでくれていた主人が自分に声をかけられたと思ったのだろう口を開いてきた
「なんでも有名人が撮影に来ているんだと。お陰でこっちは商売繁盛なんだけど、うるさいったらかなわないよ」
ほら、と主人の左手側を顎でしゃくった
騒がしい声が確かに聞こえると指し示す方へ目をやったスピカとカイト
大勢の人がいっせいに移動している。中には黄色い声も聴こえなくはない
真ん中あたりにいる頭だけしか見えないが、その人が有名人なのだろう
黒髪と青い髪がのぞけた
「本当にうるさい…」
「明日明後日と天気が崩れるから慌ててクソンに来たらしい。『小鳩のとまりぎ』のおかみが教えてくれたよ」
「小鳩のとまりぎ」はさっきまでスピカが泊まっていた宿
きっと上客が入ったとおかみが喜んで言い回っているのだろう
二人は顔を見合わせ笑うと、代金を支払い魚屋を後にした
その後野菜や牛乳を買い神殿へと戻った。
山の中腹まで来たあたりだろうか?
一組の男女が何かを探していた
男性の方の手には薄緑の布が握られている
神殿に奉られていたものに似ていなくもない
女性の方がスピカ達に気が付いたのだろう、顔をあげなにやら男性に声をかけている
男性は小さく頭を下げると
「あの、申し訳ありませんが…
「今の季節にあまどころは咲いていませんよ」
男性の声を遮る様にカイトが口を開いた
「えっ、ああそうですか。いいのかな…」
聞きたい事をカイトに言われ、はじめは驚いた様子だったがまた違うことを考え始めたらしく独り言を呟きだした
男性、と言うには少々幼さが残る顔立ちをしている。背は高い方だと思うがカイトの方が頭一つ分高い
目を引くのは腰まで届く長い黒髪と目にかかりそうな前髪。
「シュナ、それがないと困るのかしら?早くしないと待っているわよ?」
シュナ、と声をかけたのは連れの女性。背丈はシュナという男より少し低いくらい。顔立ちは目を見張るほど整っていて、形の整った唇に大きな青い瞳、瞳の色と同じ青い髪が肩甲骨辺りで切り揃えられていて彼女の雰囲気に似合っていた。
一言で言えば「気の強そうな女」だった
「ミサトはなにも知らなさ過ぎる。あまどころは風の神殿にお参りするのに必要不可欠なものだ」
「まぁ、実際はそうなんだけど。季節柄咲いていないし、それだけでも構いませんよ?」
参拝に行きたい、があまどころがない。参拝にいけない。と悩んでいたシュナにカイトが助け舟を出した
「え…
「そうなの!なら早く行きましょう!さ、シュナ早く行くわよ」
まだ、なにか言いたそうだったシュナを半ば引っ張るように山を登りだした
二人も彼女の後に続くように残りの道を登り始めた
神殿の方ではなく住居の裏口から入った二人は上り框に荷物を置いた
スピカの方はそうでもないが、カイトは重たかったのだろう肩をまわしていた
「あら、おかえりなさい」
二人が帰ってきた事に気が付いたのか、パーヘルがうれしそうに顔をだした
「おやじは?」
いつもならば顔をだすエッジワースが来ない事に少々意地悪な気もするが聴いてみた
「久しぶりに参拝者がきたから嬉しそうに話をしているのよ。かわいそうに女の方は飽きているようだったわ」
口ではそういいながらパーヘルも嬉しそうだった
やはり人がお参りに来るのはうれしいものなのだろう
「スピカさん、申し訳ありませんが彼らが帰るまで部屋へは戻れないのよ。どこかで時間をつぶしてもらっていてもいいかしら?」
パーヘルの言葉にカイトも「ああ」と思い出したようにつぶやいた
幸い彼らは20分もいない内に神殿を後にした
なにやら人を待たせているらしい。
部屋へ行くために神殿へ入ったスピカは見慣れないものが祭壇にあることに気が付いた
いつもなら果物やお花、それと薄緑の布だけだが…
「…折った鳥?」
触れてはいけないと思い近くへよって見るだけだが、確かに鳥だった
布で折ってあるため少々不恰好だが綺麗に折られている
昼前に来たときにはこのようなものはなかった
となればさっきの男性か…
一人で考えているとエッジワースがスピカの隣へきた
「器用な方ですよね、それ。先ほど帰られた男性が折られたんですよ。お話を伺いましたが遠くのトゥーム出身だそうです。トゥームといえば名も無き神殿といわれる大きな神殿があるんですよ。そこは私より位の高い司祭様もいますしきちんと教育されているのでしょうね。いやぁ~久々に嬉しかったです。女性の方もコンシャース出身という事で詳しくはありませんでしたが、大神殿の事をいろいろ聞けてとても勉強になりました」
遠くを見るように話していたエッジワースが急に真剣な顔でスピカを見た
「さて、スピカさん。最初の魔法の修行はこれを折ることです」
と、布で折られた鳥を指した




